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ひとつなるもの すべてなるもの

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ひみの連載ストーリー
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#感情

第221話 私も必ず、現れるから。

第221話 私も必ず、現れるから。

「Kさん。」

 ん……。なんだろう。
今、彼のエゴセルフから旧姓で呼ばれた気がする……。

「Kさん。」

 やっぱりだ。どうして旧姓がわかるんだろう。何でそんな場所へとアクセスしてきたんだろう。

 時空間を超えた彼の意識が、私のことを旧姓の苗字で呼んでいる。

……

 スサナル先生があきらの担任だった年。
彼のエゴセルフによると、その時の私の想いは最初からしっかり筒抜けだったらしい。先生か

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第215話 いつつとななつ

第215話 いつつとななつ

 プレアデスの私の心にわずかな光が差し込むと、反射光で目を細めた暗黒城の主は厄介そうに舌打ちをした。

「お前を信用してる訳じゃないからな。」

 孤独に飲まれた小さな男の子からは、私に対する不信感しか漂ってこない。暴れ出したい感情を本当は多く抱えているのに、それらを見せまいと腕組みをしている。
 いくつかと尋ねると、「七歳。」と返ってきた。ガスコンロと流しをすぐ背中に、長方形のダイニングテーブル

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第202話 亜空間デート

第202話 亜空間デート

 一体いつからだろう。
確か初めて連れていってもらったのは、まだここに引っ越してきたばかりの頃だったと思う。その時既にけーこに出会っていたかどうかも、今となってははっきりしない。

 あきらの幼稚園が半日でお迎えになると、帰宅するなり強い眠気に襲われて、どうしようもなくて昼寝をとった。

 高い壁に沿ってミカエルと共に上昇していくと、彼は必ず一番最後、私の両腰の部分を持って優しく“そこ”に座らせて

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第188話 恩人

第188話 恩人

 ミトが死んだ。肉体を離れて霊魂の世界に戻っていく。
 すると、そのことを察知した宇宙子さんがほんの一瞬だけミトの意識を自分の体内に入れ、それから目の前で気を失った。慌てた私は駆け寄って、宇宙子さんのことを抱きかかえる。

 戻って、意識!宇宙子さん戻ってきて!

 腕の中の宇宙子さんから、女性特有の柔らかい匂いがした……。

……

 目が覚めてから、何もかもリアルな酷い夢を見たと思った。
 確

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第177話 花束

第177話 花束

 リトの小さな心の中には、いつもこんな想いがあった。

「また、僕の知らないところで大人たちだけで勝手に決めて、お母さんは僕を捨てて行っちゃうんだ。みんな僕のことなんてどうだっていいんだ。」

 仕方がないことではあったけど、当時の父も母も、まだ幼く戦争を理解していないリトを蚊帳の外に置くしかなかった。
 だけどそれはリトにとっては、“自分ばかりが除け者にされて、大人たちが結託してよからぬ相談をし

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第175話 迷路

第175話 迷路

 もうこれ以上、けーことは深く関わらないようにしようと決めたばかりだったけど、深夜再びタケくんの意識がやってきたことで堪らず彼女に抗議のLINEを送りつけた。

「昨日の夜中、スサナル先生の意識に繋がろうとするたびに、タケくんが割って入るように飛んできた。
 “タケ。タケ。”って自分の名前のアピールを続けるから少し浄化しようとしたんだけど、そうすると今度はけーこの意識が私とタケくんを見にやってくる

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第174話 順風満帆・逆風満帆

第174話 順風満帆・逆風満帆

 春分のすぐ後、あきらの高校は春休みを迎えた。
朝夕の送り迎えから解放されるとその分集中して内観をすることができるのだが、それに伴ってもう一つ、厄介ごとがくっついているのがわかってしまった。

 あの日以来、タケくんのビジョンがしょっちゅう頻繁に現れる。あろうことかなんと、けーこのツインレイに憑依されてしまっていた。
 ヤマタ先生にしても今までクリアにしてきた他の男性たちにしても、気持ちをわかって

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第160話 隣り合わせのマトリックス

第160話 隣り合わせのマトリックス

「ねぇけーこ、アンカー外すってどうすればいい?」

「いや今回は、建物の中に入っちゃえばそれでいいと思うよ。
それより行きたくねぇー。さっきからアウェー感が半端ねぇ。本っ当ひみはルンルンしてるよね。」

 高次元と自分たちとのやり取りの正誤は、向き合っていれば肌感覚として自ずと掴めるようになってくる。けーこがアウェー感を感じ、尚且つ私の足取りが軽い時。それは間違いなく“正解”していることを表してい

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第155話 性のブロック

第155話 性のブロック

 年が明けて間もなく、再びかよちゃんの夢を見た。
起きてから、胸の辺りにムカムカとした吐き気のような感覚と、下腹部の冷んやりとした感覚とを覚え、それらが“真実の探り時”が来ていることを伝えていた。

 今まで散々頑張って内観してきた性のことだから、ようやく浮上してきたとはいえ、ここで今日視てしまっていいものなのかと少し躊躇い(ためらい)が無くもなかった。
 グッと意識を集中させてみるもそんな私の迷

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第149話 太陽の剣

第149話 太陽の剣

 空が明るく白み始めてきたその日の早朝。ほんの少しだけ意識が目を覚ましてしまい、気がつくと夢と現(うつつ)の狭間にいた。明晰夢のような状態で視界をぐるっと見回してスサナル先生を探してみると、すぐに見つけることができた。

 思い切って闇に触れる。
体を丸めている彼の元へと飛んでいき背中にそっと手を添えると、その途端に現実で寝ている肉体がベッドの上でのけぞった。私に対する激しい拒絶。奥から奥から止め

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第141話 ウニヒピリ

第141話 ウニヒピリ

 私が神奈川に引っ越してきたのは、こっちで仕事を始めた旦那との結婚がきっかけだった。ここが旦那の出身地だったからではなく、そもそも私たちは同郷だった。
 妊娠、出産、子育てなどで、まったく知らない土地だったのにもかかわらず、徐々にたくさんの友人たちに恵まれていった。

 それが今、スサナル先生との統合を目指す道程であらゆる人間関係を切らされてしまい、どういう訳だか気づいたら、私のLINEにはあきら

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第140話 鏡に映った自縄自縛

第140話 鏡に映った自縄自縛

(かがみにうつったじじょうじばく)

「……でね、『嫉妬ちゃん』のガムテープが剥がれたんだけど、そしたら本当はその下には、牙が生えてたんだよね。」

「おおマジか。……でもなんか牙っての、それわかる気がする。」

 ここのところ、私が一体何を視て何を浄化しているかを逐一あきらに報告することが、なんとなく日課になっていた。この子に話を聞いてもらえることで保っている部分もあった。
 スサナル先生に長い

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第139話 何度も何度も、何度も何度も

第139話 何度も何度も、何度も何度も

 一晩泣きながら眠ったことで、今まで表面にあった分の嫉妬がかなり軽くなっていた。
 ウエサク以降、身体はいつも不思議なエネルギーの動きを感知し続けているけど、この日はいつにも増して、背骨や喉の中を清涼感のある気がスースー頭頂に向かって流れていて、“循環”の状態がいいことがわかった。
 そうして朝、久しぶりに少しだけ意識がすっきりすると、その日は今までにない自分に出会えた。

 ……これは、昨日の発

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第138話 自分を葬るということ

第138話 自分を葬るということ

 様々な感情体が私の表面へと浮かびあがり、その都度その子たちを見つめていった。
 どの子も赤黒かったり怪我をしていたり、それからガリガリに痩せていたりした。
『淋しい』も『烈火』もまだ繰り返し奥から湧いて、時間がいくらあっても足りない手一杯の状況の中で、いよいよ出てきた『嫉妬』のことをとうとう無視し続けられなくなっていた。

 スサナル先生に出会うまで、自分は嫉妬とは無縁だと、なぜだか本気で思って

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