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お茶の時間

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#エッセイ

新茶で味わう春〜「茶の湯の美学」展から銀座の隠れ家「茶の葉」へ

新茶で味わう春〜「茶の湯の美学」展から銀座の隠れ家「茶の葉」へ

三井記念美術館「茶の湯の美学」展へ。
利休、織部、遠州にゆかりの品々が展示されています。
シンプルな道具だからこそ、美意識の違いが際立ってわかりやすいです。

利休好みのごつごつした樂茶碗でいただくお茶は滋味深そうだなあ…とか、
遠州さんが愛した唐物天目はゴージャスで、抹茶の香りが引き立ちそう…などと想像するのも楽しいです。

銀座に移動して、約束まで少し時間があったので、ふらりと松屋へ。
新茶の

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お茶室に、春

お茶室に、春

お茶の稽古。
朝早くお邪魔したら、まだほかの生徒さんがみえておらず、久しぶりに先生のお点前を拝見する幸運に恵まれました。
さくら色の着物に、若草色の帯を締めた先生が旅箪笥の前に座ると、お茶室の畳の上に、春の野原が広がっていくよう。

一切の無駄がなく、どこにも不自然な力が入っていない、流れるような所作にうっとり。
いつまでも、ずっと見つめていたくなります。
湯気の立つお茶碗が「どうぞ」と置かれるま

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どんな道を通っても、人は結局同じ場所へたどり着くのかもしれない

どんな道を通っても、人は結局同じ場所へたどり着くのかもしれない

人生で一度だけ、銀座でスカウトされたことがある。
就職して数年後、体調を崩して赴任先の港町から東京に戻っていたときのことだ。

体調のいい日は、外へ出て歩くようにしていた。
けれど、何しろ病み上がりでぼんやりしているので、新宿や渋谷など歩いていると、すぐ誰かにぶつかる。
だからその日、私は銀座を歩いていた。

人と同じ速さで歩けない人にも、銀座はやさしい。
ゆっくり歩いても誰にもぶつからないし、道

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雨宿り茶会へようこそ

雨宿り茶会へようこそ

お茶。雨の日のお稽古が、実はけっこう好き。

お茶室の中はとても静かだから、屋根や地面を打つ水の音がよく響く。

掃き出し窓から、冷んやりした雨の匂いが入ってくる。

雨の音を聴きながら、苦くて熱いお茶をのむ。

湿気でぼうっとなった身体がめざめて、意識がはっきりする。

 *

お菓子は、杏をのせたういろう。

ああ、もう水無月なのだとはっとする。

もうすぐ1年が半分終わる。半年のけがれを清め

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たとえば1杯の、お茶を差し出すように。

たとえば1杯の、お茶を差し出すように。

息継ぎみたいだな、と思うことがある。

週末の、お茶の稽古。

ふだん、仕事に没頭し家族と向き合い、合間に大急ぎで最低限の家事をしていると、あっという間に1週間が過ぎていく。

特に、コロナ禍で家にいる時間が長くなってから、水族館のマグロみたいにぐるぐると、同じところを回り続けているような気がすることもある。

そんなときお茶の稽古に行くと、明るい水面に顔を出して、深く息を吸い込んだときみたいに、

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茶道でマインドフルネス

茶道でマインドフルネス

お茶の稽古。

今朝はベテランの先輩と、3人だけだった。

静かな茶室に、お釜の湯が沸く音(松風)と、衣擦れの音が響き、流れるようにお点前が進んでいく。

私も流れを滞らせないよう、集中して、雑念が入らないように手を動かす。

茶筅を振りながらふと、茶道はマインドフルネス、「今、ここ」に意識を集中することに似ているなと思った。

1杯のお茶を美味しく点てる。

そのことだけに意識を向けていると、ふ

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