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映画評詩

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見た映画を、詩のスタイルで評してみます。映画情報サイト「映画.com」にてはトコマトマト(https://eiga.com/user/24075/)のハンドルネームでレビューをぽ…
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【映画評詩】「箱の中」

【映画評詩】「箱の中」

小さな箱
ダンボールの箱
その中ですべてこと足りる
そんなものが
ぼくと
外の世界を隔絶しぼくはそこに安寧の世界を
築くのだ

ぼくはそこからは出ない
ぼくは外から侵されない

その狭いせまい空間が
ぼくを守り
ぼくを生かしてくれるなら
その箱は最高の世界だ

見まわしてごらんよ
そんな箱の中で生きている「人」が
ぼく あなた
彼 彼女 それ以外の人たち
案外にたくさん
箱の中で生きてるんだ
きっ

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【映画評詩】「宇宙に行きたい」

【映画評詩】「宇宙に行きたい」

宇宙に飛び立つ
宇宙に飛び立て

誰もできないことである
いや
既に各国には宇宙飛行士がおり
過去何十年に何百 スペアも含めればその何倍もの
宇宙飛行士は存在しているのだが

普通の人にはできないこと
まだまだ できないこと

夢物語を描くのが映画
これは 55年前の夏にあった
人類初の月面着陸の「舞台裏」を描いた
ラブロマンス まったくのフィクションである

期待に胸膨らませ映画館に足を向けた

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【映画評詩】「前へ前へ」

【映画評詩】「前へ前へ」

1秒 コンマ1秒
前へ 前へ
クルマとレーサーは 先を急ぐ

爆音 疾走するレーシングカー

それは地上をゆく飛行機のよう

暴走ではない
行程 コースに沿い
死と隣り合わせの中
クルマは猛スピードで駆ける

一瞬 ほんの一瞬
予期せぬことが起き
クルマは宙を舞う
地面に叩きつけられ 砕け散る

レーサーは
体半分チギレても
前へ コンマ1秒先へ行こうとしていた―

その下には 多量の血が流れた

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【映画評詩】「人だもの涙くらい」

【映画評詩】「人だもの涙くらい」

命を守る 助けてやる
そう絶叫したところで

大きな力
定められた運命には逆らえない

多くの人はあきらめる
現実を受容する

だがしかし
それに抗う人がいる

手を差し出し
本気で助けようとする人がいる

実在する人に材を得た作品
涙という感動をもたらす

これはあくまでフィクションだ
事実を基にしたドラマだ

事実だけを並べたところで
感動させるドラマにはなりにくい

現実もひとつのフィクショ

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【映画批評詩】「そちら側の世界」

【映画批評詩】「そちら側の世界」

「殺す」と「殺される」
その対になる行為が続くのが
戦争

ひとりだと犯罪
百人 千人 万人を殺せば 英雄
それが 戦争

殺す側の生活をのぞき見る
家族がおり 仕事があり
出世があって 転勤がある
男は時に娼婦を抱き
同じ手で子も抱きかかえる

男は自らの手でユダヤ人の首を絞めてはいない
ガス室に送り 効率よく灰にする
その装置を
組織の中の歯車のひとつとして
まじめに行った
勤勉な男

その世

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【映画批評詩】「あの世の人びと」

【映画批評詩】「あの世の人びと」

男は
ゲイ(gay)よりクィア(queer)と言ってほしいという
ああ 彼らには彼らの事情があり
この世で その感情を抑え
マイノリティとして生きる
その苦悩があるのだろう
今は その世界への社会的関心や理解もあり
同性を愛する人たちが 一定数いることを
多くの人は承知…している
昔よりはずっと 生き易い世になった
そう 映るのだが――

映画の主人公は監督を投影したもので
彼自身が抱え続けたきた

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【映画評詩】「来年は80年」

【映画評詩】「来年は80年」

広島と長崎に落とされた原子爆弾
その生みの親である物理学者オッペンハイマーはどういう男だったのか

直接的に原爆の効果=被害は描かず
原爆が戦争を終わらせたという
米国人の圧倒的多数の心情を否定しない映画
そう受け取る向きもあるでしょう
しかし
監督の考えはそうではないのは明らかです

実験成功後
ちびとでぶを載せた2台のトラックが研究所を出て行きます

その父であるオッペンハイマーは あいまいな

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【映画評詩】「ぼくの気持ち」

【映画評詩】「ぼくの気持ち」

父と母
子にすれば 親同士がいがみ合い 争う
そこかしこに ある風景

親たちは「愛」し合って ぼくが生まれた――
そうではなかったのか

父とぼく ぼくと父
母とぼく ぼくと母

小さなぼくは思った
お父さん お母さん
けんかしないでおくれ

親たちは 心が離れたもの同士
それでも 同居し生活を続ける

妻には人生が開け
夫には先が見えない
二人でひとつだったのは昔の話
今は恨み合う

子は事故

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【映画評詩】「日本はまだまだなのです」

【映画評詩】「日本はまだまだなのです」

人は モノ
欠けたモノを埋めようと
哀れな自分を繕う

自死した女が
自分が宿した胎児の脳を移植され
違う人生を歩む物語
女を蘇らせたのはマッドサイエンティスト
そのもとで
幼児から大人の女へと変身する――

ファンタジー ゴシックの世界をベースに
奇妙なストーリーは進む

それはそれでよい

ヒロインを演じる米女優
エマ・ストーン Age35
その演技に驚く

裸は無論
ファックシーンもあけっぴ

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【映画評詩】「痛快無比 無双の強さ」

【映画評詩】「痛快無比 無双の強さ」

これは 力道山じゃないか――
現代の韓国に
力道山が刑事になって 蘇った

マ・ドンソク52歳 3月1日で53歳
韓国系アメリカ人の俳優

悪い奴を徹底的にたたきのめす
それも 素手で だ

アメリカとは違い 韓国も
すぐに拳銃なんか取り出さない
相手-暴漢-はナイフや日本刀 手にするのは刃物だ
それを かわし
マ・ドンソクは殴る
マ・ドンソクは投げる
マ・ドンソクはたたきつぶす

実に痛快 見て

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【映画評詩】「ママがやさしいとは限らない」

【映画評詩】「ママがやさしいとは限らない」

坊はずっと探していた
やさしい 甘いママ
自分を 百パーセント受け入れてくれる女性

おかあさんと坊
ずっとずっと甘い夢をみていたいのに
この世は 現実は
冷たく厳しいのだ

坊は年をとり 母も年をとり
大人になった坊は
母に背を向けたことに後悔する

あとは夢の中で遊ぶだけ
ベッドに入り
夢の中を漂う
そこだけは百パーセント
坊の ぼくの心は自由なのだ

年をとったぼくは
小さな
あなたに手を引

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【映画評詩】「生きるための選択」

【映画評詩】「生きるための選択」

すがりつく奴らは追い払え
生きるために
持っている奴らから奪うのだ
生きるために
争いには勝て 手段を選ばず
生きるために

生きるためなら
普通の人だって 何でもやる
人殺しもいとわない

大災害の後
無力になった人びとはどう生きるのか
生々しく描かれたその姿を 見た

キラー・スマイルで鳴らした
国際的俳優イ・ビョンホン
ニヤつくこともなく
黒いものを抱えた男を演じる

予想外の事態が起きたと

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【映画評詩】「そこには僕も…」

【映画評詩】「そこには僕も…」

平山という男が自転車をこぎ 橋をわたる
平山という男が古い狭い地下街で一杯やる
平山という男がコインランドリーを使う

ああ そこも ここも
僕の生活圏なんですよ

ヴェンダースの「PERFECT DAYS」は
僕の日常生活の中にある景色を映す

泣けた 泣けた 泣けた
僕は映画を見て 涙を流した

僕にも
あなたにも
今ここにあり
今生きていること
今だけじゃない
過去に生きたこと
過去にそこに

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【映画評詩】「琵琶湖は海よ 琵琶湖は海よ」

【映画評詩】「琵琶湖は海よ 琵琶湖は海よ」

はっきり言う
神奈川 埼玉 千葉――
そこに生まれ 代々その地で生きてきた人びと
それらを除けば
みな 東京で暮らせないのである
それら県に住んでいるのは
東京に住めないからなのだ

働く場が東京にありながら
なぜ地獄の通勤通学をする?

東京に住めない者ども
右代表である
埼玉県民たち――埼玉都民だと!?

「お前らは草でも食っていろ!」

そう言い放つ映画だ

前作の破天荒 弾けっぷりを踏襲

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