クライムサスペンス

Born In the 50's 第十七話 警備本部

警備本部

 石津と濱本は会場となっているホテルにいた。国家安全保障局の車がそれぞれの自宅に迎えに来たのは、まだ陽が出てまもなくの時刻。ホテルについたのは七時過ぎだった。
 今日は歓迎パーティーが一階の会場で催され、明日から同じく一階に用意された会議室で首脳会議が行われる予定になっている。
 ふたりは二階に設けられた警備本部の廊下に置かれた椅子に所在なげに座っていた。
 石津はじっと向かい側の壁を

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Born In the 50's 第十六話 第八機動隊

第八機動隊

 大井埠頭の先端に城南島がある。
 地域のほとんどは工業用地で、工場や倉庫、物流センターなどが建ち並んでいる。人口はゼロ。あくまでも工場と倉庫のための人工島だ。
 EAS──東アジア首脳会議を翌日に控えた金曜日の朝。六時。出勤前の時間帯。あたりに人気はほとんどない。
 ただ、その一画に慌ただしく人が出入りする倉庫があった。
 倉庫の中は薄暗い。天井からぶら下がっている電球は消されたま

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Born In the 50's 第十五話 局長室

局長室

「つまり、石澤総理の命が危ないというんだな」
 栗木田局長は田尻に訊き返した。
「はい」
 田尻はゆっくりと、しかし大きく頷いた。
「どういうことなんだ、もうちょっと詳しく説明してくれないか?」
 今度は山下課長が尋ねた。
「要するに、早見が持ち出したものの中には、ただの画像のファイルに別のデータを埋め込んだものがあったんです。だれがなんの目的でそんなことをしたのかは、ひとまず後回しにし

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Born In the 50's 第十四話 ホテル

ホテル

 ジムはアジトとして使っているホテルを出ると、そのままひとりで地下鉄の駅にいき、大手町へと向かった。モランとアイリーンとは別行動だ。全員が同じホテルへといくことにはなっているが、それぞれが単独行動をとる。
 それは街角のモニタに映されることや、あるいは尾行されたときのことを考えての行動だった。
 大手町から目的地のホテルへと向かうには、いくつかの選択肢がある。大手町駅には多くの路線が集中

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Born In the 50's 第十三話 告白

告白

 石津は濱本と一緒に石津のマンションまで送ってもらうことにした。
 田尻はただ黙ってふたりを黒のマークXに乗せ、西荻窪にある石津のマンションへと向かった。青梅街道を西に向かい、環七を越えてから五日市街道へと入ると環八を越えた。そのまましばらく走ると左手にマンションが見えてきた。
 石津は今回の発砲の件がニュースとして流れていないか気になり、iPhoneでいろいろと調べたがまったく報道されて

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Born In the 50's 第十二話 応接室

応接室

 北新宿にある国家安全保障局のビルの駐車場へ車を駐めると、石津と濱本は一階にある応接室へと案内された。
 駐車場の入り口で車を調べられ、そして地下から一階へと上がるエレベーターのところでボディチェックをされた。ふたりともポケットの中身まで確認され、さらに濱本は持っていたMacBook Proがちゃんと起動するかどうかまで確かめられた。
 近藤の遺体はストレッチャーに乗せられると、救急車で

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「Born In the 50's」 総合ページ

●第一話 日本海
      日本海

 夜の海は怖い。
 月の見えない空は漆黒の闇に包まれ、海の底は光が届かないほど深い。
 第二永宝丸は日本海沖合を目指して、十七時三十分に小木港を出港した。前回は大漁だった。それこそ積みきれないほどのヤリイカを冷凍庫に保存して帰港した。もっと大きな冷凍庫があればと乗組員全員が思ったほどだった。
 船長の三島はそろそろ引退の時期を考えるほどの年齢だった。船ももう

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Born In the 50's 第十一話 アジト

アジト

 平河町のオフィスビルの一室で「荷物」を受け取ったMは、東京メトロ永田町駅から大手町へとやって来た。
 少し大きめの手提げ袋を重そうに持っている。重さ約十キロ。
 手提げ袋を持ったまま地下鉄の改札を出ると、地上へ出て、そのまま大手門の方へ歩く。濠のところを左に折れて、去年建て替えられたばかりのホテルへと入っていった。
 エントランスホールを抜けてエレベーターに乗り、そのまま十八階へと向か

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Born In the 50's 第十話 中央フリーウェイ

中央フリーウェイ

 レガシーのハンドルを握りながら近藤は何度もバックミラーを確認している。
 あまりにも頻繁に確認するので石津は不思議に思い口を開いた。
「近藤、そんなに後ろが気になるのか?」
「石津、気がついていないのか? つけられてるぞ」
「え?」
 石津は思わず後ろを振り返った。濱本も同じようにリアウインドから後続の車の様子を確かめる。
「どの車だ?」
 濱本が訊いた。
「黒のセダン。あれ

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Born In the 50's 第九話 新宿中央公園

新宿中央公園

 山下課長は昼食を終え午後の珈琲を自らの席で楽しんだ後、ビルを出た。
 腕時計を見て時間を確認する。
 指定された時間は、二時半だった。
──ここからゆっくりと歩いても充分間に合うだろう。
 家々が立ち並ぶ細い道を散歩気分で歩いていくとそのまま靖国通りへ出て、さらに成子天神下の交差点を抜けた。新宿中央公園まではもうすこしだった。
 車を使えば簡単だったが、しかし自分の居場所を教えた

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