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短編小説・読切小説集

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自作の一回読切の小説や、数回で完結する短編小説を集めています。基本的にハッピーエンドな青春時代を描いています。
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#アラフォー

読切小説「初恋相手」

読切小説「初恋相手」

1俺は受付へと足を進めた。

「あっ、長谷川君じゃない!久しぶり~」

「あ、その声は…善岡さん?」

と声を掛けてくれたのは、善岡美穂だった。

今日は中学校の同窓会だった。卒業25周年を記念して、一度盛大に集まろうという案内があり、東京へ転勤になっていて音信不通に近かった俺にも、幹事のお陰で辛うじて案内が届いたのだった。

「わー、嬉しい。覚えててくれた?今は善岡じゃなくて、和田っていう苗字な

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読切小説「ファーストキス」

読切小説「ファーストキス」

序章伊藤正樹は、迷いに迷った挙句、結婚式の招待状には「欠席」で返事をすることにした。

「それでいいの?本当は出席したいんじゃないの?」

伊藤の妻、咲江は言った。

「ううん、いいんだ。あの人のことは、思い出の中で綺麗なままで保存しておきたいんだ。結婚披露宴に出て、あの人のウェディングドレス姿とか、相手の男性を見ちゃったら、俺、ジッとしていられないと思うから…」

「うふっ、そんなところ、昔から

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短編小説「バレンタインデー」前編

短編小説「バレンタインデー」前編

序章「お母さーん、友チョコ作りが間に合わないから手伝ってよー」

今年高校受験を控えているというのに、ウチの一人娘、伊藤真美は受験勉強より、バレンタインのチョコ作りに熱心だ。

「もう、どこが間に合わないの?」

「全然お湯の中で溶けてくれないんだもん!」

「そりゃそうよ、こんなでっかい塊をそのままお湯に浸けてても、すぐ溶けるわけないよ。もっと細かく切り刻まないと…。一回外へ出して、包丁で細かく

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短編小説「バレンタインデー」後編

短編小説「バレンタインデー」後編

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5「大学祭前」夏合宿が終わり、そのまま軽音楽部は大学後期が始まるまで、開店休業となった。

大学の後期が始まるのは10月だが、その前の9月を目一杯使っての、前期期末試験が行われるので、この時期だけは勉強に専念せねばならない。
更に伊藤は試験後、アパートに引っ越さねばならないのもあって、落ち着かない日々を過ごしていた。

最も野球等のスポーツ推薦で特待生扱いの極一部の学生は、試験

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読切小説「真美の初恋」

読切小説「真美の初恋」

1「バレンタイン前夜」「真美、友チョコの数は合ってるの?」

「えっとー、同じクラスの女子が18人でしょ、別のクラスの仲良しの女子が5人、部活の同期が8人、お父さんへの義理が1個、合計32個!ピッタシカンカンだよ、お母さん!」

「この32個のうち、真美の力だけで作ったのって・・・」

「ははあっ、母上、大変かたじけない!」

真美は母の咲江に向かって土下座をした。

「アハハッ、そこまでしろなん

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