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映画評詩

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見た映画を、詩のスタイルで評してみます。映画情報サイト「映画.com」にてはトコマトマト(https://eiga.com/user/24075/)のハンドルネームでレビューをぽ… もっと読む
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記事一覧

【映画批評詩】「あの世の人びと」

【映画批評詩】「あの世の人びと」

男は
ゲイ(gay)よりクィア(queer)と言ってほしいという
ああ 彼らには彼らの事情があり
この世で その感情を抑え
マイノリティとして生きる
その苦悩があるのだろう
今は その世界への社会的関心や理解もあり
同性を愛する人たちが 一定数いることを
多くの人は承知…している
昔よりはずっと 生き易い世になった
そう 映るのだが――

映画の主人公は監督を投影したもので
彼自身が抱え続けたきた

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【映画評詩】「来年は80年」

【映画評詩】「来年は80年」

広島と長崎に落とされた原子爆弾
その生みの親である物理学者オッペンハイマーはどういう男だったのか

直接的に原爆の効果=被害は描かず
原爆が戦争を終わらせたという
米国人の圧倒的多数の心情を否定しない映画
そう受け取る向きもあるでしょう
しかし
監督の考えはそうではないのは明らかです

実験成功後
ちびとでぶを載せた2台のトラックが研究所を出て行きます

その父であるオッペンハイマーは あいまいな

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【映画評詩】「ぼくの気持ち」

【映画評詩】「ぼくの気持ち」

父と母
子にすれば 親同士がいがみ合い 争う
そこかしこに ある風景

親たちは「愛」し合って ぼくが生まれた――
そうではなかったのか

父とぼく ぼくと父
母とぼく ぼくと母

小さなぼくは思った
お父さん お母さん
けんかしないでおくれ

親たちは 心が離れたもの同士
それでも 同居し生活を続ける

妻には人生が開け
夫には先が見えない
二人でひとつだったのは昔の話
今は恨み合う

子は事故

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【映画評詩】「日本はまだまだなのです」

【映画評詩】「日本はまだまだなのです」

人は モノ
欠けたモノを埋めようと
哀れな自分を繕う

自死した女が
自分が宿した胎児の脳を移植され
違う人生を歩む物語
女を蘇らせたのはマッドサイエンティスト
そのもとで
幼児から大人の女へと変身する――

ファンタジー ゴシックの世界をベースに
奇妙なストーリーは進む

それはそれでよい

ヒロインを演じる米女優
エマ・ストーン Age35
その演技に驚く

裸は無論
ファックシーンもあけっぴ

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【映画評詩】「痛快無比 無双の強さ」

【映画評詩】「痛快無比 無双の強さ」

これは 力道山じゃないか――
現代の韓国に
力道山が刑事になって 蘇った

マ・ドンソク52歳 3月1日で53歳
韓国系アメリカ人の俳優

悪い奴を徹底的にたたきのめす
それも 素手で だ

アメリカとは違い 韓国も
すぐに拳銃なんか取り出さない
相手-暴漢-はナイフや日本刀 手にするのは刃物だ
それを かわし
マ・ドンソクは殴る
マ・ドンソクは投げる
マ・ドンソクはたたきつぶす

実に痛快 見て

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【映画評詩】「ママがやさしいとは限らない」

【映画評詩】「ママがやさしいとは限らない」

坊はずっと探していた
やさしい 甘いママ
自分を 百パーセント受け入れてくれる女性

おかあさんと坊
ずっとずっと甘い夢をみていたいのに
この世は 現実は
冷たく厳しいのだ

坊は年をとり 母も年をとり
大人になった坊は
母に背を向けたことに後悔する

あとは夢の中で遊ぶだけ
ベッドに入り
夢の中を漂う
そこだけは百パーセント
坊の ぼくの心は自由なのだ

年をとったぼくは
小さな
あなたに手を引

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【映画評詩】「生きるための選択」

【映画評詩】「生きるための選択」

すがりつく奴らは追い払え
生きるために
持っている奴らから奪うのだ
生きるために
争いには勝て 手段を選ばず
生きるために

生きるためなら
普通の人だって 何でもやる
人殺しもいとわない

大災害の後
無力になった人びとはどう生きるのか
生々しく描かれたその姿を 見た

キラー・スマイルで鳴らした
国際的俳優イ・ビョンホン
ニヤつくこともなく
黒いものを抱えた男を演じる

予想外の事態が起きたと

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【映画評詩】「そこには僕も…」

【映画評詩】「そこには僕も…」

平山という男が自転車をこぎ 橋をわたる
平山という男が古い狭い地下街で一杯やる
平山という男がコインランドリーを使う

ああ そこも ここも
僕の生活圏なんですよ

ヴェンダースの「PERFECT DAYS」は
僕の日常生活の中にある景色を映す

泣けた 泣けた 泣けた
僕は映画を見て 涙を流した

僕にも
あなたにも
今ここにあり
今生きていること
今だけじゃない
過去に生きたこと
過去にそこに

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【映画評詩】「琵琶湖は海よ 琵琶湖は海よ」

【映画評詩】「琵琶湖は海よ 琵琶湖は海よ」

はっきり言う
神奈川 埼玉 千葉――
そこに生まれ 代々その地で生きてきた人びと
それらを除けば
みな 東京で暮らせないのである
それら県に住んでいるのは
東京に住めないからなのだ

働く場が東京にありながら
なぜ地獄の通勤通学をする?

東京に住めない者ども
右代表である
埼玉県民たち――埼玉都民だと!?

「お前らは草でも食っていろ!」

そう言い放つ映画だ

前作の破天荒 弾けっぷりを踏襲

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【映画評詩】「世界のキタノ」

【映画評詩】「世界のキタノ」

原作・脚本・監督・編集…そして主演
北野武…監督作品として世に出るのは6年ぶりとなる
公開中の映画「首」

首 首 首 
切り取られ 胴体だけの武士の死体 死体
血の海に浮かぶ…

グロテスクなシーンが多い

たけし演じる秀吉は
大局観を持ち 自分の時代を待つ
その間
狂気にかられる主君・信長への憎悪を募らす

権謀術数 天下取りに蠢く者どもを
たけしは演者として
監督として濃厚に描いていく

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【映画評詩】「生きづらさの向こう」

【映画評詩】「生きづらさの向こう」

他人の生きづらさを見て
共感
自分と同じ いや もっと大変な人もいる
そう思って気持ちを軽くするか

心と体の痛み 空虚
受容されない つらさ

家庭も会社も学校も 牢獄で
逃げだしたいのに
それができないつらさ

頭の中だけは自由
心だけは時空を超えて
羽ばたいてゆけ

過去と現在が交錯
小学生から大人まで
牢獄にいる人たちの人間模様

それをスクリーンは伝える

監督は 岸善幸
この人の作品を

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【映画評詩】「戦争」

【映画評詩】「戦争」

戦争だ また戦争だ
もう一度 戦わないといけない

1947年 昭和22年
壊滅状態からようやく復興に向かう
東京
そこに
ゴジラという戦争が起きる

前の戦争で
多くの人びとが死に
もっと多くの人びとが生き残った

なぜ自分だけが
生き残ったのだ――
なぜ自分の元に
あの人は生きて帰ってくれぬのか――

喪失を埋められず
声をあげられぬ
数知れない人びと

スクリーンに映る
その一つひとつの顔に

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【映画評詩】「悪所」

【映画評詩】「悪所」

じぇじぇっ!

これはすごい映画なのか
これは面白い映画なのか

大金を掠め取れって クライムサスペンス

大阪弁の大洪水の中
大阪のアンダーグランドな世界に
おらは 酔いそうだ

まあ面白い 悪い映画じゃねぇ
作品としては認めてやりてぇが
2時間20分を超えるっていうのは
長尺に過ぎるんだ

特殊詐欺…オレオレ詐欺な
おらおら詐欺じゃねぇぞ
夏ばっぱ 気ぃつけろっ

大阪の濃いぃ~世界は
とーほ

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「ナミダ」

「ナミダ」

昭和20年3月生まれ
御年78歳の小百合ちゃんは団塊世代の
ちょいお姉さん
日本の戦後映画界で 60年以上主演してきた
今回それが123本目という
芝居がうまい? まさか!
永遠の大根役者 永遠のアイドル女優

映画の舞台は ぼくが住む下町
ご当地映画という理由で映画館へ足を運ぶ
日曜の午後 客層はかなり年齢の高い人たち
階段を上がるのも やっとこさっとこ

物語はいつもの山田作品 ほのぼのとした

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