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車椅子で役者をやるもの。

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車椅子ユーザーになって芝居復帰に至るまでの話し。
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2020年5月の記事一覧

車椅子で役者をやるもの。(seen13 緊張と緩和)

車椅子で役者をやるもの。(seen13 緊張と緩和)

勢いというものは凄いもの。

先日のインプロ(即興劇)のワークショップを受けてから翌月には新たな団体のワークがあると連絡を受け前回と同様、車椅子でも参加可能か確認をして頂き、問題ないとの連絡を受け参加する事になった。今回のワークショップは「初心者コース」と「経験者コース」の2コース。

ここでふと考える。

前回のワークで「車椅子でもやれるんじゃね?」と思ったのは確かだ。だが、芝居の経験と言われる

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車椅子で役者をやるもの。(seen12 不安と緊張)

車椅子で役者をやるもの。(seen12 不安と緊張)

事業所運営もいよいよ忙しくなってきたりラジオの収録放送も絶好調な時期。ラジオは俺に沢山の友人や縁を与えてくれた。しかし一番の収穫は「自分で放送内容を決め発信する」事が出来た事。これは演劇演出舞台構成に似ていた。「何をしよう。どうすればリスナーに楽しんでもらえるか?どんなコーナーを組み込もうか」など無限大な楽しさ。本番をやってまた次の企画を考える。まさに30分間の舞台。ゲストは共演者。自分を出してる

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車椅子で役者をやるもの。(seen11 ラジオと記事)

車椅子で役者をやるもの。(seen11 ラジオと記事)

「役者 宮地大介」の芝居は俺の目を醒させた。

「芝居がしたい」

車椅子になってから初めて出た感情。車椅子でやれるのか?とか関係ない。兎に角やりたい。ただそれだけだった。そんな感情を持ち始めた時にまたはせなかさんからお誘いがあった。演劇やりたい欲求が高まってる時に観たのは初めて「インプロ(即興)芝居」だった。客席からお題をもらって即興で繋いでいきストーリーをその場で完結させた。天才かよと思った。

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車椅子で役者をやるもの。(seen10嫉妬と決意)

車椅子で役者をやるもの。(seen10嫉妬と決意)

ようやくまた繋がり始めた芝居の世界。廻り始めた歯車はすぐにまた次の歯車へと繋がる。

友人があるインターネットラジオに出演するから聴いて欲しいとの連絡があった。

「インターネットラジオ?」

それはラジオ周波数から流れるものではなくインターネットを介して放送するラジオの事だった。聴いた直後、あまりに素人然としたDJにもしかしたらこれって誰でも出来るのか?とすぐにその局に問合せをした。すぐに返信が

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車椅子で役者をやるもの。(seen9新しい出会い)

車椅子で役者をやるもの。(seen9新しい出会い)

それから、前職の法人を1年足らずで退職。事業所開所と慌ただしい日々が始まった。事業所を2年で黒字化をすると断言してしまっていたので必死に利用者様獲得に各福祉関係との顔つなぎにと動いた。人工肛門閉鎖の後遺症は思ったよりなく前職を退職したのを何度か後悔したが動き出したものは止められない。退職後、自分の色々な噂が耳に入ってきたりその状況を知人が心配してくれたりもあったが態度で表すしか出来なかった。成功さ

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車椅子で役者をやるもの。(seen8 親友との再会)

車椅子で役者をやるもの。(seen8 親友との再会)

入院をする前、障害者職業相談員という仕事もしていた。懇意にしていた障害者職業支援センターの所長からある会社の社長を紹介された。相談内容を聞き「障害福祉サービス事業」をする事を勧めていたが設立が頓挫しているのを知っていた俺は退院後、その社長へ現在の状態を話し事業所設立打診を改めて行った。回答は「すぐにでも」。設立後、サービス管理責任者として雇用したいとの項も合わせて打診された。開所後、障害の後遺症の

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車椅子で役者をやるもの。(seen7 また試練)

車椅子で役者をやるもの。(seen7 また試練)

「人工肛門」。まさかこんな大事になるとは想像もしてなかった。腹痛の酷い版くらいにしか考えてなかった。後で医師から「後30分来るのが遅れてたら死んでましたよ」と伝えられた。これで死に直面したのは2回目。なんなんだよ俺は。考えようではそれでも死ななかったのだから良かったのか。兎に角、死ななかったのだ。

少し落ち着いてからはその不思議な「肛門」との付き合い方に向き合った。これに関しては不思議と不快感は

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車椅子で役者をやるもの。(seen6 命拾い)

車椅子で役者をやるもの。(seen6 命拾い)

仕事はすこぶる順調だった。まさに公私共に順調。元々話しをするのが好きな自分にはこの「営業」的な仕事は天職なんだろうと思うくらい順調だった。

そんな転職してから1年目の春。いきなり腹に刺すような痛み。その痛みは時間を追う毎に酷くなり金曜から痛み出したそれは土曜には車椅子からトイレに移動、ベッドに移動の際、信じられないくらいの痛みに変わっていた。そしてその夜、就寝につこうと車椅子からベッドに腰を降ろ

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車椅子で役者をやるもの。(seen5自由と挨拶)

車椅子で役者をやるもの。(seen5自由と挨拶)

新しい職場は沢山の仕事と沢山の自由、沢山の知り合いを俺にくれた。毎日が刺激的で本当にやる気に満ち溢れてた。その新しい知り合いの中には演劇関係の方も含まれた。その方々と話す世界は本当に楽しく僕をワクワクさせた。

少し時間は戻るがこの2年前にフェイスブックで10代から一緒に芝居をやっていた何名かと繋がっていた。20年以上会ってなかった仲間達。時折りテレビや映画出演の知らせ、舞台公演の案内は届いたが羨

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車椅子で役者をやるもの。(seen4 期待しない)

車椅子で役者をやるもの。(seen4 期待しない)

新しい職場。そこは前職とは全く異なる福祉業界。そこで事業推進部というポジションを用意してくれた。仕事内容は法人広報、事業開拓などの営業のような内容だった。その為、沢山の職種の方々と知り合い交流を持つようになった。その際、話題になるのは昔何をやってたかの話し。直近の仕事は元より、障害を持つ前の話しにもなる。決して嫌な訳ではない。ただの昔話。今の自分には関係のない世界の話し。仕事にも十分満足している。

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車椅子で役者をやるもの。(seen3 動く)

車椅子で役者をやるもの。(seen3 動く)

復職してからは会社でのポジションが変わった。腫物のような対応。しかし、もうあまり会社に未練もなかったし休職中で自分を見つめ直す時間を取れたので逆に清々しかった。人と比べて「上へ上へ」の気持ちもなかった。無理も以前よりしなくなった。しかし気づけば1年後。また管理職候補の話になりストレスと向き合う事に。恐らく会社にいる限りこの繰り返しになるのだろう。そして自分を騙し騙し会社にしがみついてまた自分を抑え

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車椅子で役者をやるもの。(seen1 無くなった)

車椅子で役者をやるもの。(seen1 無くなった)

なかった。自分の中で「車椅子で役者をやる」という選択肢は20年前に捨てた。

29歳の時に脊髄炎を発症した。足が動かなくなり手が動かなくなり記憶が出来なくなり食事も自力で出来なくなりそのまま死ぬ筈だった。奇跡的に回復したものの足だけは回復しなかった。待っててもらっていた市の演劇セミナーも辞退し、声を掛けて頂いていた芝居も辞退。学生に芝居を教えていた団体も解散。周りからは「車椅子でもやれるんじゃない

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