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業務用(プロフェッショナル向け)機器の技術を核に民生用機器にも別格の性能持たせている会社 その5.14 私の推したい会社 当たり前過ぎて意識しなくなっていること 

 私の推したい会社は、業務用(プロフェッショナル向け)機器の技術を核に民生用機器にも別格の性能持たせている会社です。

 その理由を一言で言えば、業務で使われる程最先端で信頼性が高い技術を民生用に昇華して日々の暮らしの中に活かせるからです。

 

今までの経緯
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 具体的には例えばソニーさん。

 その1.0では民生用の製品は皆さんの染みの少ない放送業務用制作機材に絞ってご紹介し、今後の期待感まで吐露させて頂きました。その辺りはこちらをお楽しみ下さい。

 如何でしょうか。街で見かけるソニーさんの製品とは全くの異なるプロフェッショナル向けの機能美を感じる製品群って素敵ですよね。
 このとんでもない高価な業務用製品向けの技術が民生用にもフィードバックされていると思うと、何かお得感を感じませんか?
 というオチでした。

 その1.1はソニー・インタラクティブエンタテインメントグループさん。研究所が手掛けた際物(きわもの)を民生用、しかもゲーム機という最も大衆ウケするプラットフォームにというお話でした。

 その1.2は、ソニーさんとCBSソニー(ソニー・ミュージックスタジオ)さんの話です。ソニーさんの民生用製品を元に、ソニーさんとCBSソニーさん(ソニー・ミュージックスタジオ)さんが業務用製品を共同開発され、余りの好評のためにその業務用製品は、今ではまるで民生用製品の様に販売されているという珍しいお話でした。

 その1.3は、業務用の可搬型テープレコーダーが、私的な演奏会や鉄道·自然等の生録音のニースに応える形で民生用製品に仕立てられ大ヒットしたというお話でした。その名はカセットデンスケ。

 その2は、鉄道や機械等に用いられる業務用の電気モーターが、家電として掃除機、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの民生品の心臓部として転用されるというお話でした。

 その3は、流体力学と誘導機技術(誘導電動機(モーター)・誘導発電機(発電機)ともに成り立つ技術)から始まり電力インフラやエレベーター等の業務用機器をしつつ、扇風機から始まりエアコン等の民生用機器へその技術を展開されているというお話でした。

 その4は、造船業から始まり鉄道車両、航空宇宙、エネルギー・環境、精密機械・ロボット分野等でプロフェッショナル向けのソリューションを提供されていて、その技術を二輪車、ATV(四輪バギー車)、多用途四輪車、パーソナルウォータークラフト「JET SKI®」といった民生品に生かされいる会社のお話でした。

 その5.00から連作で時計メーカーさんを推したく、その前フリとして時計の歴史をご紹介しました。

 その5.01は、時間軸は明治少し前辺り以降、地理的には日本に絞り今日的な時計の価値についてその背景を共有させて頂きました。

 その5.02は、鉄道網の発達と時計について振り返ってみました。

 その5.03は、義務教育の普及と時計について振り返ってみました。当たり前過ぎて意識しなくなっている程陳腐な内容ですが、網羅性という意味で抑えて執筆しました。赤面する程基本的な内容も恣意的に含まさせて頂きました。

 その5.11は商社として輸入時計の販売と時計修理を開業し、業務用製品と民生用製品をしたたかに糾(あざな)いながら時計の分野で世界的な地位を築いたセイコーグループさんにまつわる私的なエピソードのご紹介でした。

 その5.12は、セイコーグループさんの業務用製品と民生用製品を逆境をも成長の機会としてしたたかに糾(あざな)ってきた歴史を第二次世界大戦直後頃まで振り返ってみました。

 その5.130も、その5.12に引き続きセイコーグループさんの業務用製品と民生用製品を逆境をも成長の機会としてしたたかに糾(あざな)ってきた歴史を1960年代後半頃まで振り返ってみました。

 その5.131では、その5.130でご紹介したグランドセイコーというある意味で日本の時計産業のフラッグシップの製品とも言えるラインナップについてのエピソードをご紹介しました。

 その製造工房を見学する機会を得て感動…

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 今回は、いよいよ水晶時計。腕時計の電子化についてです。

 これもスタートは業務用の技術でした。

 戦後まもなくでしたので残念ながら最先端技術は海外からでした。1957(昭和32)年、米国ハミルトン社による「テンプ駆動式電池腕時計」、1960(昭和35)年ブローバ社が開発した音叉時計「アキュトロン」発売によって腕時計の電子化が始まります。

 セイコーさんは先ずは業務用から。服部時計店時代に製造し易い掛時計から自社生産を始められたのとなんとなく似たニュアンスですね。違いは業務用という高精度を要求されるところで技術を固めて民生用に転用を狙うと明確に意識されていたところかと。

 1958(昭和33)年に放送局用水晶時計を開発し翌年納入しています。圧電素子としての水晶を時計の正確さの要である基本振動子として選択されたのでした。


 精度が最も高い水晶(クオーツ)方式に選択と集中され民生品への展開を始められます。オリンピックの業務用時計提供を上手に利用され、オリンピック用の卓上型クオーツ時計を1962(昭和37)年に、1964(昭和39)年にはクリスタルクロノメーターを発売し、東京オリンピックでは親時計として採用されます。
 これらの技術を民生品に展開されて、1966(昭和41)年に懐中型、1967(昭和42)年に腕時計のプロトタイプが完成。1969(昭和44)年のクリスマスの日に世界初のクオーツ腕時計発売されました。因みに価格は45万円と当時の大衆車と同等の価格でした。

主な技術は、
①音叉型水晶振動子
 小型・低消費電力、耐衝撃性
②オープン型ステップモータ
 モーターの分散配置と一秒運針
 (低消費電力で省スペース)
③CMOS‐IC
 超低消費電力の半導体
です。
 この技術の優位性から国際標準となったのです。

 しかも特許戦略がまたシビレます。

 音叉時計が特許の囲い込みで普及しなかったことからクオーツ腕時計関連特許を公開。相次いてセイコー方式が採用され水晶腕時計時代が一気に到来したのでした。そして今でもこの技術を核に改良が重ねられています。

 そして薄型時計の時代に…

①小型薄型化
②低消費電力化
③高精度化
といった古典的な時計の範疇での進化が…
機械時計では実現困難なで高精度の婦人用時計、紳士用ドレス時計から超薄型時計へと新市場開拓を精力的にされました。

 また、それを超えて
④多機能化
へと当時の時代技術革新の流れを摑んで大躍進されるのでした。

 ④の多機能化では、同時代の雰囲気を当事者として感じていた身としては一寸やりたい放題の感も。(笑)

 具体的には1982(昭和57)年には世界初の液晶テレビウオッチを、以降、コンピュータ腕時計、センサー付き腕時計などが商品化されていきました。

 そしてビジネスモデルにまで手が入ります。特にCMOS‐ICは量産効果が効く分野です。3年(当時)〜4年(現在)サイクル景況が循環、次世代の半導体技術が量産化になるサイクルとも略一致していました。継続的に最新鋭半導体製造ラインを作り続けなければ競争に負けてしまう宿命の半導体産業。量産効果を最大化し新規設備の償却を早められれば莫大な利益が見込める知的なゲームの場。
 量産効果を上げるには垂直統合モデルに手を入れて水平分業モデルを取り込むしか無いというオープン化の時代でした。 

セイコーさんは「コストダウンとムーブメント外販がもたらした時計産業構造の変化」と言っていらっしゃいます。

 具体的にはアナログ(針式)クオーツムーブメントの外販で新たに完成品アセンプラーを誕生させました。特に中国への返還前の香港は国際的な外装部品の生産地・組立拠点となり、ウオッチ生産の国際分業が進展しました。

 事業環境の変化を受け入れビジネスモデルにまでも大胆に手を入れた強(したた)かさには感服しました。

 その辺りの詳細はこちらを参考になさって下さい。

 放送局用水晶時計に端を発し、半導体産業の成長に完全にリンクせざるを得ない事業環境では、量産効果の見込める民生品へと軸足が移って行った時代でした。

 この時代は、業務用製品と民生用製品をしたたかに糾(あざな)いながら時計の分野で世界的な地位を築いたセイコーグループさんのスタイルが少し崩れましたが、そこを知恵と英断で耐え凌いだセイコーグループさんは、矢張り私の推したい会社なのです。

つづく

 





 

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