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読書

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#エッセイ

「さわる」ように読む

「さわる」ように読む

「さわる」ように読む。
この言葉に衝撃を受けた。
ただ、感じるのではなく、さわってみるとは、どのようなことか。

私の家の近くには、修道院や教会が点在している。
そのせいか、駅前の本屋さんの一つの棚には、興味深いものがある。

「目からウロコ 聖書の読み方 レクチオ・ディヴィナ入門」
という女子パウロ会の書を見つけた。

私はクリスチャンではないが、西洋美術史の授業は好きだった。
西洋美術と聖書は

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真珠の首飾り A STRING OF PEARLS

真珠の首飾り A STRING OF PEARLS

母の形見の中に、バロックパールのネックレスがある。
歪な形であるがゆえに暖かみや優しさを持つような気がして、歳を重ねるほどに使用する回数が増えた。
真珠の白い柔らかさで、顔まわりが明るくなるような気がする。
もしくは、グレーのバロックパールを白いシャツの襟を大きめに開けてするのも素敵だ。
そんなお洒落は、若いうちは似合わない。
大人の特権だ。

私は、服も持ち物も、できるだけシンプルなものを選んで

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ルーシー・リーの器

ルーシー・リーの器

夏の夕方だった。千葉市美術館の閉館に間に合うように走った。
急いで千葉モノレールに乗って見に行ったのは
「没後20年 ルーシー・リー展」。
久しぶりに図録を開いて見たら、当時のパンフレットと葉書が挟んであった。

美しいフォルムと色。
特に、薄いピンク色。どうやって出すのか・・・。このピンクに青が絶妙なバランスで組み合わされる。

ルーシー・リーの作品には、テーブルウェアが多い。
花器、壺、ティー

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ブラッサイのパリ 白のニュアンス

ブラッサイのパリ 白のニュアンス

美大生だった頃、写真をやっていた時期があった。
モノクロフィルムで撮り、暗室にこもって現像した。
露光過多にして、ソラリゼーションの実験をしたり、マットな印画紙に焼き付けてみたり、遊びのように楽しんだ。

その頃、好きだったのがブラッサイだった。
パリの夜の街の写真たち。
黒が濃く、それゆえ白にニュアンスがある気がしていた。
あたたかさも感じる。

そして、写真集の文章の描写が優しい。

「ついて

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ルイーズ・ブルジョア 糸とクモの彫刻家(子供と絵本について)

ルイーズ・ブルジョア 糸とクモの彫刻家(子供と絵本について)

まだ、外出制限が出るなどとは思わなかった、昨年のクリスマスあたり。
玄関に飾るリースを買った帰りに、彫刻家ルイーズ・ブルジョアの生涯を描いた絵本をみつけました。
ボローニャ・ラガッツィ賞をとった綺麗な本です。

代表作・大きなクモが、なぜ「ママン」というのかがわかります。
「巨大クモ・ママン」は、六本木ヒルズにいます。

ルイーズ・ブルジョアが、このお話よりずっと厳しい子ども時代を過ごしたことは何

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「花 降る日」という本

「花 降る日」という本

「この本、よかったら・・・。」
清楚な雰囲気で、いつもワンピースでいる先輩が、そっと手渡してくれたのは、
有元利夫・容子さんという画家のご夫婦が書かれた本だった。

「私、この画家がとても好きなの。」

油画科の学生であった先輩には、とても可愛がってもらった。
将来の夢をきらきらした目で語ってくれた時も、
恋の話で泣いてしまった時も、そばにいられるのが嬉しかった。
先輩の素直さには、本当にけがれと

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