小さな話29 御伽話
小さい頃大好きな絵本があった。
男の子がお母さんと喧嘩して家を出た先で、同じくお母さんと喧嘩した竜と仲良くなるところから始まる冒険譚。
あの頃は竜はきっとどこかにいると信じて、空の雲を見て妄想をしてたもんだった。車に乗っているときに雲を見ながら小さなお話を考えるのが好きだった。もし竜がいたら、もし妖精がいたら、もし勇者がいたら、もし自分が誰かのお伽話の主人公だったら。
もちろんファンタジーな日常なんて私には待っていなくて、そのまま大きくなって高層ビルの並ぶ街を死んだ目をして歩