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レントよりゆったりと〔随想録〕

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#文学

反芻とイマココ 【短詩ふたつと雑記】

反芻とイマココ 【短詩ふたつと雑記】

苛々していた。苛々と怒りとはまったく別のものであるが、この時は曇天の下で混同してしまった。

退廃に堕ちたとき、気分と感情の違いなんぞに何の意味もない。大事なことは旧い脳を発火させられるか否かだ。歌えば許されると思っている。正直、踊れば許されると思っている。

運命的な出来事があった。しかしそこに至るまでに何の論理も因果も見出せなくて、あれも違う、これも違う、それも違う、と否定をしていったら、ああ

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#名刺代わりの小説10選

#名刺代わりの小説10選

定期的にやってみるタグ企画。
今回は #名刺代わりの小説10選 。10年以内に読了した国内作品という縛りをつけてやってみた。
なお、前回やった #私の最愛海外文学10選 はコチラ↓↓↓



(作者名は敬称略で失礼します)

国宝/吉田修一

任侠の家に生まれた男が歌舞伎界にいざなわれ、稀代の女方として大成するまでの壮大な物語。ライバル関係にある梨園の御曹司とのドラマは、何度読んでも涙なしにはや

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自薦あれこれ2023

自薦あれこれ2023

めまぐるしく過ぎていった2023。過去10年でもっとも書を開かなかった1年だったかもしれない。逆説的に「書を開かないと生が擦り減る」ことがよく分かった1年でもあつた。
毎年「今年の10冊」的なものを考えるのだが、読書量が少なすぎてイマイチな結果に終わってしまった。
そこで今年に限らずに最愛海外文学10選を考えてみたら、心に血がふたたび通うような感覚を得た。やはり本を読むことは僕の人生に必須なのだな

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#私の最愛海外文学10選

#私の最愛海外文学10選

X(旧Twitter)で #私の最愛海外文学10選 のタグがあったので遊んでみたら、小さな反響をいただいた。作品と自分との関係について、つれづれなるままに書いてみようと思う。

『シッダールタ』ヘルマン・ヘッセ

おそらく『車輪の下』でヘッセに興味を抱いて、2作目に手に取ったのがこれだった。手塚富雄訳を3冊、高橋健二訳を2冊、もしくはそれ以上持っている、揺るがぬマイ・ブック。単純にいつも物忘れがひ

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3月のカタルシス 【エッセイ】

3月のカタルシス 【エッセイ】

新年が始まってから、断片の寄せ集め本しか読めない、断片的な詩文しか書けないといった日々が続いていたが、3月はそれよりはまとまった時間が取れたように思う。仏像を観に行ったり、中編小説を読んだりして、そのことを散文にしたためることもできた。
生活のわずかな違いを体感したことで、ますます「人間には物語の力が必要だよな」という認識を強くした。つまり、断片は確かに大事だが、その組み合わせや並べ方次第でいかよ

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初手最高デートから掟破りまで【エッセイ】

初手最高デートから掟破りまで【エッセイ】

文学作品に触れる際、悪いところは目を瞑る、良いところは拡大鏡で見る、という姿勢を貫いてきた。それは僕が著者として完全なアマチュアであり、また読者としても一般読者の枠を超えず、批評家でもなんでもないからだ。
アマチュアや一般読者にとって、そのモチベーションは「楽しさ」以外にない。指摘や批評なんてもっての外、そんなものは「茶々」でしかない。

とはいえ、自分を高く見積もったり、枠を見誤ることもある。他

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詩の敵はやはりアイツだった 【エッセイ】

詩の敵はやはりアイツだった 【エッセイ】

珍しく夜更かしをしている。夜番の最中で寝るタイミングを逸してしまったのだ。
生活の変化により細切れに寝ることが多くなり、目を覚ますたびにスマホの通知を見て「おぉ、またか」と思う。
詩作品や詩に関するエッセイに対するリアクションが来ている。noteは以前にも増して詩作ユーザーを獲得し、コミュニティを拡大しているようだ。

端的に言うと「新規の詩人が増えた」

決して新規に対して古参がマウントを取ろう

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作品を〈書きながら〉考えていること【エッセイ】

作品を〈書きながら〉考えていること【エッセイ】

 初めに自身の作品を列挙しますが、他人の自分語りが苦手な方は次のパラグラフから読んで頂けたら嬉しいです。

 2022年は小説、小説、小説の年になっている。3月までは中編『花の矢をくれたひと』、3〜4月は短編『アポロンの顔をして』の再掲載、そして今は、これらと並行して始めた長編『葬舞師と星の声を聴く楽師』の連載を進めているところだ。
昨年までのプチスランプを忘れられるくらい、筆が乗っている。

 

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顕れる僕、潜る僕【エッセイ】

顕れる僕、潜る僕【エッセイ】

2021年も残り僅かになってきて、意識せずとも勝手に1年間を振り返ってしまう。昨年から大きな環境の変化はなかった。ウイルスをめぐる社会情勢は日々変容していったものの、個人の単位においては生活リズム、活動範囲、気をつけなきゃならないこと、どれにおいても昨年から引き継いだものばかり。

しかし心境の面では大きな変化があったと言って良いかもしれない。4〜5年ほど前から「潜る」という言葉が好きになって、今

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【エッセイ】セーラーマーズ考

【エッセイ】セーラーマーズ考

パズルのラストピースを見つけたような感覚を得たときの独特な喜びがある。過去の体験や蓄積のなかで解決しなかったモヤモヤした領域、そこにピッタリとハマる、他の新体験や未知の知見を得たとき、全ての図柄が揃って積年の霧が晴れていくことがあるだろう。本日はそのようなお話で、お分かりの通りテンションが少し前のめりである。暴れ馬の手綱を引くような気持ちでこの文章を書いている。僕がどこかへ飛んでいってしまってもど

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スキからラブリーへ【エッセイ】

スキからラブリーへ【エッセイ】

noteを始めて5年目になる今年の春・夏頃は、僕にとっての人気ピーク期だったと思う。もちろん人気ユーザーさんや幅広く活躍されているユーザーさんの足元にも及ばないのだけど、自分のnote活動歴においては相対的に多くのリアクションを貰ったと感じている。

人気は高い方が良い。単純に考えて、100人に1人の割合で僕の作品を気に入ってくれる人がいるとしたら、新規10000人に見られることは100人のファン

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「誰か」と「誰かの評価」を隠して読んでみませんか?【俳句エッセイ】

「誰か」と「誰かの評価」を隠して読んでみませんか?【俳句エッセイ】

先日、夕食時に某人気俳句番組を観ていたところ、隣で家人がカレーうどんを啜りながら

「この芸人さん好きじゃない。この句もまさに彼っぽくてイヤ」

と漏らした。
僕はその句をすごく気に入っていたので、残念な気持ちになった。
確かに作者であるその芸人さんの個性は垣間見えるものの、句自体は読者の想像を掻き立て、読み手(もしくは書き手)を変えてもしっかり成立する作品だったからだ。

僕たちが文芸作品を鑑賞

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その言葉は信じてもらえなかった。信じたのは800円の本と花。

その言葉は信じてもらえなかった。信じたのは800円の本と花。

 桜が咲きました。
 先日、大学を卒業される女性3人に贈り物をしようと、百貨店の女性向けハンカチコーナーに立ち寄りました。なんとまあ鮮やかな柄、かわいらしい柄の数々。これは完全に男女差別ですね。生涯をかけて抗議したいと思います。笑

 春の到来はいつも切ないものでした。別れの季節だからではありません。今日は、昔の話をしようと思います。語るまいと心に決めていたことでしたが、なぜか今語る必要に駆られ

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