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よりぬきしりんさん

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#スキしてみて

川

たいそう前のことだ。

思い立って、ぼくがその河川敷に腰を掛けたとき、ぼくはビールの罐を片手に、このままあなたとこの川に消えてしまいたい、と激しく願っていた。

夜は更けて、昏かったはずが、川はその時まばゆく光っていた。

不意で、思いも寄らない情動であった。
その川も、あなたも、ひょっとしたらぼく自身も、今やぼくから遠くに去ってしまい、その shot は今もしばしばぼくの夢に現れ、そのたびにぼく

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ステラを想う

ステラを想う

ベッドの向かいには、偶然『ステラおばさんのクッキー』の紙袋がある。
日がな眠いし日がな頭痛いし、今日も今日とて特に書きたい題材もないので、ここはいっちょ、彼女をやらしい目で眺めながら、つらつらと下らない思索でも思うてみよう。

*

ステラおばさんは、クッキーを焼きすぎてあのような見た目なのだろうか。それとも、あの容姿が彼女をして、狂ったようにクッキーを焼かせたのだろうか。
クッキーが話題になるお

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あっちこっち

あっちこっち

たとえば、航空写真を撮ったあとには、ポートレイトを撮りたくなる。
心ゆくまで電子顕微鏡で細胞組織を見たら、次には満天の星空など眺めていたい。

自伝を読んだら、そのひとが生きたころの地域、国、世界、もろもろについて知りたい。
ある出来事を概説的、包括的に学べば、その渦中にあった誰かしらの日記や書簡、そんなものを無性に読みたい。

うどんがつづけば、鶏モモ焼きが食いたくなる。おせちもいいけど、カレー

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試合は最後まで、そして――Entangled Towatd the End, And Afterwards

試合は最後まで、そして――Entangled Towatd the End, And Afterwards

【注: 長文です。4000字以上です。何か妙に面白いとは思いますが、長文でごめんなさい。】

AbemaTV のおかげで、サッカーとはかくも面白い競技だったのか、と、私しりんは目下ハマっております。
蹴り合う対手がいてこそのサッカーですが、極力対手に蹴らせたくないのもまたサッカーなのですね。

それに比例して、私しりんは、書くという競技がこんなに奥深く、趣味に溢れたものだと、今更ながら感動していま

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優しい彼女

優しい彼女

セブン=イレブンの深夜シフトのそのひとに、元から興味がなかったと言えば嘘だ。

週に2日か3日、22時から入っているひと。やや控えめな茶髪のボブ。痩せて小柄な彼女は、いつもにこやかだ。
多忙な棚卸しの最中でも、きっと振り向いて微笑んでくれる。セルフレジに変わった後も、レシートを手渡ししてくれる。
ちょっとだけ動きはスローだが、深夜なのでこちらも急いではなく、そのちょっとしたぎこちなさに、私はかえっ

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ひとつの切りくち

ひとつの切りくち

バスタブがある。
栓を抜いて、水を止める。
溜まっていた水は音を立てて落ちる。水位が下がり、やがて空っぽになる。

人との繋がりは、このような形で失われてゆく。

*

問題は、事実ではない。事実と自意識の乖離、その差である。

かつて繋がっていた人が、周りから減ってゆく。これは事実だ。

できるなら、「なるほど、人が減ったのだな」と泰然自若それを受け入れ、人格の要素のなかに取り込みたいわけだ。

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わかれみち

わかれみち

リアリティあふれる夢を見た。

まるでこっち側が現実、みたいな言い方だけど。あっち側が現実なんじゃないかと、この時間(朝の10時過ぎだ)になっても訝しく、いちいちわざとらしくキーボードの手触りを確認しながら書いている。

起き抜けにコーヒー2杯とアリナミンVを飲んで、それでも目が覚めきれない。
こっち側に覚めているが、しばらくすればあっち側に覚めるんだろう。コーヒーもアリナミンも、こんどはあっち側

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さあ、プレスを掻い潜って

さあ、プレスを掻い潜って

先日、ある若い癌患者の不平を扱うニュースを読んだ。彼がサバイブしたとたん、彼の動画チャンネルの視聴者数が急減したそうだ。
これを読んで、短時間にわたしの両チームを巡った複数の印象を、つらつら書き起こしてみたい。
なお、これは彼の事情や言動に関する文章ではない、それは単なる思考の引き金だ。
どれも、わたしの内心のあったかくていい気な俗情(以下 チームA)に対して、チームBが《プレスをかける》物言いに

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Is That a Nightmare?

Is That a Nightmare?

地域や性別や引きの善し悪しにもよるだろうが、ぼくら(コギャル世代)の時代、なべて暴力的であった。
いや、『的』など生ぬるいぜ。暴力そのものであった。

多くの親は怒鳴り、頭を叩き、かなりの圧で駄目出しをしていた。教師は教師で、ひどい贔屓が当然で、それにそぐわなければ怒鳴られ、ビンタされ、ケツを蹴られ、人格否定の暴言を受けていた(ガキながら、これが日教組すなわち共産党の本性だと日々唾棄する思いだった

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フラペチーノ、マシマシ、ホット、ストレート、ゼロカロリーで

フラペチーノ、マシマシ、ホット、ストレート、ゼロカロリーで

欲望とは本来アモルファス(不定形)で底なしなので、ひらがなカタカナの読み書きと足し算をマスターしてもなお、人はプリキュアと建築士とパン屋さんとピアニストになり余裕があれば病院の先生になって父を治したいという情熱を、矛盾なく抱くことができる。Brilliant!

欲望を『ひとつの目標っ!』や『めざせ志望校っ!』という年季の入った型にはめるていのやり方は、人の成長や成熟の過程とは本来無関係だ。
むし

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存在証明

存在証明

冬の風われに魔物が棲む日あり

風情も余韻もありません。読んでそのままです。この魔物が時に私を食い殺すきっかけは明白で、それは
絶対孤独(のようなもの)
です。
なんと呼べばいいか、
あなたはあの悪夢のおぞましさに、何と名前をつけますか?

高校のときからなにかとお世話になっている
Green Day

この詩を解したときの、一種抉られた心境は忘れられない。
この頃の私は、もろもろありながら、

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めがさめて

めがさめて

めがさめて
ゆきのあかりで
めはさめて
まどをあければ
しろいまち
のどのかわきに
みづをのみ
はらもすいたが
けんしんの
あさなりたれば
ものくはず
けんしんなれば
ものくへず
きさんじせんと
そとにいで
くるまにつんだ
ゆきをかき
かたにつもつた
ゆきはらひ
しろいつしきの
まちをながめ
いまおとづれる
ふゆをおもひ
まうすぎさりし
ふゆもおもひ
「ばりうむ」をおもひ
にがわらひ
おもふあ

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親のしごと

親のしごと

さいきん出不精の娘を、半ば無理やりに膝頭運動公園に連れていった。
膝歩き、膝走り、膝自転車、膝スキー、膝バレーを堪能したぼくたちは、膝まづいてお弁当を食べた。お昼からは、特設イベント『楽しもう!殿中でござる』にも参加することができて、娘はたいそうご満悦だ。
進路に悩む彼女も、しっかり膝を使えたことで「旗本以上になる」という目標が見えてきたようだ。励みにと、帰りに『絶対突破 昌平黌』を買い与えた。膝

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告白

告白

えと、さ。
アタシもね、あなたが好き。
クールで素っ気ないとこが。話しかけても、ツンとしてるとこが。

だからさ、付き合っても構わないで。目も見ないで。知らない人のフリして。とにかく近づかないで。どっか行って。この世界から消えて。来世も、来来世も、縁なくすれちがいたいの。

よろしくね。