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小さな話28 真夜中コーヒー
“ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時”
コーヒーのためのポットが沸騰を知らせてコポコポと話しかけてくる。
大好きなバンドの一節が心に刺さりまくる日もあっていいよね、と毎日言い聞かせながら過ごす都会の冬は気持ち悪いほどに暖かい。
白いライトが苦手なので手元を写すのは、壁に貼り付けたテープライトとモニターの明かりだけ。
首にかけたヘッドホンが流れるn周目の日常アニメの音を聞き流しながら、久しぶり
白骨化スマホ【毎週ショートショート】
「森の中で自殺した人のスマホてどうなるのかな。」
「え?」
物騒なことを言わないで欲しい。特に高校という公共の場かつ今は昼食の時間である。
「人は白骨化して見つかるけど、スマホはどうなるのかな。」
「さあ、普通に錆びるんじゃない。」
「ほらさっき理科で微生物が何たらて習ったじゃん。」
「あれは分解可能なプラスチックの話。スマホは無理だよ。」
「うーん、そっか。」
リップの落ちた唇でリプトンミルクテ
大増殖天使のキス [毎週ショートショートnote]
小さい頃、宗派もわからない教会に通っていたことがある。母は熱心な信教者だ。都会で生まれ育ったプライドの高い母が父と結婚し、仕事の都合で田舎のコミュニティに放り込まれた瞬間に彼女は救いを欲するようになった。そうでもしないと母は壊れていたのだと、彼女は私に言い聞かせた。
「幸せになれる瞬間は誰にでもあるのだけど、それを教えてくれるのは神様だけなのよ。」
”見えない誰か”について嬉々として語る彼女を父は
小さな話26 冷え性
『裏垢女子始めm』
ここまで打ってから、画面の上部に着信を知らせる通知が届いた。ふたつ下の後輩。パーマをかけてから、アイドルの誰かに似てると噂され始めた可愛い顔の子。
「はい。」
「あ、先輩すみません。今大丈夫ですか?」
「うん。どうしたの?」
「今からマヒロとクニさんとラーメン行くんですけど、先輩も行かないかなあて。」
「どこのラーメン?」
マニキュアを塗り替えたばかりの爪が机の裸電球の光を
小さな話20 「推し」
忙しく、殺伐とした現代を生き抜くために多くの人は、「推し」を持つようになっている。「推し」とは、要するに「好きな人」の総称である。
「推し事」「推し活」などと、推しを中心とする生活をするのも当たり前になりつつある。私も例に漏れず推し活をしている。
私が恋してしまったのは、画面の中の三次元の配信者だ。三次元で生きているはずなのに、会えない距離感は、二次元の存在と変わらない。だが、いつか会えるかも
小さな話19 高嶺の花には棘があって
私は、一般的に言う美少女だ。
私が学校で歩けば、そこらへんの男子生徒は釘付けになる。女子からは羨望と嫉妬の眼差しを向けられる。教師からは好かれる。特に男性教諭は特別扱いをしてくれる。
私が街を歩けば、デートしているカップルの男性は私を二度見してしまい彼女に怒られている。男性店員は、サービスをしてくれる。アパレルショップの店員は次々におすすめの商品を持ち出してくる。
私は、美少女だから。
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