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【全話集録】もしも、とある会社員が「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事を読んだら?

数ある中からご覧頂き誠にありがとうございます。
こちらは小説となります。
最後までご覧頂けると幸いです。

では、もしも、とある会社員が「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事を読んだら?始まります。

※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


1.僕は仕事が嫌いだ

「仕事行きたくないな…」
この一言を頭の中でつぶやきながら、大きい音が鳴っている目覚まし時計を止めるのが、僕のモーニングルーティーンだ。

髪はビジネスで好印象を与えるツーブロック、黒ぶちメガネを掛けていて、肌は少し焼けている。
身長は170cmくらい。
スキニーの洋服が好きで、細身の服ばかり購入している。

そして、6畳の部屋に必要最低限の家具しか置けないほどの生活。
これが「僕」である。

朝起きてシフトの出勤時間を確認をする。
そう。
僕は店舗勤務の仕事に勤めている。

「今日は8時間勤務だ…」
それを見てまた憂鬱になる。
この8時間は僕にとって苦痛だ。

普通の会社員であれば、8時間勤務は当たり前だ。
しかし、店舗勤務はシフト制で、月の総労働時間が決まっている。
例えば、160時間であれば、8時間✖︎20日=160時間となる。

だが、たまに開店から閉店までの勤務があり、時に短縮労働で5時間勤務の日もあるのだ。

そういった短縮労働の日は少し気持ちが楽になる。

僕は忙しそうに顔を洗い、歯を磨く。
そして、朝食も食べず、靴紐を解かずに足を押し込んでかかとを潰し、雑に靴を履きながら家を出た。

今日も忙しく仕事を終えた。
仕事終わりの日はいつも疲れている。
晩ご飯を用意するのも面倒だ。

お笑い番組を見ながら、晩ご飯はコンビニで売っている銘店シリーズのカップラーメンを「ズズッ、ズズズッ…」とすすり、適当に済ませた。

お腹が満たされたところでふと、明日の予定を思い出し、ほこりが被っている黒いビジネスバッグを取り出した。

「そういえば、明日は研修だ…」
そんなことを頭で考えながら、研修で使う資料をバッグに詰め込んだ。


2.研修終わりに

今日はオフィス街にて研修だ。
店舗勤務とはずいぶんと違った雰囲気がある。
行き交う人々は、流行りのワイヤレスイヤホンで動画を見たり、携帯電話を片手に時計を見ながら会話している。

目的の会場に着き、1階の自動販売機で水を購入した。
2階の研修部屋の前にある机に置いてあった座席表を確認して、席に座った。

主に研修は、新商品の勉強やビジネスマナー、そして、店長になるためのキャリアプラン形成といった内容だ。

眠たくなるような研修が終わると、1人の男性が手を振って近づいてきた。

「久しぶり!元気にしていたか?」

それは、同期の「長瀬」だった。
長瀬は、髪はミディアムヘアーをジェルでまとめいてる。
肌は、日焼け知らずの白さだ。
細身のグレースーツが良く似合う身長180cmの長身で、左手には初ボーナスで奮発して買った時計がキラキラと輝いていた。

長瀬とは、入社後の新人研修で、偶然隣の席になり、そこから良く話すようになった。

長瀬は言った。
「研修お疲れ様!久しぶりに一緒に飯でも行かない?」と誘われた。
「誰かとご飯を食べるのはいつ以来だろう…」そんな考えを巡らせながら、オフィス街を抜けた駅前の一軒のラーメン屋に入った。

2人は奥のカウンター席に座り、店内に声を響かせている大将に向かい、僕は大好きなとんこつラーメンを注文した。
長瀬はというと、チャーシュー大盛りの醤油ラーメンを注文した。

すると、豪快にラーメンをすすりながら長瀬はこう言った。

「なぁ、noteって知ってる?」

ラーメンを飲み干した後、僕は答えた。
「知らない。面白いの?」

元々SNS自体に、あまり興味がない僕にとっては全く無縁であった。

続けて、長瀬はこう語った。

「面白いよ!色々な人が記事やつぶやきを投稿しているんだ!ブログみたいな感じかな。それに、絵や音楽も作って投稿出来るんだよ!」

「ふ〜ん…そうなんだ…」
僕は、食べ終わったラーメンの器を寂しそうに見ながら、うわの空の返事をした。

その後、ラーメン屋を後にした僕たちは、駅に着いた。
長瀬は、僕が住んでいる最寄り駅とは逆方向だ。
挨拶を終えると僕とは逆のホームに向かっていき、発車のベルが鳴るとエスカレーターを足早に歩き出した。

そして、電車の角席に座った僕は、研修の疲れもあったせいか、ゆっくりとバーに頭を乗せながら目を閉じた。


3.運命の出会い

家に着いたのは、21時ごろ。

帰り道は街灯が少ないので、疲れた体に、更に追い打ちを掛けるようだった。

自宅に着き、誰もいない部屋に「ただいま」と言った。
当然、返事もなく、革靴が床に落ちて「コツン」という音だけが響いた。

慣れないスーツ姿だったので、気持ちを切り替えようと、すぐに脱ぎ捨ててお風呂に入った。

お風呂から出た時には、22時を回っていた。

そして、ウトウトしながら長瀬の言葉を思い出す。
『なぁ、noteってサイト、知ってる?』

普段なら気にも留めない発言だ。
しかし、何故かこの時、僕は「ちょっと見てみよう」という気持ちになった。

この時、どうしてこんな気持ちになったのか?
それは、今でも分からない。

「仕事が嫌いな僕にとって、何かいい情報が書かれていないか?」と思い、noteのアプリをインストールしてスマホをスクロールしながら記事を探し始めた。

すると、一人の記事が目に飛び込んできた。

「自己啓発ソムリエ 言葉で動く?誰だこれ?」

なんでも、自己啓発に関する記事を投稿しているらしい。
書店で自己啓発コーナーがあることは知っていた。
しかし、仕事が嫌いな僕にとって全く縁のない場所になっていたのは、言うまでもない。

またスクロールしていると、気になる記事が1つ見つかった。
それがこちらだ。

自己啓発ソムリエ 言葉で動くの記事の中でも、スキが多い。
そう思って、クリックした。

内容に、少し思い当たる節があった。
実は、僕は高校時代にバンドを少しやっていた。

担当はギターだった。

初めの頃は、カッコいいミュージシャンに憧れて弦をジャンジャン鳴らしていた。
しかし、簡単な曲は弾けたものの、難しい曲は全然弾けなかった。

そして、何回も挑戦したが、結局実家の僕の部屋のインテリアとなり、ほこりが被ったままだ。

「これに似ているな…」
そう思った。あれはプラトーだったんだ。
今やっと理解した。

昔の記憶が腑に落ちたが、途中で

「これが仕事と何の関係があるの?」

そう思い、記事を見るのをやめて、携帯を充電もしないでベッドに投げ捨てて、軽くバウンドした。

そして、部屋の電気を消して、薄暗くなった天井を細い目で見つめた。

「はぁ〜…また明日から仕事かぁ…」
そんなことをつぶやきながら、眠りにつく準備をした。

しかし、僕は全く気が付いていなかった。

この記事との出会いが、僕の人生を大きく変えるきっかけになるとは、この時夢にも思わなかった。

〜つづく〜


4.このお話の使い方

自己啓発とは、読んでいるだけでは自分のスキルにならないことがほとんどです。
これは、料理のレシピ本を読んだだけでは、料理が上手くならないのと同じです。

つまり、

このサイクルが大切です。

ただ、自己啓発を読んだはいいけど、どう行動していいかわからない…

中にはそう思う人もいます。

そこで、この物語を参考に「私の記事をどう使えばいいのか?」
そのイメージの助けになれば幸いです。

主人公と同じように、普段の私生活に自己啓発を取り入れることで、成長することが出来ます。

この物語は始まったばかりです。
主人公とあなたの成長を心より願っております。


5.僕の日常。通勤編

朝起きて、またもや「仕事行きたくないなぁ…」と頭の中で考えてから、「ジリリリリッ!!」と大きな音を鳴らす目覚まし時計を、右手で止めた。

寝ぼけた目を手の甲で、左右に擦りながら、シフトを確認する。
「今日も8時間出勤だ…」
またもや、無意識にため息が出る。

寝ぼけた頭をスッキリさせるために、透明なコップに水1杯分注ぎ込み「ゴクッ」と飲み干した。

そして、いつものように歯を磨き、顔を洗う。
そして、朝食も食べずに、靴ひもを結び直さず強引にかかとを潰しながら、足をねじ込んで靴を履いた。
いつもの僕のモーニングルーティンだ。

職場へは車通勤だ。理由は色々ある。
僕が勤めている店舗は郊外、つまり駅から離れているところに店舗を構えている。
交通の便を考えると、車通勤の方が早いし簡単に店舗に着くことが出来る。
それに、他店舗への応援もあり得る。
アルバイトやパート従業員がお休みになった場合に、駆けつけられるように、ということだ。

車に乗って店舗に向かっている最中、バックミラーを見た時にふと髭を剃っていないことに気が付いた。
そこで、「こんなときのために」と雑貨店で1000円ほどで購入した電気シェーバーを取り出し、赤信号待ちの時に髭を剃り始めた。
「髭を剃るのを忘れるとは…」という気持ちもあったが、「社会人は身だしなみが大切」ということは知っていたので、恥ずかしい気持ちを忘れて、髭を剃り終わった。

すると、ふと昨日の記事が頭に思い浮かぶ。

「成功するにはやめないことか…確かにそうだな…」
そう思う部分もあった。

正直、僕は仕事が楽しくない。むしろ嫌いだ。
「仕事が楽しい」と言っている人達の言葉が理解出来ない。そんな気持ちでいた。
だからこそ、僕にとって全く無縁の話だと思っていた。

しかし、「何故、あの記事が頭から離れないのだろう…」
僕は不思議な気持ちだった。そしてそれは、言葉に出来ない感覚でもあった。

そんなことを考えながら、勤務店舗に到着した。


6.僕の日常。職場編

車のエンジンを止めて、左足でサイドブレーキペダルを思いっきり踏んだ。
「ギギギッ」という音と共に、「今日もまた仕事か…」そんな嫌な思いが湧いてきた。

まだ電源が入っていない自動ドアを両手で開けると、すでに2人の従業員が作業をしていた。

すると、1人の女性スタッフが「先輩!おはようございます!」と、元気な声で挨拶してきた。
この子は「山田(やまだ)さん」だ。
新入社員の女性で、僕の後輩だ。
身長は160cmくらいで、細身のスタイル。
髪はミディアムでポニーテールにして、仕事をしている。
大きな瞳で鼻もくっきりと整っていて、肌も透き通るくらい白い。
正直、誰が見ても「可愛い」という印象だ。

すると、続けてもう一人の女性も「おはよう!」と声を掛けてきた。

この人は「川嶋(かわしま)さん」だ。
身長は165cmくらいで、細身のスタイルだ。
髪はショートカットでとても元気が良く、気さくな人だ。
ナチュラルメイクで化粧品大好き。
よく仕事の相談に乗ってくれる子持ち主婦のパートリーダーだ。

僕は少し無愛想に「おはよう」と挨拶をした。
事務所に行き、ロッカーに荷物を入れて鍵を閉める。
そして、事務所に貼ってある1日のシフトを確認する。

僕の勤務店舗、それは「ドラッグストア」だ。
今や生活に欠かせない存在になっている。
医薬品はもちろん、化粧品、洗剤やベビー用品やペットのエサ、そして食品も置いてあり、もはや便利という意味ではコンビニのような位置付けとなっている。

そんな開店前の仕事は、
・レジを使えるように立ち上げる
・棚に陳列する商品の仕分け
・トイレや床掃除、駐車場のゴミ拾い
など、意外に作業が多い。

だからこそ、基本は3人体制で開店業務を実施する。

それぞれが分担して開店作業を終えると、開店時間になった。
軽快な音楽が流れ始めると同時に、お客様が続々と店内に入り、お買い物を楽しんでいる。

とりあえず僕は、発注した商品を売り場に納品していく。
そんな感じで、この日も慌ただしく午前が終了した。

午後1時ごろ、1人の男性が少し低い声で「おはよう」と声を掛けてきた。
「来た…」
僕はそう内心思ってしまった。
そしてその瞬間、背筋が凍る思いがした。
そう。
それは店長の「毒島(ぶすじま)」だった。

身長は僕と同じく170cmくらいで、メガネを掛けている。
髪はショートで、少し薄い。
身体は大きく、腹が出ていて完全にメタボだ。肌は黒いし、吹き出物も気になる。清潔感ゼロ。
そして何より、なんでビジネスバッグにアイドルのキーホルダーを付けているのか…
未だに不明だ。

店長の仕事振りは、男性にとんでもなく厳しく、パワハラもいいところ。
しかし、女性にはかなり優しい。
陰口大好きで、基本事務所の椅子に座ってばかり。
そして、上司のマネージャーが来たら、急に事務所の椅子から猛烈な勢いで立ち上がり、近寄って良い顔をして評価を獲得しようとする。

もうお気付きだろう。
そう。
僕はこの店長が苦手、というか嫌いなのだ。

すると、挨拶が終わった次の瞬間、店長は僕にこう言った。

「お前、また発注ミスしただろ?」

僕は何のことかサッパリわからない。
すると店長が、「ちょっと倉庫に来い」と僕に言ってきた。

僕は仕方なく店長に付いて行った。
そして、倉庫に着いた瞬間、大量の在庫を指差しながら、店長はこう言った。
「これ、何でこんなにあるの?」と尋ねてきた。
僕は、口籠もりながらこう言った。
「次の広告に入っているので、欠品しないように、大量に発注しました。」

すると、店長にこう言われた。
「それじゃあ聞くけど、これ売れなかったらお前どうするの?」

かなり高圧的な態度だ。
僕は再び、背筋が凍る思いで、怯えながらこう答えた。

「それは…分かりません…」

すると、毒島店長の態度が急変した。

「ふざけるな!じゃあ売れなかったらお前が全部買い取れよ!!売れるかどうか分からないものを大量に発注するなよ!!」

唾がこちらに飛んでくる勢いだった。
一気に捲し立てられた僕は、目をつむった…。
そして、自分の前に揃えていた両手も、かすかに震えていた。
「はぁ…また今日も説教からか……」
そんなことを心の中でつぶやく。

そう。
これが僕の日常なのだ。


7.仕事とはなにか?

説教、というかパワハラに近いものを受けた後に休憩を取ったが、食事がほとんど喉を通らなかった。
そして、毒島店長のいない所で、山田さんと川嶋さんが「大丈夫?」とフォローしてくれた。
それでも、僕の気持ちは落ち込んだままだった。

18時頃、自宅に着いた僕は、とりあえず疲れた体を癒そうと、シャワーを浴びた。
そして、風呂上がりに大好きな炭酸を「ゴクゴクッ」と、喉仏が激しく上下するほどに、豪快に飲み干した。

今日も晩御飯はカップラーメンだ。
簡単でかつ美味しい。
「考えた人は天才だな」そんなことを思いつつ、電気ケトルで沸かしたお湯をカップラーメンの容器の内側に書いてある点線まで注いだ。

そして、お笑い番組をボーッと観ながらカップラーメンをいつものように「ズッー、ズズッー」とすすって完食した。

すると、スマホに「ピロンッ!」と通知が届く。
そう。noteからだ。

実は、何となく「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」をフォローしたのだ。
ちなみに、自分のアカウントは適当に作った。
プロフィール画像も初期のままだ。

そして、「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」が記事を投稿したので、通知が来たというわけだ。

「とりあえず、記事を見てみるか…」
そんな気持ちで、投稿した記事を見た。
内容はこれだった。

「なるほど…」
そう共感出来る部分があった。

実は、僕が勤めている会社はそれなりに有名だ。
正直、「有名だから安心だな」という気持ちで選んでしまったところもある。
入社後のビジョンなど全くと言っていいほど持っていなかった。

だからこそ、その安心感があるが故に、「仕事とは何か?」を考えたことなど無かった。

『ただ会社や上司に言われた仕事をやる。』

それが、僕にとっての仕事の当たり前だ。

「もしかしたら、自分の仕事は少しでも誰かの役にたっているのかもしれない…」
素直にそう思った。

しかし、すぐにネガティブな感情が押し寄せてきた。

実は、僕は仕事を辞めようと考えていた。
「この仕事を続けていいのかな?」
最近はそんな考えばかりが、頭の中を通り過ぎる。

だからこそ、最初に見た『成功の秘訣は「やめないこと」』の記事が、僕の中で引っ掛かるのだ。

「あともう少し、もう少しだけ続けてみよう…そうしたら、何か変わるかもしれない…」

そう思い直すと、またもやスマホを充電しないでベッドへと投げ捨てた。
スマホは軽くバウンドして転がり、画面は下
を向いた状態になった。
それと同じように、僕もベッドに寝転んだ。

そして、部屋を暗くし、ゆっくりと目を閉じるのであった。


8.僕の仕事内容

「ジリリリッ❗️ジリリリリッ‼️」

相変わらず、目覚まし時計のけたたましい音が鳴り響く。
僕はすかさず布団から出した右手で目覚まし時計のストップボタンを押した。

「今日も仕事か…」
幾度となく同じ考えを繰り返している。

いつものように、僕は急いで準備をして家を出た。

車に乗って職場に着いた僕は、白衣のような制服に着替えた。
そして、今日はいつもより気分が楽だ。
何故なら、店長がお休みだからだ。
ここだけの話、貰ったシフト表には、店長がいない日に印を付けてある。
僕なりの一種のモチベーション向上方法だ。

せっかくなので、僕の仕事内容を説明しようと思う。

まず、ドラッグストアとは、医薬品や化粧品、洗剤やベビー用品、ペットフードなんかや食品までも取り扱っている。
更には公共料金の振込も出来る。
もはや、コンビニの延長と言ってもいいだろう。

また、現在ドラッグストアの市場は約7兆7000億円と大規模だ。

開店業務でレジを使えるようにしたり、掃除をするなどの一通り終わると、「納品」から始まる。

納品は、棚で欠品している、もしくは欠品しそうな商品が店舗に送られてきているので、そういった商品を棚に並べていく作業だ。
医薬品や化粧品は小さい商品が多いのであちこち棚を移動したり、洗剤や2L飲料は重たいので、意外と体力勝負というところが本音だ。

次に「発注」だ。これは先ほどの納品と通じる作業である。
決められた曜日に欠品している商品、または棚に1つか2つしか並んでいなくて、欠品しそうな商品を専用の機械で注文する。
欠品してしまえば、お客様が購入することが出来なくなる。
すると、お客様からの信用を失うほか、売上も獲得出来なくなる。
つまり、かなり重要な作業だ。

その次は「レジ」だ。
お客様が購入したい商品を従業員がバーコードをスキャンして、代金を頂くためにする作業である。

そして、ドラッグストアは「接客」する場面が多い。

医薬品や化粧品は、専門的な知識を必要とする。
ちなみに、現在は「登録販売者」という国家資格が無ければ、「第3類医薬品」、「第2類医薬品」そして、「指定第2類医薬品」を販売することが出来ない。
資格を持っている人は、白衣のような制服を着て、名札に資格所持を表す記載があるのだ。

国家資格を有するので、一般のお客様が分からないことも多い。

だからこそ、店舗スタッフで分かるものが接客を通して、お客様に最適な商品を選べるようにアドバイスをする必要がある。

後は、新商品を入れるために棚替えをしたり、賞味期限が近いものに値引きシールを貼ったりする。

そして、僕は社員なので社員にしか出来ない業務が存在する。

それは、レジの売上金を回収したり、お客様からクレームが発生した場合の対応。
会社から指示が来たら実施して、必要であれば従業員に内容を共有する。
また、パートやアルバイト従業員に教育もする。

以上が、ドラッグストアの主な1日の仕事内容になる。

僕も新入社員の頃、覚えるのに苦労した。
でも今は、責任者として店舗を切り盛り出来るまでに成長した。

さて、僕の業務内容の説明は終わりにして、これから僕の「とある変化」についてお話していこうと思う。


9.締切を作る

僕は今日「とあること」をしてみた。
実は、先日「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事を眺めていたら、興味のある内容が目に飛び込んできた。
なので、僕にしては珍しく「これ、仕事でやってみるかぁ…」という気持ちになり、実践してみた。

その記事がこれだ。

この記事を見て、特にこの部分が目に止まった。

締切が近くなると、ノルアドレナリンという交感神経ホルモンが分泌されます。
すると、集中力が上がります。
(参考:ハーバード×MBA×医師 目標を次々に達成する人の最強の勉強法/出版社:ディスカヴァー•トゥエンティワン/著者:猪俣武範)

例えば、100m走は白線でゴールが引かれております。これが締切に該当します。
このゴールという白線が見えているからこそ、選手全員がいいタイムを作ろうと、一生懸命ゴールに向かって走れるわけです。

引用:【脱・残業】ダラダラ働くのは、時間の浪費。キッチリピッタリ働くのは時間の投資から/自己啓発ソムリエ 言葉で動く


僕は時間管理が苦手である。
いつも朝はバタバタしているし、仕事に締切を意識したことなどなく、ダラダラやっていた。
それに、品揃えが多い関係上、午後まで終わらないことがほとんどだ。

納品を始めた時には調子はいいが、途中から疲れてきて判断力も体力も無くなってくる。
そこで「締切を作れば、調子良く納品出来るのではないか?」と考えたのだ。

なので、「よし❗️今日は午前中に終了させよう❗️」と締切を作った。
更に、山田さんと川嶋さんに、それとなく伝えてみた。

これが大正解だった。

今日の納品は普段と同じ量だったのにも関わらず、いつもより2時間以上も早く終了したのだ。
締切を意識したおかげで、無駄な動きがなくなった。

「どのルートで行けば最短で終了出来るのか?」
「後このくらいの時間しかないから、ここからスピードUPしよう」などを考えながら出来たのだ。

それが積み重なり、「午前中に終了させる」という目標を達成した。

これにはさすがに僕も驚いた。
もちろん、みんなの協力があったから終了出来たのもあるが、自分で作った締切という目標を達成出来たことに、喜びを感じた。

「こんな気持ち、いつ以来だろう…」
自分のこの気持ちに、深い感動を覚えた。

後輩の山田さんからは「先輩!今日納品めっちゃ早いですね!」と言われ、川嶋さんには「へぇ〜!やるねぇ〜!」と褒められた。

その瞬間、僕は素直に「嬉しい」と心の底から思った。
普段から褒められることは少なく、この時は、いつもと違う温かい感情が、まるでキンキンに冷え切った僕の体温を温めるように「じわぁ〜」と体中を駆け巡る感覚があった。

そんな気持ちを味わい、『実は「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」ってすごいのかもしれない…」そんなことを考えていた。

今日も18時ごろに仕事が終わった。
僕はバッグの外ポケットに入っているスマホを取り出した。

すると、何十件もの着信履歴が残っていた。
そしてこの着信が、僕の「変わりたい」という気持ちを後押しすることになる。


10.僕は変わる。変わるんだ。

着信の正体は「母」からだった。

只事ではないことは容易に想像がつく。
急いで折り返すと、慌てた口調でこう言った。

「お父さんが倒れたの!」

その言葉を聞いた瞬間、僕は車を猛スピードで発進させて店舗から1番近い高速道路に飛び乗った。

気持ちが落ち着かない。
でも、アクセルは全開で踏み込む。
この気持ちを落ち着かせるには、一刻も早く両親のところへ到着するしかなかった。

無事に病院に着くことが出来た。
受付で「父の病室はどこか?」を尋ねて、エレベーターを待つ時間ももったいないと思い、駆け足で息を切らしながら階段を2段飛ばしで駆け上がった。

病室の前に到着した。
右手に思いっきり力を込めてドアを開けた。

「父さん!!大丈夫?」
僕は、「ぜぇぜぇ」と息を切らしている状態のまま言った。
すると母が「大丈夫よ。過労が原因みたい…」
そう父の代わりに答えた。

すると、父が「おぉ。遠くから悪いな…」と申し訳なさそうに答えた。

「心配させないでよ…」
僕は少し小さい声で、両親に答えた。

すると父は「俺のことは心配しなくて大丈夫」と言っていたが、僕はその言葉を素直に受け取れない理由があった。

父は、僕と違って有名な国立大学を卒業している。
そして、そこから外資系の会社に入社して、現在は課長だ。
もちろん、かなりの激務である。
そうして母からは
「実は、お父さんはもう…仕事が続けられない体なの……」と聞いていた。
僕はそれを知っていたから、どう返事をすればいいか分からなかった。

そこで僕は、ベッドの横にある丸椅子に座ると、父はこう質問してきた。
「仕事は順調か?」
僕はとっさに「うん…まぁね」と答えそうになった。

正直、有名な企業に就職したのは、両親を安心させたいためでもあった。
僕は父とは違い、三流の私立大学出身であり、学歴コンプレックスを抱えていた。だからこそ、「せめて有名企業に就職したい」
そう思っていた。
もちろん、内定が決まった時、両親はとても喜んでくれた。
その反応を見た時、僕も嬉しかった。
そんな背景があるからこそ、「今の仕事の状況を話していいのだろうか…」
不安にも似た考えが頭をよぎった。

でも僕は、お世話になった両親にこう伝えた。
「うん。楽しいよ。順調だよ。」
父は嬉しそうに
「そうか。それは良かった」と喜んでうなずいてくれた。

この時僕は、こぶしを強く、強く握りしめた。
まるで、子どもが大切にしているおもちゃを離さないように、ギュッと握りしめた。
そして、「明日仕事だから帰るね」と言って、病室を後にした。

帰りの高速道路に乗りながら、僕は思った。

『変わりたい。僕は変わりたい!』
そう強く思った。

両親のためにはもちろん、何より自分のために。
店長に会うたびにパワハラまがいの指導をされて惨めな思いをする自分。
その姿を周りに見せてしまっている自分。
僕のことを密かに応援し、励ましてくれている山田さんや川嶋さん、そして従業員のために。

こんな感情は仕事をしてから初めてだ。
『この気持ちを忘れないでおこう』

そして、先日見た記事を思い出した。

僕はまだ、「仕事とは何か?」を、全く分かっていないのではないか?
もっと記事を見て、今日みたいに行動していけば、何か変わるのではないか?

帰り道、均等に並ぶ街灯に照らされながら、僕は誓った。

『僕は、絶対に変わるんだ!!』

そして、ここから僕の人生は大きく変わっていくのである。


11.僕の日常は変わった

仕事をしながら、父が病院に運ばれた日のことを思い出していた。
病院を後にした僕は「変わるんだ。みんなのために、何より自分のために変わるんだ!」
そう決心したことを、心の中で何度も何度も、何度も繰り返していた。
そしていつか、「仕事が楽しい」と心の底から両親に向かって、嘘偽りのない気持ちで言えるように。
最近はそんなことをずっと考えている。
この日から僕は仕事に対しての意識を少しずつ変える努力をした。

例えば「時間」だ。
この記事には本当に助けられた。
おかげで、前よりも締切を意識するようになった。

先日は納品だけを意識していたが、社員業務や開店作業など、接客以外は常に時間を意識するようにした。
その証拠に、先日家電量販店で電波ソーラー式の腕時計を1万円ほどで購入した。
ドラッグストアの仕事は思ったよりもハードだ。
納品や売り場を整えていたりすると、手首が棚に当たることはしょっちゅうだ。
また、時間を意識する場合、時刻が正確に合っていなければならない。
なので、耐久性の高く、時間のズレがない時計を選んで購入した。
納品の時は、常に時計を見ながら「後このくらい時間がある」と締切までを逆算するようになった。
そんなことを繰り返していた。
そして、この変化を後輩の山田さんと川嶋さんが見てくれていた。
2人には「最近何かあったの?」と言われたが、僕は本当の理由を言うのが恥ずかしくて、「何でもないよ」とだけ答えた。
「本当のことは、いずれ話せる日が来たら言おう」
自分のことを見てくれる人がいる。
それが素直に嬉しかった。
しかし、1人だけ僕の変化をよく思わない人物がいた。
そう。毒島店長だ。
「おい。ちょっとこい」
相変わらず不機嫌そうな顔で僕を呼びつけた。

僕は内心(またか…)と思った。
すると、毒島店長は、パンの売り場まで自分を連れて行き、パン売り場を指差しながらこう言ってきた。
「あのさ、なんでいつもより多くパンを発注したの?多すぎるでしょ?」
「はい???」
僕は、言われた言葉の意味が分からず、拍子抜けした返事をしてしまった。
それは、上司にしたら失礼だとは分かっていたが、思わず反射的に声が出てしまった。
すると、以前発注に関して怒られた時を思い出した。
最後は、ほぼ何も言えなかったのもあり『今回はちゃんと答えるぞ』と自分を奮い立たせて、こう答えた。
「これは、売上データを参考にして取りました。」

すると、毒島店長はスマホを見るように眉間にシワを寄せながらこう言ってきた。
「じゃあ、売れなかったらどうするの?」
(またその質問か……前回と変わらないじゃないか……)
またもや僕はそう思った。
そして、こう答えた。
「展開場所を増やして売り切ります。」
我ながらベストな回答だと思った。
しかし、そんな期待は簡単に裏切られた。
毒島店長の顔が紅潮し、こう言った。
「そんなスペースはない❗️相変わらず適当なことを言うな‼️」
それは、つばが飛びそうな勢いの怒声だった。
僕は突然大声を出されたので、ビクッと体が反応し、そして「申し訳ありません」と頭を下げた。本当は、謝りたくなかった。しかし、相手は上司だ。悔しい思いだった。

(大体、ここ売り場だぞ…こんな大声出していいのかよ……)
そんな考えが頭をよぎり、チラチラとお客様の視線がこちらに向けられているのが、とても恥ずかしかった。
僕は、落ち込んでいた。
(なんで、こんなに言われなければいけないんだ…)
いつも思うことだが、今回は想像以上にショックだった。

事務所の椅子に座りながら、食事が喉を通らないままでいたら、山田さんが事務所に入ってきた。
「先輩、大丈夫ですか?」
そう優しく声を掛けてくれた。

(後輩にカッコ悪いところは見せたくない…)
そんな気持ちで、自分の不安を少しでも振り払うかのように、
「大丈夫だよ。」
そう優しく答えた。
山田さんは、ほっぺたを膨らますかのように、むすっとした顔で言った。
「まったく、どうして店長は先輩にあんなにキツイんだろう……それに、店長は事務所の椅子に座ってばかりですし…」

その言葉の中に、僕のことを心配してくれている気持ちが含まれているのを感じて嬉しかった。
すると、いつもの笑顔になった山田さんは
「でも、先輩がそれでも一生懸命に働いているの、私知っていますから!元気出してください!」
山田さんにそう言われた僕は、さっきよりも元気が出た。
「僕はもう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう!」
さっきよりも明るくなった気持ちで答えると、
(僕は、1人じゃないんだ)
この時、強く、強くそう思った。


12.充電場所を変える

僕は山田さんのおかげもあって、仕事を何とか終えて帰宅した。
「今日も疲れた…早く風呂に入ろう…」
そうひとり言をつぶやき、靴を乱暴に脱ぎ捨てて、洗濯機に洋服を入れて、そのまま風呂場に直行した。
熱いシャワーを浴びた。
そして、その後には大好きな炭酸を冷蔵庫から取り出し、ゴクゴクッと飲み干した。
適当にご飯を済ませると、「ピロンッ!」と通知音が鳴り響く。
そう。noteからだ。
自己啓発ソムリエ 言葉で動くの記事が投稿された合図だ。
僕は思わずスマホを手に取った。
それはまるで、息をするかのように、自然に記事を見ていた。
今回の内容はこれだ。


「睡眠の質」という言葉が気になった。
というのも、僕は寝起きが悪いからだ。
朝起きる時は、ダルいし疲れている。
そして、「改善したい」と思っていても、結局いつもの生活に戻るを繰り返していた。
それに、スマホをいじりながら寝落ちはよくある。
『動画を見ていると、知らない間に朝になっていた』、なんていうこともしょっちゅうだ。
「なるほど…これはやってみる価値がありそうだ…」そう思った。
そこで、スマホとの付き合い方を僕なりに考えてみた。
まず、寝る前の1時間前にはスマホを触るのはやめることにした。
(この際、思い切って別の部屋に置くのもありだな…)
そう思った僕は、大胆な行動を取った。
それは、廊下でスマホを充電するという案だ。これなら、別の部屋になるし、記事にあるドーパミン分泌も避けられる。
そう考えたのだ。
それに、寝落ちすることもないし、幸い、僕はアナログの目覚まし時計を使っている。
現代ではスマホを目覚まし時計にする人が多いが、僕の場合、音が大きいのが決め手となり、購入して使い続けている。

「早速、やってみよう!」
そして、廊下に充電器を持っていった。


13.ネガティブを吐き出す

廊下に充電器を持っていった時、こんな気持ちになった。
(そういえば、朝起きた時のあの「仕事に行きたくない」というネガティブな気持ち、どうにかならないのかな……)
何か対策があるのではないか?
そう考えた。
そして、自己啓発ソムリエ 言葉で動くの過去の記事を見ていたら、とある記事に目が止まった。

「そうか!ネガティブを書いてから寝ればいいのか!」
僕は思わず1人で驚きの声を上げた。

分かりやすく記載されていたのと、科学的根拠もあって信憑性がある内容だった。
そう思った僕は、全くといっていいほど使っていないノートとボールペンを机の引き出しから持ってきた。
とりあえず、色々書いてみた。
こんな感じだ。
・店長に色々言われたけど、山田さんに励まされた。
・納品が早く終わった。
・締切を意識したら、仕事の完了スピードが上がった
こんな感じかな…
なんだか最初はネガティブな気持ちになった。
しかし、不思議とその後、気持ちが軽くなったのだ。
すると、僕の感情が揺れ動いたのがハッキリとわかった。
「これ、毎日続けてみようかな」
そんなことを考えながら、ノートとボールペンを元の場所に戻し、廊下でスマホを充電した後、部屋の電気を暗くした。
薄れる意識の中、
「僕は変わる。絶対に変わるんだ」
あの日誓った思いを忘れないために、何度も何度も、何度も心の中で繰り返していた。


14.僕の第二の母

以前、睡眠に関しての記事を2つ読んだ僕は、体の調子が良いことに驚いている。

まず、朝の気分の落ち込みが少し減ったのだ。
記事にあった通り、寝る前の習慣を続けているおかげだと確信している。

それに、以前は仕事前日の夜に、スマホの見過ぎで朝起きた時には頭が痛くなったこともあったが、それも記事を参考にして行動したことにより、症状が現れることも減った。

ネガティブな気持ちが少なくなると、仕事に前向きな気持ちになれた。
それに、パフォーマンスも上がり、効率も良くなっていることが手に取るようにはっきりと分かった。

そんな生活を1週間続けていた。

心の中で「やっぱり、自己啓発ソムリエ 言葉で動くの記事ってすごい!言われた通りにやってみたら、本当に効果があった!」と思っている。

実は僕は、最近記事が更新されるのを楽しみにしている。
記事を見て行動すれば、私生活が変化し、成長を実感出来るからだ。

それに、
『「僕は変わるんだ」という気持ちを記事を通して応援してくれている』
そんな風に感じていた。

今日は幸い、店長がお休みだ。
言わずもがな、気分がいいのは明白だ。

僕もこの会社に入って、もう5年ほど経つ。
この年数いれば、会社の仕事を自ら進んで実施する立場だ。
実は、僕はこれがとても苦手だ。

ご存知だと思うが、僕の朝のドタバタを見れば、スケジュール管理が出来ないことは手にとるように分かるだろう。

最近は締切を使って、仕事を終了させられるようにはなったが、全体の仕事像は把握出来ず、「1週間の内に何をやるのか?」さえ分かっていない。

でも、店舗の仕事が進んでいるのには訳がある。
それは、店長がシフト表に「〇〇やっておいて」と、汚い字で殴り書きされているからだ。
それはまるで、蟻が這っているような字だ。到底、相手のことを思った字ではない。

だが、このスキルに関しては素直に「すごい」と思うところもあった。
指導の仕方には問題があるが……

そこで、僕も社歴が長いし「出来るようになりたい」という感情が芽生えるのも自然だと思った。

うわのそら気味にそんなことを考えていたら、「よっ!元気?」と川嶋さんが事務所に勢いよく入ってきた。

相変わらずのテンションの高さに僕はたじろいだが、これが川嶋さんのいいところだと確信している。
すると、テンション高くこう言ってきた。

「最近、なんか変わったよね!なんていうか…仕事に前向きになった感じ!!私はいいと思うよ!うんうん!!!」
怒涛の勢いでニコニコしながら陽気に話してきた。

僕は嬉しさを隠そうと、部屋の壁に視線を向けた。
恥ずかしくて言えないが、僕は川嶋さんには本当に感謝しているんだ。

店長に怒られて落ち込んだ時も励ましてくれたり、さらには「ちょっと!やりすぎなんじゃないの!?」と店長に言っていることも知っている。

正直、川嶋さんがいなければとっくに退職していると思う。

すると、不意を突くように川嶋さんが続けた。
「何事もさ!焦らずにやっていけばいいんだよ!私も、子供を育てているからよく分かるの…」
そして、一呼吸置いてから珍しく静かな口調で話してきた。
「人は少しずつしか成長出来ない。子供もいきなりハイハイから歩いたりはしないし、いきなり喋ったりもしない。だから、自分のペースで成長していけばいいのよ!」

そして、最後はいつもの笑顔でこう言った。

「前までは仕事に来た時、ずっと暗い顔だったけど、最近は明るい顔が増えているから、私としては一緒に仕事出来て嬉しいよ!」

それを聞いた僕は、照れを隠して答えないのはあまりにも失礼だと直感で分かった。

だからこそ、ここは素直に、面と向かって真っ直ぐな視線を向けた。

「川嶋さん、本当にありがとうございます。僕、もっと頑張ります!」

僕を見てくれている人がいる。
僕の変化を分かってくれる人がいる。

それがどんなに幸せなことか。
想像は容易いだろう。
この時の思いを忘れないように、「変わるんだ」という決心と共に、心の奥の奥にそっとしまった。


15.スケジュールを組む

家に帰ってくる前に、僕は近くの文房具店でスケジュール帳を買ってきた。

一般的なものでバーチカルタイプにしてみた。
バーチカルタイプとは、手帳の見開きに一週間分の予定が書けて、縦に時間毎に予定を管理出来るものだ。

「一週間の予定が組めるようになりたい」
そんな思いが、購入の決め手になった。

一通り、夜ご飯も済ませて、一息ついている時に、以前スケジュール管理の内容が書いてあった記事を見ていた。

特に、ここに目が止まった。

仕事をしていれば誰でも経験があると思います。
このイレギュラーに対応出来るために、スケジュール計画する段階で、空いた時間を設けることをオススメします。
大体、1時間〜2時間空けていると、イレギュラーが発生した場合でも、スムーズに対応出来るようになります。

引用:【脱・残業】ダラダラ働くのは、時間の浪費。キッチリピッタリ働くのは時間の投資/自己啓発ソムリエ 言葉で動く

確かに予定がパンパンに埋まってしまったら、イレギュラー対応は難しくなる。
とても納得した。

先を把握しておけば、空いた時間に先回りして作業を実施出来る。
そして、今の僕の締切に仕事を終了させる能力と合わせれば、より効率的に仕事を進められるのではないか?

そんなことを考えていたその時、スマホから「ピロンッ!」と、僕が待ち望んだ音が鳴ったのだ。
そう。
「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事が更新されたのだ。

僕は、気になる異性から連絡が来た時と同じくらいのスピードで、記事を開いた。

内容はこれだった。

特にこの部分が印象的だった。

急ぎの用事ばかり選択してしまうと、本当に重要な用事を見逃します。

引用:人生に必要なのは、急ぎの用事ではなく〇〇な用事/自己啓発ソムリエ 言葉で動く

「なるほど…」
とても身に覚えのある内容だった。

自分は今まで重要な用事ではなく、急ぎの用事ばかりを優先してきた。
だからこそ、無駄に焦っていたし、何が重要な仕事か?も分かっていなかった。

この時、初めてそれに気付かされた。

だからこそ「スケジュール管理は大切なんだな」と実感した。

そこで、2つの記事を参考に、スケジュールを組み込んでみた。

今日は日曜日なので、明日の月曜日〜日曜日まで組んでみた。
とりあえず、仕事が入っている日に会社から来ていた指示を思い出して書いてみた。

月曜日 雑貨品の棚替え 納品 メンテナンス 社員業務

火曜日 会社の指示で来ていた値上げ商品の売価変更 納品 医薬売り場で接客

水曜日 休み

木曜日 食品の期限切迫品が売り場に並んでいないか?のチェック 社員業務

金曜日 食品の棚替え 広告商品の注文 納品 メンテナンス 社員業務

土曜日 休み

日曜日 広告POP貼り 納品 メンテナンス 化粧品の棚替え

こんな感じか…

紙に書くと、驚くことに、一週間の流れが手に取るようにわかった。
「これなら、何をいつやればいいのか?が、分かりやすくていいかもしれない…」

スマホにスケジュールを書く人も多いが、「紙に書くことで記憶に残りやすい」と聞いてことがあったので、書いてみたが正解だったようだ。

そして、「何が重要な仕事か?」これが手に取るように分かった。
もちろん、どれも実施しなければならないが、太字になっている作業が重要度が高い。
これが把握出来ていれば、仕事の優先順位も変わってくるだろう。

僕は、満足そうにスケジュール帳へと予定を書き込んでいき、真っ黒な字で埋め尽くしていった。


16.慌てる理由など、どこにもない。

一通りスケジュール帳を書き終えた僕は、パタンと閉じた後、記事を見るためにスマホを手に取った。

縦スクロールしていると、またしても気になる記事を見つけた。
それがこれだ。

この記事は、とても心に深く突き刺さる内容だった。

特にこの部分だ。

よく考えると、ほとんどの人は『秒単位』のスケジュールではないはずです。
それなのに例えば
*️⃣髪の毛をセットする時間を省く
*️⃣朝食を食べない
*️⃣服装を整えない
こういった時間を削ります。

しかし『それでも時間が足りない…』となる場合、他に原因があって思い込みのパターンが多いです。
確かに『早く終わらせなきゃ!』そう思うのはとても立派なことです。
ですが、本当に「そんなに急ぐ必要があるのか?」と聞かれると、そうでもないケースが多いのも事実です。

引用:ゆっくり動く。それが大切。/自己啓発ソムリエ 言葉で動く

この状態、今の僕の状態そのものだと感じた。

「確かに僕は、秒単位のスケジュールではない。しかし、なんで朝もドタバタして、仕事中も無駄に急ぐ時があるのだろう…」

やはり、心のどこかに余裕を感じていないからではないか?

そういう結論に至った。

僕は頭を掻きむしりながら、
「余裕かぁ…それを生むためにはどうしたらいいんだ…」

色々考えた。
早起きするとか、さっきやったスケジュール管理とか。

そして、「意外と身近なことから始めていけば、余裕は作れるのではないか?ヒントは近くに転がっているのではないか?」

僕は、漠然とした直感が働いた。

「とにかく、まずは出来ることから始めよう!」
そう意気込んだ。

そして、今日も自分に「変わるんだ」という思いを胸に抱きながら、1日を終えるのであった。


17.ドラッグストアの接客

僕はスケジュール帳を覗く日が増えた。
そう。
1週間の予定を立てたものを確認していた。

これをすると、全体像を把握することが出来るので、とても仕事の効率が上がり、イレギュラーにも対応出来るようになった。

「なんで、今までこれをしてこなかったのだろう…」とさえ思う。

そして、少しずつだが、朝のドタバタ準備するのも減っていった。
無駄に急ぐことに意味を感じなくなり、出来るだけ余裕を持って過ごすことを意識するようになった。

前までは車の中でヒゲを剃ったりもしていたが、朝にはきちんと身支度を整えて家を後にするようにした。

しかし、「完全に慣れるまでには時間が掛かりそう…」というのが本音だ。

さて、今回も僕の仕事の話をしよう。

「レジ打ち」と「接客」についてだ。

レジ打ちは、お客様が持ってきた商品をお会計する作業だ。

売上に直結するし、「店舗の顔」でもある。
店舗内で1番最後に店員と接するからだ。
そして、クレームが発生しやすい。
失礼な態度を取らないように、僕も新人研修時に、みっちり指導したものだ。

しかし、社員の僕はあまりレジに入ることはない。

どちらかといえば、「接客」がメインだ。
ドラッグストアの接客は、主に医薬品、化粧品の相談や販売だ。
お客様が探している商品の場所まで案内もする。

僕は、登録販売者の資格を持っているので、医薬品の相談を受けることが多い。

一般のお客様に医薬品の違いを見分けるのは難しい。

そこで、資格を持っている僕が相談に乗り、商品選びをサポートするのだ。

正直、僕は接客が得意ではない。
言葉につまづくことや、会社でオススメしなければいけない商品を勧めるのがどうも苦手だ。

そんな僕にピッタリの記事を見つけた。
今日はこれを試そうと思う。
それがこれだ。


内容を見たとき、思わず声に出した。

僕は会社の売上を気にしすぎて、聴くことよりも自分から話すことがメインだったことに、気付かされた。

それは、買い物で服を見ていた時、やたらと話しかけてくるショップ店員をマネしていたことも影響していた。

話さないと売れない気がしていたからだ。

しかし、それではお客様の悩みは解決しておらず、会社都合でオススメしていることになる。

なので、お客様から「拡張話法」で悩みをひたすらに聴いてみた。

これが大正解だった。

話を聴いているうちに「実は入院している人がいて…」など話が始まり、僕は「そうなんですね…どのようなお悩みですか?」と質問を繰り返すうちに、「じゃあ、もらっていこうかしら」と、元々購入予定がなかった医薬品をカゴに入れてくれたのだ。

この時は、「会社のため」ではなく、『お客様のために販売した』という実感が確かにあった。
自分が一方的に話していたら、お客様の悩みを聴くことはなかった。
いつもでは得られない感覚を確かに味わった。

そう。
これが『人の役に立ちたい』というものだと分かった。

自分自身でも驚いていたところに、またしても横槍が入ってきた。

店長だ。
意地悪そうに
「お前、ちょっと売れたからってうかれてんじゃねーよ」

(なんでこんなに言われなきゃいけないんだ…)
胸の中に何か黒いものが渦巻いていた時、

「お疲れ様!いつもお客様のためにありがとう!!」と声が聞こえた。

僕と店長は一緒に声の主に視線を向けた。
すると、先ほどとは打って変わって、店長が
「お疲れ様です!」と、全く違う声色で話し掛けていた。


18.もう一人の上司

只者ではないオーラのスーツ姿の人が立っていた。

店長が普段見せない満面の笑みで近づいていった。

この人は秋本マネージャーだ。
つまり店長の上司だ。

七三でジェルで艶髪を演出しているビジネスヘアーに、ビシッとしたスーツ姿。
ハキハキとした声からはコミュニケーション能力の高さが伺える。
そして、いかにも体育会系であることを証明するかのように、細くてガッシリした体型だ。

いかにも「仕事が出来る人」って感じだ。

何回かお会いしているが、いつも緊張してしまう。

それが上司だからか、はたまた違う感情なのかは検討も付かない。

店長との会話を終えて、僕の方にスタスタと歩み寄ってきた。
すると、
「ちょっといいかな?」と僕を事務所に誘導した。

店長から小声で「失礼のないようにしろよ」と言ってきた。

事務所は静かだが、張り詰めた空気が漂っていた。
緊張から来るものだと感じていた。

マネージャーが先に椅子に座ると、「どうぞ」と手を差し伸べてきた。
僕は「失礼します」とギギッと鈍い音を立てながら椅子に座った。

背中が汗でびっしょりだ。
シャツを交換したいくらいだ。

マネージャーは張り詰めた空気を引き裂くように話し始めた。

「最近、調子はどう?」

僕は、そんな質問だとは思わず、
「最近は順調です。仕事も楽しく出来ています!」

そう答えると「それはよかった」と頷きながら聴いてくれた。

僕の返事を受けてこう言ってきた。

「最近、従業員から君の仕事に対しての意識が変わったって聴いたけど、自覚ある?」

僕は「えっ?」と拍子抜けした声を出した。

恐らく、山田さんか川嶋さんだろう。
マネージャーは普段店舗にいないので、従業員からの話を聞いて、情報を集めるのも重要な仕事だ。

それよりも、あの2人からマネージャーにそんな話をしてくれていたことに、僕は嬉しさが胸から全身に広がっていくのを感じずにはいられなかった。

(ここは2人の思いを踏みにじってはいけない)と思い、僕は震える掌を強く握り締めてこう言った。

「はい。自分で言うのも何ですが、仕事に対しての意識は変わっています」

僕がそう答えると、
「それは良かった!嬉しいよ!前からもっと仕事が出来る社員だと思っていたからさ!」
それを言われた僕は咄嗟に「いえいえ。そんなことありません」と謙遜した。

不意にマネージャーが、
「そうか?俺は意外と人を見る目があるって評判なんだぞ!」と自信満々に言ってきた。

「そうなんですね」と返し、少し笑いが生まれて、僕はホッとした。


19.緊迫の中で

大分緊張がほぐれたのを察したのか、続けてマネージャーは尋ねてきた。
「それで、最近何か困っていることはないか?」

僕は背中にまた嫌な汗が出てきた。
困っていることは『ある』。

そう。
店長の指導だ。
正直、パワハラだと思っている。
しかし、自分の仕事の能力の無さから引き出されたことだとも思っているので、(他人のせいに出来ない、したくない)気持ちがあった。

しかし、自分の今の状況を伝えるまたとないチャンスなのは、事実だ。
だが、ここは気持ちをグッと我慢し、
「大丈夫です。今のところは、仕事も楽しく出来ているので、困ったことはありません」

すると、マネージャーが
「そうか!それなら良かった!その調子で頑張ってくれよ!」と、僕を元気な声で励ましてくれた。

すると、マネージャーが椅子から立ち上がり、僕も座ったままは失礼だと思い、急いで立ち上がった。

そして、2人で事務所を後にしようとした時、気のせいだろうか。
こんな声が聞こえた気がした。
「ちゃんと見てるから心配しないで…」

僕は空耳かと思った。
だから、何も言わずに事務所を出て、次の店舗に行くマネージャーを見送った。

その後、店長から
「お前、何言われたの?」と厳しく問いただされたが、「仕事の話です」と言って、社員業務をするために事務所に行った。

この時、僕は不思議な感覚だった。
それはどこか。温かさを感じるものだった。

例えるなら『安心』だろうか。
両親と同じような見守ってくれる温かさ。

それに近いものがあった。

僕は気合いを入れ直した。
「よし!もっと仕事を頑張らなきゃ!」
そう思わせるには十分だった。

そして、ここから僕は大きく成長していくのであった。


20.見守ってくれることに感謝

秋本マネージャーから、温かい言葉を頂き、そして、山田さんと川嶋さん達が僕を見てくれていることをより実感してから、僕の日常はより大きく変化していった。

接客もいつもなら会社でオススメしなければいけない商品を購入してもらうために、こちらから一方的に話をしていた。
しかし、以前の教訓からお客様に話してもらうように聴き手になるようにした。

すると、月の合計販売金額が、今までの2倍以上の結果になった。

これには本当に驚いた。

それと同じように、スタッフ達にも「急にどうしたの?凄いね!」なんて言われて、僕はとてもとても嬉しい気持ちになった。

もちろん、山田さんと川嶋さんにも同じような反応だった。

(みんなにこんな褒めてもらえるなんて、思ってもみなかった!)

そんな心の声が、僕の率直な感想だった。

そして、なんと「接客の仕方を教えて欲しい」と願い出るスタッフまで現れ始めたのだ。
これにはさすがに
(僕にはそんな資格はない…)

そう思っていたが、せっかくの頼みを断るのも失礼だと思い、僕は今やっている聴き方を教えた。

そうこうしている時、また嫌な視線を感じた。
もちろん、店長からだ。

販売金額が伸びたにも関わらず、一言も褒めてはくれなかった。

それよりも、何だか前よりも態度が冷たい気もする。

川嶋さんには「とりあえず、そのままにしておけば平気だよ」と言っていたが、僕はやり切れない気持ちだった。

そして、仕事を終えて、ふとスケジュール帳を見る。

「明日は研修か…」
誰もいない六畳の部屋の真ん中で、ボソリと独り言を呟いた。

そう。
久しぶりに同期の長瀬に会えるのだ。


21.久しぶりの再会

翌朝、相変わらず喧騒な街を僕は見渡していた、
人が急ぎ足で、お互いを通り過ぎていくのが分かる。

僕はそれに負けないように、研修会場へと向かった。

ちなみに、今日も店長を目指すための内容だ。

しっかりと研修内容をメモした資料をバッグに入れていた時に「よっ!久しぶり!」と長瀬が声を掛けてきた。
(相変わらず元気な奴だな〜)

そう感心したと同時に、「久しぶり!」と返事を返した。

そして、この前行ったラーメン屋に入り、夕飯を食べることにした。

ラーメンを「ズズッ、ズズズッ!」と豪快な音を立てながら食べていた最中に、長瀬はこう尋ねてきた。

「最近どう?」

その問いに対し、僕は即座にこう言った。

「うん。とても楽しく仕事出来てるよ!」

長瀬は、ビックリしたのか目を見開きながら、「マジ!?てか、そんなこと言う奴だったっけ?」と、手に取るように分かるほど驚いていた。

そして、「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」のことを話した。

すると、「なるほどなぁ〜」と感心して頷いてくれた。

長瀬はいわば『恩人』だ。
あの時、noteの話を聞いていなければ、間違いなく今の僕は無いだろう。

本当は「ありがとう」と言いたかったが、いい大人が照れくさいという思いが邪魔をして、とても切り出せなかった。

長瀬も「俺も見てみよう!」とお互い笑い合いながら、それぞれの家路についた。

帰りの電車に揺られながら、この時、自分でもはっきり変わっている自覚があった。

(僕は、変われている!)

その熱い気持ちが、僕を更に奮い立たせた。


22.話は短くする

研修の次の日、僕は朝から出勤だった。
そして、珍しく店長と一緒になった。

一緒にいた山田さんが小さな声で「先輩、大丈夫ですか?」と心配してくれた。

僕は「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」と返事をした。

そう。
昨日読んだ記事があるから。

そして、案の定仕事をしていたら、店長から「これ、なんでこの売場なの?」と指摘が入った。

(やっぱり来たか…)
想定内だと言わんばかりに、僕は堂々とこう答えた。

「はい。それは会社で送られてきた商品と、季節性を考えたときに、こういう結論に達しました」

すると、店長は「そうか…」と答えてから、何処かに行ってしまった。

(よっしゃ!!)と、心の中でガッツポーズをした。

その理由は、この記事を読んだからだ。

僕は今まで、店長からの問いにダラダラと答えていた。

しかし、最初から伝えたいことをまとめてしまって話せば、言い返されることはないのでは?と考えたのだ。

それに、今までオドオドしながら答えていた自分にも原因はあったと思う。
(昨日、必死に練習した甲斐があったなぁ…)

そう思い、今度は右手を小さく握り、ガッツポーズを取った。

この「話を短く」は店長にだけでなく、他にも使うことが出来た。

例えば、指示を短くすることで、正確に相手に伝わるので、チームの連携も取れるようになったのだ。

(話を短くしただけなのに、こんなにも違うは…やってみて良かった!)

これほど周りの環境にも変化が及ぶとは思いもしなかった。
その効果に、僕はただ感動していた。

『僕はもっと変われる!』
そう信じている。

そして、これからも僕の変化は続くのであった。


23.少し認められた

あれから1ヶ月以上が経った。
店長との付き合い方だが、記事のおかげで大分楽になった。
的確に結論をズバッと言うようになってから、パワハラまがいの指導が減ったのだ。
とはいえ、完全に無くなったわけではないが…
でも、僕は少し嬉しかった。
それは、
(店長も僕のことを少しは認めてくれたのかな?)と、薄々感じていたからだ。
相変わらず販売金額も調子が良く、後輩の指導が続いていた。
そんなある日、店長から呼び出された。
(いきなり何だろう…)
急な胸騒ぎを感じつつ、僕は事務所の扉を開けた。
それは、いつもよりも少し重たく感じた。
店長が椅子に座りながらこちらに振り返り、言ってきた内容に僕は心底驚いた。
それは、「今度、山田さんと川嶋さんをはじめ、部下の指導をしてほしい」というものだった。
信じられなかった。
夢でも見ているのかと思った。
まさか、店長からそんな提案をするとは思いもしなかった。
それを聞いた時、耳を疑ったが、どうやら本当だという事実に辿り着くだけだった。
断る理由など、どこにもない。
もちろん僕は「分かりました!やらせて頂きます!」と力強く答えた。
この時の気持ちを、なんて表現したらいいだろう。
でも、これは間違いなく言える。
僕は初めて、店長に頼りにされているのがとても嬉しかった、と。


24.指導のコツを探せ

僕は、山田さんと川嶋さんをはじめ、指導をすることになった。
今までの指導は、販売金額を伸ばす接客がメインだったが、他の業務指導もすることになる。
山田さんは僕の後輩社員なので、社員業務指導がほとんどだろう。
そして、川嶋さんは化粧品販売が得意なので、その接客を教えることになるだろう。
つまり、全くタイプが違うのだ。
(どうしたものか……)
僕は考えながら自宅に帰ってスマホでいつものように記事を探していた。
右手の人差し指で縦スクロールをしながら、とある1つの記事を見つけた。
「なるほど!これなら!!」
そう直感がそう告げて、思わず声に出た。
早速僕は明日実行してみることにした。


25.指導を実践

出勤した僕はまず、山田さんの指導をすることにした。
僕と同じ社員なので、仕事内容は、
・精算
・クレーム対応
などである。
そこで、僕は事務所で2人きりになってから、山田さんにこんな質問をしてみた。
「最近、何か困っていることはある?」
山田さんは僕が指導してくれることを店長から聞いていたので、答えを準備してきたのか、すぐにこう答えてきた。
「実は…クレーム対応をどうしたらいいか分からなくて……」
僕は「なるほど…」と納得しながら答えた。
そう。予想していた答えだったからだ。
社歴が短い彼女でも、これは避けては通れない業務だからだ。
それに、僕も同じことで悩んでいた時期があったので、ある程度は予想出来たのだ。
そんな回想をしながら、山田さんにこう言った。
「クレームは、まずお客様の話をちゃんと聞いてあげることが大切だよ」
真剣に話を聞いてくれる山田さんに、僕は続けた。
「クレームって悪い印象かもしれないけど、実は、解決すれば僕たちのファンになってくれることも多いんだ!だからこそ、『話を聞いてほしい』と思っている人が多いんだよ!」
僕は、こんな指導を後輩にするのは初めてだった。
緊張していた。鼓動が早くなる。
それを鎮めるかのように、バレないようにスーッと息を吸って、更に続けた。
「だからこそ、『クレーム=悪いこと』と思ってはダメ。
『素晴らしい意見を言ってくれる人』ってポジティブに思った方がいいよ!」
この話を聞いた山田さんは、大きい瞳を更に見開いて、笑顔でこう言った。
「はい!先輩!ありがとうございます!私、やってみます!!」
こう答えてもらい、僕は自分の中に喜びを感じた。
次は、川嶋さんだ。
正直、年上の方に指導をするのは緊張する。
僕は川嶋さんと事務所で2人きりになってから、山田さんの時と同じように「最近、何か困っていることはありますか?」と質問してみた。
正直、いつも川嶋さんに助けられてばかりなので、困っていることはないと思った。
しかし、それは僕の勘違いだと思い知らされることになった。
「実は、たまに私でも話が続かない時があるのよね…」
まさか、コミュニケーション能力が高い川嶋さんがそう思っていることに驚いたが、僕はこう答えた。
「では、僕が販売金額を伸ばした時に使った『拡張話法』を使ってみてはどうでしょうか?」
提案が終わった後、2人で化粧品売り場に行って、拡張話法を練習してみた。
僕はお客様。
川嶋さんが店員だ。
すると、意外なことがわかった。
川嶋さんは、自分でガンガン話し掛けにいくタイプなのは知っていた。
だからこそ、相手が無反応の時もあるのだ。
そして、拡張話法を使い、僕の話を聞き出し、川嶋さんが質問でどんどん聞き出していった。
何回かやるうちに、やり方が新鮮だったのか、話が面白いように拡がっていったのだ。
練習を終えた川嶋さんが、僕に向かっていつもの明るい口調でこう言った。
「こんなに違うんだね!ありがとう!いい勉強になったよ!!」
お礼を言ってもらえて、僕はまた自分の中に喜びを感じていた。
思った以上に指導が上手くいって、ホッと一息、コーヒーを飲んでいた。
そう。
この2人にしたことは、この記事のおかげだ。

要は、1人1人の悩みを聞いて、それについて話すことが大切だと考えたのだ。
自分がやりたい指導をしても、それは一方通行でしかない。
しかし、質問形式であれば、そうはならない。
効果が僕の予想を超えていたのは、言うまでもないだろう。
(僕はまた成長したんだ!)
飲みかけのコーヒーをグッと飲み干して、大きく息を吸った。
「また変われた」という気持ちを忘れないために。


26.久しぶりに会いに行く

あれから僕は、山田さんと川嶋さんをはじめ、部下の指導を続けていた。

僕が思っていたよりも好評で、「もっと教えてほしい」という声も挙がっていた。
非常に嬉しいことだ。

それから、より「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事を見て、行動する日々が増えていった。

そして、その数だけ確実に自分が成長への階段を登っていることも実感していた。

そんな時、ふと、こんなことが思い浮かんだ。

(久しぶりに会いに行ってみよう)

そう。
入院している父に。

とある日、高速道路を降りて、少し走ったところに父が入院している病院へ向かった。

いざ病院の前に着くと、何故だか緊張してきた。
僕は、胸の鼓動を抑えきれなくなっていた。

受付を済ませて、エレベーターを使わずに、階段で父のいる病室まで向かった。

病室の前に到着し、大きく息を吸いこんだ。
そして、ガラガラと大きな音を立てながら、父の病室のドアを開けた。

すると、目の前に、ベッドの上で本を読んでいる父の姿があった。
その横に、母もいた。
2人とも僕の方を見ていた。
僕は、「久しぶり」と両親に言った。
2人とも僕を歓迎してくれた。

パイプ椅子に座ると、父がこう言ってきた。
「どうだ?最近の調子は?」

それを聞いた僕は、少し笑いながら、とっさにこう聞き返した。
「それはこっちのセリフだよ。順調だよ。父さんはどう?」

すると父は「体調は順調に回復しているよ。」と答えた。
その答えを聞いた僕は、とりあえずホッと一安心した。

すると、僕から仕事の話をした。
最近、仕事が楽しいこと。
販売金額が2倍以上になったこと。
部下に指導をしていること。
こう話しているうちに、自分でもかなり多くのことをやってきたんだな、と実感していた。

黙って話を聞き終わった父は、こんなことを言ってきた。

「なんか、雰囲気と顔つきが変わったな」
僕は、ドキッとした。
そして、驚いた。
それを聞いた母も、ニッコリと笑顔になっていた。

僕は照れを隠すので精一杯だったが、両親にはバレているだろう。

しばらく話し終わったあと、僕は帰路に着いた。

一番近くで見てくれる人に褒めてもらえた喜びを噛み締めながら。


27.今日も作戦会議

あれから数日が経った。
父に褒めてもらったことが、とても嬉しく、気分が高揚した日が続いていた。

仕事は驚くほど順調だ。

そして、そんな僕に新たな仕事が舞い込んできた。
それは、「会社の指示を実施する」という内容だった。

今までも、会社の指示を実施してきたが、これは店長の意向で、「もっと多くの指示を担当してほしい」と言われたのだ。

まぁ、2つの意味で驚きだった。

そして、これには頭を悩まされた。

今までは、
【会社→店長→僕】
という流れだったが、
【会社→僕】になるわけだ。

つまり、「どうやっていくか?」も決めなけらばならない。

とりあえず、店長から聞いた話を、自宅に持ち帰り、1人で作戦会議をすることにした。

コンビニラーメンを食べ終えた僕は、スマホを取り出した。
慣れた手つきだ。

しばらく記事を見ていると、1ついい記事が見つかった。
「これを明日試してみよう!」
そう決意させるには十分の内容だった。


28.さっそく行動!

次の日、僕は出勤した。

まずは、パソコンの前に座り、会社からの指示を確認した。

そこには、
「従業員への連絡事項」
「作業内容」が記されていた。

そして、内心(これ、現実的ではないな…)という指示も正直あった。

一通りチェックし終わった後、僕は行動を開始した。

まず、連絡ノートに会社の指示を書いた。
これは、毎回出勤時に従業員が読む決まりになっている、
ここに書いておけば、自然と会社からの連絡事項が伝わる仕組みになっている。

次に、売場変更だ。

小売業なので、売場を変えて購買意欲や季節感を出すためだ。
春には、肌の露出が増えるので、皮膚薬が売れたり、また、冬には鍋つゆが売れたりする。
そういった売場変更が必要なのだ。
そこで、昨日見た記事を使うことにした。
それは、

この記事で興味を持ったのは、「現場判断を重視せよ」というものだ。
もちろん、会社の指示は大切である。
しかし、どうしても限界があるのも事実だ。
そこで、『お客様のため』という気持ちで現場判断を重視すれば、より良く指示を実施することが出来ると考えた。
出来上がった売場は確かに、会社の指示とは違った。
しかし、現場で実際に見た棚の大きさや在庫量、地域性による売れ行きを加味した売場なので、よりお客様のためになっていると確信した。
後で、店長にも見てもらった。
短く的確に結論から話すことで、納得してくれた。
またこれで1つ成長した。
成長が楽しくなってきている。
やはり『自己啓発ソムリエ 言葉で動く』との出会いは、僕にとって必要だった。
そう感じずにはいられない日々である。
これからも、こんな毎日が続くと考えるだけで、胸が高鳴ってくるのだった。


29.ショッピングモールにて

僕は珍しく、ショッピングモールに足を運んでいた。
ここは、僕の住んでいる所で一番大きい。
自宅から車で約1時間程度のところにある。

立ち並ぶ店は様々で、洋品店や雑貨店、フードコート、さらには子供が遊べるスペースなどもあり、家族が来ても、カップルが来ても充分楽しめる。
ちなみに、ここはオープン当初には、メディアで話題になった。

そんな所に、僕は「とあるもの」を買いに来ていた。

正直、僕がこんなところに買い物に来たのは、いつ以来だろう。

家族と久しぶりに会ったときか。
それとも、友達と来た時か。
それを思い出せないくらい昔の話だ。

僕は、ショッピングモール内にある案内板を見て、目的の店を探した。

スマホで検索して何件か行きたいところを決めていたので、広いショッピングモールを効率よく周りたいと考えていた。

早速1件目に入った。

とてもおしゃれな店内だった。
アンティーク調をメインとした落ち着いた雰囲気。
照明も造りがこだわっている。
そして、店員さんも、自分たちの会社の服を着こなしていた。

(僕がこんなところにいて、場違いではないか?)
そんな不安がよぎるほどだった。

その不安を払拭して、僕は商品を選んでいた。

そう。
僕が今日買いに来たのは「洋服」だ。

正直、ファッションゼロなので、僕だけでは選べないので店員に声をかけた。

細身でスラッとした背の高い男性に声をかけた。

「あの…すみません。
仕事で使う服を探してまして……」

そう言うと、店員は優しい笑顔で、
「なるほど!どんな感じをお求めですか?」

そう聞かれた僕は、頭の中にあったイメージを店員に伝えた。

お互いに意見を出し合いながら、何度も試着していくうちに、僕のイメージ通りの服が見つかった。

直感的に「これだ!」と思った僕は、「これください!」と答え、20,000円ほどで購入した。

そして僕は、店員に入り口まで見送ってもらい、大きな紙袋を手に取って店を後にした。

こんな調子でお金を使っていき、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
そして、一通り買い物が終わり、ショッピングモール内のカフェで休憩することにした。


30.僕が買い物に来た理由

僕は、ブラックコーヒーのMサイズを注文して、テラス席に座った。

そして、高いビルを見ながら、スマホをバッグから取り出し、1つの記事を見た。

そう。
今回、洋服を買いに行こうと思った記事だ。


正直、仕事の服は「何でもいい」と思っていた。
僕の仕事は、アクティブに動くので「汚れていい」と思い、適当にラフな格好を選んでいた。

でも、この記事を見て「服にこんな効果があるとは知らなかった」と驚かされた。

「服はその人の意識を変える」とあるが、とても説得力のある内容だった。

だからこそ、自分の身だしなみを見直す良いきっかけとなった。

「こんな感じがいいかな…」というのは、雑誌や画像検索で出てきたものを参考にした。

幸い、それに近いものがあったので、運がよかったのかもしれない。

(早速、明日着てみよう!)
そう心に思いながら、コーヒーを飲み干して帰宅した。


31.服装の効果を体感する

次の日、僕は新しい服を着て出勤した。

それは、Yシャツにネクタイ、それにスラックスだ。
靴は、とにかく動く仕事なので、革靴のような見た目の運動靴にした。

僕は、店舗に着いて従業員に向かって「おはようございます」と挨拶をした。

そうしたら、周りから早速反応があった。

まずは山田さんからだ。
愛らしい瞳をさらに大きく見開いて、僕にこう言ってきた。
「あれ?先輩どうしたんですか?服装、とってもいい感じです!」
そう褒めてくれた。

次に、隣にいた川嶋さんから、「おっ!いいね!!おしゃれじゃん!仕事が出来るって感じがする!」

2人とも、僕の服装をとてもよく思ってくれた。
正直、とても照れ臭かった。
そして同時に、自信がついてきた感じがした。

僕は、2人に向かってこう言った。
「ちょっと服装を変えて、気分も変えようかなぁって思いまして」

「あぁ〜!なるほど〜!」と、納得してくれた。

この2人が、オシャレなのは、なんとなく感じていたので、そう言ってくれたことが、素直に嬉しかった。

そして、この服装で仕事をしていると、思わぬ変化があった。

それは、「発言に自信がついた」ように感じたのだ。

普段と同じ言葉を話しているのに、服装が変わっただけで、相手が受け取る印象も変わっていた。

それは、お客様に対して。
従業員に対して。
自信を持って接することが出来た。

これはとても大きな発見だった。

最初は、服装を変えて(変な目で見られたらどうしよう……)と思ったが、勇気を振り絞ってくそ変えてみて良かったと心から思った。

服装を変えるだけというシンプルな方法だったが、その効果に感心しながら、今日も仕事をしていくのであった。


32.読書をはじめる

服装を変えて自分への自信を実感しながら数日経った僕は、いつものように記事を見ながら、こんなことを考えていた。

(今までは知らなかったことが山ほどあった。でも、記事を見ていろいろなことを知って成長してきた。この事実は揺るぎないものだろう。)

一呼吸おいて、心の中でこう思った。

(ちょっと、読書でもしてみようかな…)

そんなことを考えた次の日、雨が降りしきる中、僕は本屋に行った。

さすが書店。
様々な本が並んでおり、個性豊かな表紙が僕の目に飛び込んできた。

普段は漫画しか購入しない僕が、ビジネス書等のコーナーに行くことに違和感を感じていた。

コーナーに到着した僕は、
(まさか……自分がここに来るとは思わなかったなぁ。)
そんな気持ちを抱きつつ、表紙が見えるように並べてある本を見つめていた。

(本当にいろんな本があるんだなぁ…)
そこには、お金の悩み、起業、雑談、時間の本、副業などが並んでいた。

その中から、今の仕事に役立ちそうな本を何冊か購入し、近くのカフェに入った。


33.初めてに近い読書に苦戦

落ち着いた雰囲気の店内に、僕の心を落ち着かせるBGMが流れていた。
ジャズだろうか?
音楽に疎い僕は、はっきりとはわからないが、この店がお客様を落ち着かせるという気持ちが伝わってきた。

前回のショッピングモールと同じで、コーヒーのMサイズを頼んだ。

カウンター席に座り、まずは購入した一冊を手に取った。

これは、「接客」に関する本だ。
今の仕事に関係すると思ったのと、表紙が自分好みだったので、購入した。

とはいえ、読書は生まれて初めてに近い。
こんなに本を読んだのは、学生の時以来だ。

それでも何とか読み進めていった。

そして、自分が使えそうな知識をスマホのメモアプリに入力した。

これは、僕なりに考えたアウトプットだ。
スマホであれば、すぐに見返せるので便利だと思った。

さらに、もう一冊を手に取った。

今度は「指示の出し方」についての本だ。

僕は最近、指示を出すことが増えているが、相手に正確に伝えられないことで悩んでいた。

なので、「どうすればもっと正確に相手に伝えられるか?」という答えを見つけるために本を購入した。

読み慣れない活字をなんとか読み進めていったところ、自分にも出来そうなものが見つかった。

すかさず、スマホのメモアプリに入力した。

こんな感じで、コーヒーを再度注文しながら、何冊か読み観終わったところで、僕は店を後にした。


34.さっそく行動開始

その次の日、僕は店に出勤した。

早速、昨日メモしたことを実践することにした。

まずは接客だが、僕は、もっと相手の欲求を満たすことを考えるべきだと思った。

実際「治したい」「良くなりたい」という欲求があるから、ドラッグストアに買い物に来てくれている。

それを見抜ければ、もっとお客様のためになると考えた。

僕は徹底的に、お客様の話に耳を傾けた。

すると、なんとなく相手が求めているものがわかったのだ。
もちろんこれは、今まで接客してきた経験があったからできることでもあった。

「何で悩んでいるか?」
「どうしたいのか?」

うまく説明できないけど、そう感じ取ることができた。

すると、いつもの2倍以上は販売することができた。
この前も販売金額が伸びたが、さらにその2倍なので、僕がいろいろ行動する前とは比べ物にならない実績である。

次は、部下への指示だ。
これも、本で読んだ通り、話を短くコンパクトにすることを心掛けた。

それは、「僕は話が長い」という自覚があったからだ。

なので、相手に何度か聞かれされることもあった。

そこで、「何を話すか?」を紙にまとめてから、相手に伝えるようにした。
これなら、迷わずに相手に話を進めることができるからだ。

これを繰り返して、いつもうまく伝えられた気がした。

今日の仕事を終えて、車の中で1人考えていた。
初めて記事の力を借りずに、仕事の悩みを解決して、味わったことのない達成感があった。
これは、人から言われたことをやったのではなく、自ら考え行動したからこそ得られたものだと、直感的にわかった。

この感覚を忘れないように、今日も成長と共に、胸の奥にしまい込んだ。


35.月日は流れて…

あれから半年経った。
どこから話せばいいだろうか?

僕の周りで、本当にいろいろな変化が起こった。

まず、このことを話すべきだろう。
僕は、個人販売金額で全国1位を獲った。
これには、正直とても驚いた。

賞の内容だが、1カ月間自社製品を多く販売できた人に贈られるものだ。

これは、さすがにスタッフ含め店長も驚いていた、

次に、この話もするべきだろう。

同期の長瀬が、店長に昇格した。
僕は、その知らせを秋本マネージャーから聞いた。
メールで「店長に昇格おめでとう」と連絡した。

すると、こんな気持ちが芽生えてきた。

【僕も店長になりたい】

やはり同期が活躍するというのは、僕にとって刺激になったようだ。

そして、最後にこの話をしよう。

僕は、店長の仕事だんだん任せてもらえるようになった。

これは、秋本マネージャーの意向だ。

店長はしぶしぶ了承していたが、最近ではシフト作りなんかもやっている。

ちなみに、あれから読書も続けている。月に1〜2冊は読めるようになった。
理由は、無駄に動画やテレビを見るのをやめたからだ。

読書からは本当に学ぶことが多く、仕事でも活用している。

こんな感じで、僕の数ヶ月は過ぎ去っていった。

信じられるだろうか?
あの記事と出会ってから、もう1年が経つ。

これほど、自分が大きく変わると思わなかった。

もちろん、今でも記事は見続けている。
せっかくなので、今まで僕がしてきたことを思い出してみようと思う。


36.僕の軌跡

まず、僕は「仕事に行きたくない」と言いながら、目覚まし時計を止めていた。
仕事が好きではなかった。
そして、時間にもルーズだった。
どれぐらいルーズだったかというと、朝に余裕を持てず、車の中でヒゲを剃っていたほどだ。

しかし、同期の長瀬からnoteの存在を知り、「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の存在を知った。
そこから、僕の全てが変わっていった。

まず、時間にルーズだったので、「何時までに終わらせる」という締め切りを作った。
そして、スケジュール帳も活用した。
さらには、気持ちよく起きるために、スマホの充電場所を変え、ネガティブな気持ちを紙に書き出すようにした。

これが、僕の変化の始まりだった。

また、接客では、今までは会社から「販売してください」と指示された商品を、ただお客様に販売していた。
しかし、お客様の話に、耳を傾けることで、販売金額が以前とは比べ物にならないほど上がっていった。

また、身だしなみにも気を使うようになり、自分に自信が持てるようになった。


次に、職場での変化といえば、まず、店長がパワハラの指導を僕にしていた。
しかし、これも記事に書いてあった「結論から言うこと。話を短くすること」を、実行したところ、対応が少しずつ変わっていった。
でも、理由はこれだけではなく、僕の日々の変化に気づいていたのだと思っている。

次は、部下の話だ。
山田さんと川嶋さんをはじめ、指導する機会が増えた。
接客の指導はもちろん、悩みを聞き出して答えることもやった。


これだけの変化があった。
こうやって振り返ると、本当に多くのことをやってきたと思う。
この行動の数こそが、成長に繋がったのは言うまでもない。

僕は、改めて記事に出会えた喜びと感謝の気持ちを胸に抱いた。


37.これから大仕事だ

さて、実は大きな仕事が僕に舞い込んできた。

それは、従業員との面談だ。
これは、毎年実施するのだが、本来なら店長がするものだ。
しかし、これも秋本マネージャーの意向で、僕がやることになった。

内容は、一人一人時間を取って、悩みのヒアリングや会社方針の説明をするのだ。

本来であれば、何事もなく終わる。
終わるはずだった。

しかし、これが僕にとって最悪の事態を招くことになるとは、この時微塵も思っていなかった。


38.最悪の知らせ

僕は、従業員と1人ずつ面談するために準備を進めていた。

「何を聞こうか?」
「こういう悩みが来たら、こう答えよう」

こんな感じで考えていた。

普段の面談なら、これらを聞いて「来期もよろしくお願い致します」で終了になる。

しかし、今年は違った。
ありえないことが起こった。

とある日、秋本マネージャーから1本の電話が入った。

「すまんが、ちょっと…話があるんだ……今度、時間をもらっていいかい?」

そう言われた僕は、数日後秋本マネージャーと事務所で向かい合うことになった。

僕にもわかる。
かなり真剣な表情だ。

僕の緊張が一気に全身を駆け抜ける。

この空気に耐えかねた秋本マネージャーは、重い口を開いた。

「実は……会社から人件費カットの要請が来た……」

「えっ………」

僕は、一瞬何を言われたかわからなかった。

半ば怒り気味で、すかさず聞き返した。

「そんな!どうしてですか!!」

それを聞いた秋本マネージャーは、
「会社の方針だよ……」
そう言うと、ことの経緯を話してくれた。

なんでも、1年前に初めた新規事業がうまくいかなくなり、撤退することになった。
しかし、投資金額が多かったため、資金回収のために人件費カットに踏み切ったのだ。

「そんなのおかしいです!!」
僕はそれでも反論した。
部下という立場を忘れて、激しく反論した。
強烈な感情が、僕を貫いた。

すると、秋本マネージャーは、
「本当に申し訳ない……」
うなだれながら今まで見たこともない悲しい表情でつぶやいた。

それを見た僕は、何も言えなくなってしまった。


39.従業員達からの反発

それから僕は、ずっと考えていた。

店長にも相談したが、
「俺は任されていない。
お前が受けたんだから、手を貸さない」の一点張り。

これはもう、1人でやり切るしかない。

あれから、「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の記事を読んだ。
更には、本屋で使えそうな知識が載っている本を購入し、解決策がないか?を模索した。

そして、運命の面談日がやってきた。

こんなに仕事に来るのが嫌だったのは、初めてかもしれない。

今までは、自分が「行きたくない」であったが、これからすることを思うと、気が重くてならない。

その嫌な気持ちは、顔にも表れていたようで…

そして、重い空気の中、面談を開始した。

最初は山田さんだ。
美しい姿勢で、足を揃えて座っている。
しかし、どこか落ち着かない様子である。

僕は、山田さんに会社が人件費カットをすることを話した。

すると、僕の話を遮るかのように、
「そうですか…わかりました……」と言った。
この残念そうな顔を僕は忘れないだろう。

山田さんは社員だ。
彼女は人件費カットの対象ではない。

そう。
彼女はこれから何が起こるのかを察したのだ。

次に、川嶋さんだ。
いつも陽気な彼女だが、僕の異変に気が付いたのか、真剣な表情だった。

張り詰めた空気の中、僕は言った。

「川嶋さん、本日はお時間をいただきありがとうございます。
実は、お話があります」

僕は続けた。

「申し訳ありませんが、会社の新規事業が撤退となり、人件費カットの案が来ております」

川嶋さんは黙って聞いていた。
僕はもう、しゃべりたくなかった。

「なので、来期からはシフトが少なくなり…」

すると、僕の話を遮って、川嶋さんがすかさず
「なんで?どうしてそういうことを普通に言えるの?」
こう反論してきた。
当然のことだろう。僕は何も言えなかった。

「あんなに頑張って仕事してきたのに…あなたはそれでいいの?」

僕はうつむいた。
いや、うつむくしかなかった。

「確かに会社の都合はわかる。でも、他に方法はなかったの?」

かなり強めの口調だ。
しかし、僕はその中に悲しみが含まれているのを感じた。

僕は、こう言った。
「本当に申し訳ありません」

すると、川嶋さんが、僕と話しても埒があかないと思ったのか、
「そうですか…残念です……」
そう言って椅子から立ち上がり、事務所を後にした。

事務所には、居心地の悪い空気が流れていた。
まるで、時が止まったかのように、周りの景色も歪んで見えた。

あれから時間を空けて面談したが、他の従業員も同じような反応だった。

僕は、全身が切り刻まれるような深い悲しみに暮れていた。


40.本当に、これで…良かったのか……

(僕はどうすればよかったんだ…?)

家に帰ってから、ずっと、ずっと考えていた。

そして、今まで頑張ってきた従業員達の顔を思い浮かべていた。

(なんで僕がこんな目にあうんだ…意地悪じゃないか……)

涙がこぼれる。
どうしたらいいんだ…

手の甲で涙を拭き、僕は、ある言葉を思い出していた。

それは、川嶋さんのこの言葉だ。
「確かに会社の都合はわかる。でも、他に方法はなかったの?」

僕は、何か大切なものを見落としていたかもしれない。

本当にこの方法しかなかったのか?
いや違う。
そう思い込んでいただけだ。
しかし、僕は会社員だ。
会社の指示は聞かなければいけない。
だが、心がこう言っている。

「これは、間違っている。間違っているんだ!!」

そう思った途端、何かが込み上げてきた。

(僕は、みんなを救うんだ!)

たとえ、会社になんと言われようと、探し出してみせる。

それが、みんなに出来る僕なりの恩返しだから。


41.神様からの贈り物

あれから僕は、時間があれば、みんなの人件費をカットしないで済む方法を探していた。

朝も夜も、風呂に入ったときも、運転してるときも、街中を歩いているときも、僕なりにずっと考えていた。

従業員と面談が終わった後、秋本マネージャーとは、何度か連絡を取り合っていた。

やはり、マネージャーも、僕と同じ気持ちだということが分かり、少し安心した。

僕は、「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の1番最初に見た記事を思い出した。

ここで諦めたら、みんなに迷惑が掛かる。

家族を養っている人や、奨学金を返済するためにアルバイトをしている人もいることを知っている。

だからこそ、諦めちゃいけない。
諦めちゃならないんだ。

そんな思いでいたとある日、家でなんとなくテレビを見ていた。
座布団を敷いて、横になってみていた。

こうやって、ぼーっとしながらテレビを見るのはいつ以来だろうか?

それもそのはずだ。
テレビを見ないかわりに、読書をしたり、スケジュール帳に予定を書いたりしている。

(僕も…ずいぶん変わったんだなぁ……)
以前の自分との変化を感じながらも、ぼんやりとテレビを見続けていた。

そんな時、長いCMが終わり、「移住生活」の特番が映し出された。
たまにやる特番で、東京から田舎に引っ越し、自給自足の暮らしを特集している番組だ。

(東京から田舎に移住か……)

普段は見ない。
こういった番組には、あまり興味がないというのが、正直なところだ。

(チャンネルを変えよう…)

そう思い、寝ている体を起こし、右手でテレビのリモコンを持った。

すると突然、僕の頭に電流が走った。
まさに、神様の贈り物だった。

僕は、寝ていた体を即座に起こし、興奮気味にテレビまで行き、両手でテレビを鷲掴みにした。

『これだ…そうか!これだよ!!』

そう叫んだ瞬間、テレビを前へ後ろへと揺らしていた。

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42.提案

次の日、僕はすぐ秋本マネージャーに電話した。

そこで、僕はこう答えた。

「マネージャー、もし可能であれば、従業員を他店に移動出来ませんか?」

そう。
僕の思いついた考え。
それは、「他店舗への異動」だった。

普通、パートやアルバイトの異動は無い。
配属された店舗で、ずっと勤務するというのが一般的だろう。

だが、社員は異動する。
なので、パートやアルバイトも同じく異動出来るのではないか?そう考えた。

すると、秋本マネージャーは、
「なるほど…ちなみに、他の店に異動したい人はいるのかい?」

僕は答えた。

「いえ。それはまだ分かりません。
ですが、従業員たちに聞いてみます。」

そう言うと、「わかった」とだけ言って電話を切った。


43.起死回生の行動開始

早速、僕は面談をした。

一人目は、パートの女性従業員だ。
この人は、実は以前から「仕事の割に給料が安い」という悩みを僕に打ち明けてきた。

当然、会社の人件費カットに反発してきた1人だ。

事務所で僕は向かい合う。
「一体何の用ですか?」
かなり敵意剥き出しの態度だ。
手に取るようにわかる。

僕は、汗ばむ手をグーパーしながら乾かし、こう言った。

「あの時は申し訳ありませんでした。実は、今日はお伺いしたいことがあります。もし、他の店舗に異動出来るとしたら、いかがでしょうか?」

そう聞くと、パートの人は「ちなみにそれってどこの店舗ですか?」
僕は、「それはちょっとまだわかりません。」と答えたその直後、思わぬ答えが返ってきた。

「実は…母が病気で、今後私が介護しなければいけないかもしれません。
実家が東京にありまして、旦那と話し合っていたんです。
でも、この仕事のこともあり、悩んでいました…」

僕は、その話を聞いてとっさに、
「それは大変でしたね…もしよろしければ、その話、秋本マネージャーにしてもよろしいでしょうか?」

そう言うと「よろしくお願い致します」と、さっきの怒りの態度とは裏腹な凛とした態度で、深々とお辞儀をしてきた。


次にアルバイトだ。
4月から、大学生になる学生がいた。
その子は、東京の大学に進学することも知っていたので、同じように「もし他店に異動できるとしたらどうですか?」と聞いてみた。

すると、「やはりできれば学校の近くのお店で働きたい」そう申し出があった。
こないだの面談のときには、この話を切り出しづらかったと続けて言ってきた。

こんな感じで面談を進めていき、3人ほど「他店に異動したい」と聞き出すことが出来た。

その結果をすぐに、秋本マネージャーに伝え、「わかった。本当によくやってくれた。ありがとう。後は任せてくれ。」その言葉と同時に、僕は赤い✖︎ボタンを押した。

面談が終わり、一息ついている頃、山田さんが話しかけてきた。
どこか落ち着かない様子だ。
そういえば、あれからあんまり話してなかったっけ…

そんな雰囲気でいたら、
「先輩、大丈夫ですか?」
いつもの山田さんだ。そう思いながら、懐かしい声を聞いていた。

僕は、「あぁ。大丈夫だよ。」と、元気では答えたつもりだけど、顔の疲れは、どうも隠しきれなかった。

すると、山田さんが申し訳なさそうに、
「川嶋さんが、先輩にキツく言い過ぎたって言ってましたよ…」

僕は、胸がぎゅっと締め付けられた。
即座に「違う。そんなことは無いよ。傷つけたのは僕だ…」

あれから、僕は川嶋さんと話をしていない。
それは、申し訳なさからくる躊躇だった。
あんなことを言っておいて、どんな顔で話していいのかわからなかった。

(何とかしてあげたい…)

みんなのために、僕ができることをする。
僕を突き動かしているのは、その思いだけだった。


44.苦難を乗り越えて

僕は、従業員と守る決意を固めた後、秋本マネージャーと従業員と何度も話し合っていた。

そして、他店に4名の異動が決まった。

本当に、みんなには感謝の気持ちしかない。
僕と話すために、時間をとってくれたこと。
他店と交渉してくれた秋本マネージャー。

様々な思いが、入り混じっている。

そして数日後、事務所で作業をしていたら、「コンコンッ」と、少し緊張気味な音が聞こえた。

僕は首だけを後に回し、そこに立っている人を見つめた。

そう。
川嶋さんだった。

少し重い空気の中「少し…いいかな?」そうつぶやいた。

僕は「どうぞ」と目の前にある椅子を差し出した。

こうやって、面と向かって話すのはいつ以来だろうか?

さっきよりも重くなった空気の中、先に口を開いたの僕の方だった。

「川嶋さん。本当に申し訳ありませんでした。
川嶋さんの仰っていた通りでした。
僕は「会社の指示だから」と言って、意見を押し通していました」

川嶋さんの目が見開く。
僕は続けた。

「ですが、あれから『それはいけないことだ』と思い返したんです。だからこそ、僕なりにみんなを守りたかったんです」

それを聞き終えた川嶋さんは、

「わかってる…あなたの行動を見ていて、私も『なんで…あんなに強く言ってしまったんだろう…』って、ずっと後悔していたの……私の方こそ、本当にごめんなさい…」

それを聞いた僕はすかさず、
「いえ、悪いのは僕です。だから謝らないでください。」

そして、僕は一呼吸置いた。
ついに、僕がずっと口にすることを躊躇っていた言葉を伝えた。

「よろしければ、こんな僕ですが、来期もよろしくお願い致します」

そう言うと、「こちらこそ、よろしくね」と、いつもの元気な川嶋さんに戻っていた。

僕はやっと、普段の日常を取り戻したんだ。


45.次のステージへ

僕は、ある男に電話をしていた。
そう。
店長になった同期の長瀬だ。

電話で僕は「本当にありがとう。従業員を受け入れてくれて」

実は、秋本マネージャーから提案で、来期から長瀬の店舗に従業員を異動することになったのだ。

そんな僕の心境を察したのか、長瀬は、

「大丈夫だよ!しかし、大変だったな…」

少し暗い口調になる。

「いや、今回ばかりは本当にダメかと思ったよ……」

同期だからこそ、弱音が出てしまった。
そう説明すると、

「またご飯に行こうよ」と言って、電話を切った。

すると、そのタイミングで秋本マネージャーが現れた。

「ちょっといいか?」

何やら、僕に話があるらしい。
2人きりの事務所に座る。

秋本マネージャは、こう切り出した。
その言葉は、僕にとって予想にもしないものだった。

「実は、お願いがあるんだ。来期から、この店で店長をやってみないか?」

僕は驚いた。
本当に、本当に驚いた。

秋本マネージャーは続けた。

「今回の件もそうだが、実は俺は、君が店長に向いているのではないか?とずっと思っていたんだ。」

とんでもない。
その言葉が正しいであろう。
僕にはそんな素質がないと思っている。
ましてや、人の上に立つ器でもない。

さらに、僕の思いをよそに、秋本マネージャーはこんなことも話してくれた。

なんでも、毒島店長があまり仕事をしないこと。
そして、実は以前からパワハラ指導で問題になっていたことも話してくれた。

なので、店長は他店に異動になるみたいだ。

(まぁ、そうだろうなぁ…)
僕は、心の中でつぶやいた。

誰にも聞こえない声を発した後、秋本マネージャーはこう言ってくれた。

「それに、みんな君に店長をやってほしいって言ってるんだよ!」

僕は信じられなかった。
しかし、嬉しさを隠しきれるほど、僕は器用ではない。
みんなの顔が思い浮かぶ。

ここまで言われたら、迷う理由などない。

僕は覚悟を決めた。
「わかりました。来期から店長をやらせて頂きます」

そう言うと、僕は秋本マネージャーと固い握手を交わした。


46.成功するまで諦めないこと

それから、店長になるための引き継ぎや従業員への説明をした。

みんなに「おめでとう!店長!!」と言われ「まだ早いですよ」と返すのが、最近のお決まりだ。

最後の日、店長から「まぁおめでとう。大変だけど頑張れよ」と言ってくれた。

言いたい事はいろいろあったが、僕は「お世話になりました」そう言いながら、深々と頭を下げた。

僕は「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」の最初に見た記事を思い出していた。

あの時、仕事が嫌で嫌で仕方なかった。
朝起きるのが辛くてたまらなかった。

しかし、今はこの記事や素晴らしい従業員達、上司、同期、そして、お客様がいたからこそ、諦めずにここまで来れた。

仕事に締め切りを作るようになった。
スケジュール帳を付けるようになった。
身だしなみを整えて、相手の話に耳を傾けるようにもなった。
そして、本を読んで仕事で活用することも覚えた。

全部全部、みんなの支えに導かれた僕の軌跡だ。
本当にやめなくてよかった。

僕は今、この記事の意味をやっと理解した。

『僕は、仕事が好きだ!!』

そして、これからも諦めずに乗り越えていこうと誓ったのだった。

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