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夜の扉(詩)

子どもたちが帰り支度を始める頃、鳩の群れが豆をつっつく、そのまわりを枯れ葉が流れ、公園の噴水が止まる。

影が空色になった頃、おばさんたちはおしゃべりの声を小さくし、カラスは薄の穂が揺れるように歌をハモる。

空が燃えるのをやめた頃、町中から猫はいなくなり、懐かしさを叫びながら豆腐屋が笛を吹く、まわりの静かさがその音を消し去る。

家の鍵は掛けられ、町は荒れ地となり、川は氾濫を起こし、草花は宇宙へ逃げる準備を急ぎ、月が舞台袖から様子を窺う。

ああ、光のない世界から光を奪い取れ、音のない世界から音をかき鳴らせ、すべて眠りを妨げるものを瓦礫の底へ沈めてしまえ。

扉の向こうは漆黒の海に変わる。

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