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心理的描写の作品

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日常の心理的描写をもとに書いた作品をまとめてみました。
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#散文

夕暮れが教えてくれた温もりと居場所

夕暮れが教えてくれた温もりと居場所

淡い夕陽がいつもの帰り道を照らし出した夕方のこと。
大好きなあの人が
少し後ろから走ってきて私に声をかける。
お昼の授業のこと。学校での噂のこと。
気になっている謎のAさんのこと。
それから毎日一緒に帰ることになる未来は
少し先だということを2人はまだ知らないでいる。

小さな頃から空を眺めること大好きだった私。
空を飛ぶ飛行機の行き先と空の向こう側に広がる景色を
いつか見てみたいと密かな憧れを抱

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夏を愛せるひとつの理由

夏を愛せるひとつの理由

天窓から入った
日差しの暑さに起こされた午前9時。
輝かしい日光の隙間から彩度の高い青さが
ほんの少し窓の枠内に広がっている。
外に出るのが億劫になるこの時期を
唯一愛せる理由がある。

深く、濃く、どこまでも果てのない
青いキャンバスに描かれた純白のお城。
暑さで歪む道路の境界線。
ボトルに滴る水滴が儚く落ちる光景。
死者を迎え供養するお盆。

眩しいほどの生命たちの輝きや彩度と
生前の思い出と

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作者A

作者A

まとわりつくように
全身に絡みつく熱さが私を呼んだ。

窓の隙間から微かに漏れる風の音
絶えず刻み続ける秒針。
私の意識が遠のいてる瞬間も
止むことのないものたちの鼓動が
静かに響いている。

カーテン越しに入り込む
午前2:00の月明かりが反射し淡く天井に触れていて
白く照らされた天井と私は
にらめっこをしている。
あと数時間で夜が明ける。

たまに呼ばれて目が覚めるこの瞬間は
決まっていつも過

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創作

創作

創作。
[新たに何かを創り出すこと。生み出すこと]
私は常に囲まれている。
私の知らない誰かの創作物に。
手に取るもの。
身に付けるもの。
食べるもの。
全てが誰かの創作によって生まれたもの。

数え切れないほどにある
創作物たちに込められた思いや背景を
私たちは知らずに生きている。
目に映るものたち全てが誰かによって
生み出され、名付けられたものであるのなら
テレビに映るあの人も
信号を待ってい

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ため息

ため息

ふう。と1つ、ため息をついた。
いつものように見る街並み。
いつものように歩く歩道。
いつものように青い空。

なにひとつと言っていいほどに
私の周りにあるそれらは
変わらずにそこにある。
ひとつ、またひとつと
私の心は重くなったり
軽くなったりを繰り返しているのに。

過去を思えば悔やむこと
未来を思えばほんの少しの希望と
目の前にある不安とが入り混じった景色が
常に私の中でぐるぐると回り続けて

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はじまりの言葉

はじまりの言葉

夏がはじまり迎えた7月。
眩しげな日差しと共に歩き出した。
雨が降る前の湿気を纏いながら
大都会のど真ん中へと進んでいく。

今この瞬間に見えたこと。
ずっと前から持ち続けている感情のこと。
誰かから受け取った気持ちのこと。
正解のないとても複雑で
それでいてはっきりとそこに在るものを
この手でしっかり握りしめながら
過ごしている。

いつからなんてわからない。
気づいたその瞬間から
無自覚に私の

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