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車椅子で役者をやるもの。(seen6 命拾い)

仕事はすこぶる順調だった。まさに公私共に順調。元々話しをするのが好きな自分にはこの「営業」的な仕事は天職なんだろうと思うくらい順調だった。

そんな転職してから1年目の春。いきなり腹に刺すような痛み。その痛みは時間を追う毎に酷くなり金曜から痛み出したそれは土曜には車椅子からトイレに移動、ベッドに移動の際、信じられないくらいの痛みに変わっていた。そしてその夜、就寝につこうと車椅子からベッドに腰を降ろした瞬間、人生で感じた事のない痛みとなって俺を襲った。息が出来ない。本当に出来ない。息が吸えないくらいの痛み。

「あ、死ぬな」

はっきりはしないが意識をなくしかけたので恐らく2分くらい息をしてなかったと記憶してる。車椅子になった時は徐々に身体が蝕まれていったので正直痛みはなかった。今回の腹への激痛は人生で今まで感じた事の痛みだった。ようやく息が出来、暫く動けなかった体を起こして日曜に診療を行なっている病院を探した。一軒近くに日曜診を行ってる病院を見つけ翌朝、激痛を必死で堪えながら車を運転して病院へ向かった。ただ到着した頃には自力で車椅子を降す力が残っておらず駐車場から病院に電話をかけ看護師4名に手伝ってもらい診察に向かった。診察をするやいなや医師から「ウチで処置出来るレベルのものではない。今すぐ救急車呼びます」と告げられた。俺はなんて大袈裟なと思い「自宅にウサギがおり餌もやってないしとりあえず一旦ウチに戻りたい」と伝えた。医師からは「ここで救急車を呼ばないで帰られた場合、ウチでは責任は取れない。それでも帰るというならばウチが出来るのは貴方を車まで乗せてあげるまでだ」と催告された。俺は承諾し車まで運んでもらい自宅へ帰宅。1時間くらいかけて車から降り部屋へ戻りウサギのエサやりと小屋掃除をした。痛みは凄いものの昨日から何も食ってなく鍋焼きうどんを作った。一口入れた瞬間、また昨日レベルの激痛。急いで救急車を呼んだ。運ばれ病院につくやいなや、緊急手術を告げられた。命に関わる手術になるかもしれないからすぐに親族に来てもらってくれと言われ手術台から妹に電話。すぐに行くと言われたが到着まて手術は待てないとの事で自分自身で激痛の中書類の中身を確認する事なくサイン。今までされた事のないくらい強い麻酔をかけられ意識を失った。

目覚めたらベッドにいた。両親と妹がいた。6時間半の手術だったそうだ。そして自分の身体を見て暫く呆然とした。鼻から管に両腕に点滴。両脇腹には4本の管刺さっておりペニスには導尿の管。左脇腹には見た事のないものがあった。袋にカバーされたそれは梅干しのように見えた。あ、そうか。麻酔された時に微かに言われ事が蘇った。

「もしかした人工肛門をつける事になるかもしれません」

そっか。人工肛門つけられたんだ俺。


車椅子の役者、演出家として活動していく事で観る側だけでなく演る側のバリアも崩していきたい。活動にご支援の程宜しくお願い致します‼️