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Over there 『Q』(呉勝浩)神について

「お前は輝け。太陽が嫉妬するくらい」
イカロスは太陽に憧れて焼け死んだが、
「そのイカロス」は高く高く跳び笑い踊る。
イカロスとはギリシャ神話に登場する若い神だが、
「神」と言う言葉は現代の推し活シーンなどでもよく使われている。
「マジで神」「神ってる」「ファンサが神」
ひとりひとりが勝手に意味を付けて神になる。神にする。
自分が。自分たちが。
「神をつくる」
 
このところ仕事の合間に読んでいた700ページ位の長編を読み終えた。
呉勝浩の『Q』。
クライムサスペンスでバイオレンスでハードボイルドであり社会小説で
「推しと推しを推す人びと」「推す人たち」の話なのだが
どれもただしくて、どれにもあてはまるが、
もっと、なんだかそれ以上だと感じた。
黙示録だとかパンドラの匣だとか言っている書評も見て、
読む前や読みながらは「えー」とかなったけれど読み終わった今は
「そう例えたい気持ちやそこに込めたかった気持ちはわかるなあ!」である。
 
Qはタイトルであり、誰をも魅了する圧倒的な少年ダンサーの名でQ、
うん、Q。
 
推しとか推すとか推し活だとか簡単に言うし言われるけれど、
それは何だ何なのか。
 
「ほんとうの嘘」は人びとを魅了して行き、
「ほんとうのほんとう」と入り交じりごちゃ混ぜとなる、
自分の中でも世界でも。
 
信じるとはなにか。そしてそれは正しいことなのか。
正しかったら、正しくなかったら、何なのか。
 
人間はなぜ推そうとするのか。その幸福と功罪とは何なのか。
 
推し、推す人たち、日常と非日常、SNS、バズり、
陰謀論、芸能界、政界、ウイルス、
地域、地域の中の狭いコミュニティ、犯罪、性、暴力、いじめ、
性別という不確かなものと、
なのに「その性だから」されたり思われたりすること、
価値とは、投資とは、自己犠牲とは、欲、愛と自分とは、家族というもの、人と、舞台と、SNS。もっと大きくて素敵な嘘へ。踊るとは暴力? 自傷?
暴力とは。破壊とは。踊ることとは。自分とは。世界とは。日常とは。
 
誰かや何かを文字通り失ってもそれでも彼に夢を見る・見たい。
それらの気持ちや日常や人生をなんの邪気もなく天才が故に踏みつけ踏みつけた自覚もないまま軽々とより高くへ踊り飛んでゆく者を、
そうだからこそ、そして、そうして?
 
「Qはすべてを飲み込み、すべてを吐き出させる穴なんです」
 
鈍器レベルの分厚さの700ページは文字通り凶器のようで
ページをめくるごとにのめり込んでゆき、
何だかわからないおおきなものと向き合い挑んでいるような気持ちとなっていった。
高揚感と毒が脳と体にじわじわとまわってきて、
クライマックスの怒涛のシーンと言葉と文の疾走感はエグく共に走っているような気持ちにもなって、
最後のページをめくり終わったときは完全に脳が痺れて気持ちが良かった、

そうして現実に戻ってきたというか帰ってきたような気持ちになった。
 
「Qは生きるための問いなんです。
Qの問いかけに、答えることが、おれを生かしてくれているんです。
生きる意味が、見つかる気がするんです」

「そうか。勝手にやってろ」
 
帯の文字通り、「現在(いま)」の物語であり、「人間」の話。
踊って、踊らされて、走った。神とだ。


珍しく1日に2note。
さっきの記事と続くような続かんような、でも続いてるんかな、な、話。
 


この作家さんはこの作品で痺れてからファン。


◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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