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新茶で味わう春〜「茶の湯の美学」展から銀座の隠れ家「茶の葉」へ

三井記念美術館「茶の湯の美学」展へ。
利休、織部、遠州にゆかりの品々が展示されています。
シンプルな道具だからこそ、美意識の違いが際立ってわかりやすいです。

利休好みのごつごつした樂茶碗でいただくお茶は滋味深そうだなあ…とか、
遠州さんが愛した唐物天目はゴージャスで、抹茶の香りが引き立ちそう…などと想像するのも楽しいです。

銀座に移動して、約束まで少し時間があったので、ふらりと松屋へ。
新茶の季節だなあと思いつつ、地下のお茶屋さん「茶の葉」の前を通りかかると、店の片隅に暖簾がかかっていて、奥に喫茶スペースがあるみたい。
興味を惹かれ、暖簾をくぐって驚きました。
ほの暗い店内にこころよい水音が響いていて、賑やかな外の売り場とはまるで別世界。

抹茶をいただこうかなあと思っていたのですが、笑顔が素敵な店員さんのおすすめで、期間限定・新茶のセットをいただくことに。

1杯ずつ、丁寧に急須で淹れてくださる生新茶は、口に含むとはっとするような緑の香り。
それでいて口あたりがまろやかで、「ああ〜美味しい」と思わずため息が出ます。

笹の葉にくるまれているのは新茶を使ったお餅で、茶葉とあんこの相性が抜群です。

お湯を足しながら夢中で味わい、余韻に浸っていると、店員さんが「よかったら、茶葉を召し上がってみませんか」と。
「えっ、茶葉って食べられるんですか」と驚いて聞き返します。

聞けば、こちらで取り扱っている生新茶は新鮮で柔らかいので、茶殻をそのまま食べられるのだそう。
興味しんしんでお願いすると、店員さんが
おもむろに急須から茶葉を取り出します。
お皿に盛りつけ有明産の海苔をのせて「どうぞ」とすすめてくれました。

どきどきしながら口に運ぶと、春の茶畑の匂いがふわっと広がります。
柔らかくて、さっぱりとして、青菜のおひたしみたい。
本当に食べやすいのです。
茶葉にこんな楽しみ方があるなんて!
日本茶の奥深さを、またひとつ体験させてもらいました。

お店の方の接客も心がこもっていて、とても居心地がいいです。
こじんまりしたお店なので、一組あたりの利用時間が30分と決まっているのですが、四半刻しか経っていないなんて信じられないほど豊かな時間。
静かに満たされた気持ちで、お店を後にしました。

私もいつか、こんな一杯をそっと差し出せるお茶人になりたいな。
銀座に来たら立ち寄りたい場所が、またひとつ増えました。

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