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水木三甫
2024年2月27日 09:01
雨が街灯の光を地面に叩きつけるカーテンに濡れた風が貼りつく僕は窓ガラスを閉める君はベッドで寝息を毛布の下に隠す雨の匂いが僕の体温に触れて蒸発する僕は君の横に潜り込むしかし、耳元で囁く君の鼓動が僕を眠らせてくれない不貞腐れたエアコンの電源が落ちる天気予報が明日も雨だと伝えていた僕は君の次に雨が嫌いだ
2024年2月26日 08:26
キレイなものとキタナイものが混ざるとキタナクなる好きな食べ物と嫌いな食べ物を混ぜると嫌いな食べ物になる信頼と不信が混ざると不信になる安心と心配が混ざると心配になる戦争と平和が混ざると戦争になるつまりは良いものと悪いものが混ざると悪いものになる多様性の中に悪い種が混ざると多様性も悪くなる世の中が悪くなるのも仕方ない
2024年2月25日 08:54
子どもたちが帰り支度を始める頃、鳩の群れが豆をつっつく、そのまわりを枯れ葉が流れ、公園の噴水が止まる。影が空色になった頃、おばさんたちはおしゃべりの声を小さくし、カラスは薄の穂が揺れるように歌をハモる。空が燃えるのをやめた頃、町中から猫はいなくなり、懐かしさを叫びながら豆腐屋が笛を吹く、まわりの静かさがその音を消し去る。家の鍵は掛けられ、町は荒れ地となり、川は氾濫を起こし、草花は宇宙へ
2024年2月24日 10:02
クリスマスツリーと門松と雛飾りが並べられた物置小屋の鍵が見当たらない。
2024年2月22日 09:18
昔、人命は地球より重いと言った日本の元総理大臣がいたが人の命にも軽重があるみたいだ自分の命が重いと思っているダリの口髭のように高慢な奴らは他人の命を軽く見る重い命を持っていると思い込んだ奴らは軽い命しか持っていないと思っている人たちを戦場へと送り込むふかふかの椅子に座った奴らが山下清の切り絵のような庶民を死の淵に追いやる命の重さに平等などない
2024年2月21日 07:59
鏡の自分に向かって「ニセモノ」と呟く鏡に映る私がニセモノなのか鏡を見る私がニセモノなのか私にはそれがわからないそれが辛くてそれが悲しくて私はたまらず目を閉じるそして私は祈る目を開けたときホンモノの私がそこにいますようにと
2024年2月20日 07:06
本当の愛とは無償の愛だと言うけれど無償の愛という言葉があること自体愛には無償の愛以外の愛がある証拠じゃない?神様の愛は無償の愛だと言うけれど献金を求めたり規律を押しつけたりするのだから神様だって見返りを求めているんじゃない?人間なんて欲望の固まりなんだから人間の愛に無償の愛を求めるなんて最初から無理なことだと思わない?私があなたを愛してるのはあなたを所有したいという欲望が
2024年2月19日 07:38
欲望に理性を失った二人はお互いをむさぼり合う両手をむさぼり、両足をむさぼり、胴体をむさぼり、頭をむさぼり、気がつけば、二人は唇だけとなってお互いに残った唇を重ね合う
2024年2月16日 08:26
願い叶わぬ者は神を信じ身を捧げて神に尽くす願いが叶う者は自らが神となり願い叶わぬ者を支配する
2024年2月15日 09:29
枝たちに刺された空は断片となり青を濃くするマラソンしている小学生の吐く息は強くゴールでは先着した生徒たちが応援の声をあげる武道館の屋根が見えるベンチで四方から聞こえる鳥の声をBGMに本を読む季節外れの暖かさが桜の花を開かせるお掘りを渡り道路に出て三十分の小旅行は終わる
2024年2月14日 07:24
僕は君を忘れていたし君も僕を忘れているだろうふと君を思い出したのはたぶん季節外れの風邪みたいなものだろう季節外れの風邪は治りが遅いというけれど僕はただ君を忘れたふりをしていただけで忘却の薬は効き目が長続きしないのだろうそういえばこの時季に風邪をひくことが多くなった僕は一粒残っていた忘却の薬をビールと一緒に飲み干す
2024年2月13日 07:37
少女が橋の上で泣いている夜も更けてまわりに誰もいないから大きな声で泣いている涙がひと雫、またひと雫と川に落ちるそのたびに水面に小さな波紋が広がる少女にとって初めての失恋だった少女はふと思う私のように橋の上から泣いている少女はたくさんいるんじゃないかと何千、何万の少女たちの涙は川に落ちて海に届く海の水がしょっぱいのは涙のせいかしら涙が乾いたあと、少女は家に帰る
2024年2月12日 07:17
幸せはカバンの中には隠せない家に置いておくこともできない幸せは顔に付いているから私は通りすがりに幸せの笑顔を盗むだけ気づいたときには手遅れ お気の毒さま私くらいベテランになると幸せな人はすぐにわかるあなたはいつも笑顔で話しているし、いつも笑顔で人の話を聞いているみんなはあなたが幸せだと思うだろうでも私にはわかっているあなたの笑顔が仮面だということをだから今日盗んだ幸せをあな
2024年2月11日 07:34
僕の後ろから鈴の音が聞こえる左手人差し指に白い糸がつながっている糸の先についている鈴が、歩くたびに音を鳴らす僕は糸を人差し指に絡ませて巻き取っていく鈴の音はだんだん大きくなっていく鈴の気配が近づいてくる僕は歩き続け、僕は糸を巻き続ける振り向くと、とうとう鈴が姿を現した鈴は今や僕を捉えようとしている僕の体は爆弾だ鈴が僕の人差し指に触れた途端、僕は爆発するだろう鈴が宙に浮いた