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体も心もひとつしかないから。

「ちゃんとした大人」にならないと、って焦っていた。

いや、「焦る」よりもっともっと前の段階の話かもしれない。
「当然そうでないと、まともに幸せになれない」と思っていた。

周りの人たちは、誰もそんなふうに私を脅しはしなかったのに、不思議とそういう幻術にかかっていたようだった。

私の中で「ちゃんとした」というのは、
①正規雇用で働く
②実家から出て暮らす
③家事を一通りやる
④嫌なことがあっても上手に感情を保つ
⑤家族や友達、恋人を大切にする
⑥外食ばかりせず、バランスの良い自炊ご飯を食べる
⑦仕事は真面目に取り組む
⑧お金を無駄遣いせず、貯金する
⑨結婚しても正規で働き続ける
⑩2人くらい出産して、また復帰する 

 

①〜⑧まで全部やった(やろうとした)結果、私は適応障害になった。

そして気がついた。

理想の「ちゃんとした」は、等身大の私には無理だって。
だって、「ちゃんと」は、「幸せ」とは、また別だったから。

ほんの1ヶ月前の「ちゃんとしてた私」、全然幸せじゃなかった。

朝、肩は凝りすぎて、ひどく眠くて、しばらく動けなくて、
昼、何も思い出せないほど必死に働いて、
夜、ソファに倒れ込んで、心底もう何もしたくなかった。

キッチンには洗い物、
スマホには今日の献立、
冷蔵庫には食材が待ち受けてる。
私ひとりだったら適当に済ませるのに、
もう一人いるもんだから、
「ちゃんと」栄養のあるものを
作るようにしないと。
洗濯機も全然回していない。
お風呂もめんどくさい。
持って帰ってきた仕事もある。
もう一人がもうすぐ帰ってくる。
笑って泣いて愚痴る元気も無い。
「ちゃんと」平気みたいにしないと。
「ちゃんと」いつもの元気な私でいないと。
・・・・しばらく帰ってきて欲しくないな。
大好きなのに。
疲れた。
大好きだから。
疲れた。
仕事も、あなたも、この家も、
私自身も、そして人生も。

頭の中で小さな声がしていた。

どうしてこんなことに?って
何か重大な間違いをしているのではないか、って

でも私、疲れていて、そんな声は踏み潰して眠った。
少しでも体力と気力を回復させないといけなかった。

起きて。目を覚まして。って

あの声は、ずっと前から、私の声だった。

 

ほどなくして、仕事に行けなくなった。
心療内科に行って、適応障害の診断を受けて、すぐに休職になった。

休みに入ってから、久々に「自分の声」を聞いた気がした。
「自分の声」は、色んな事を教えてくれた。

「ちゃんと」と「幸せ」には、
相関関係?因果関係?
知らんけど、
あらゆる関係がまるっきり全くないんだ。

 

とか、

全部の「ちゃんと」をこなすのはね、
貴方には無理。
努力とかじゃないんだよ。
コップに注げるミルクの量は変えられないという意味。
だからね、「貴方の幸せ」に必要な分だけ、選んで大切に大切に入れるんだ。

 

とか。

あと、嬉しかったのはこの言葉。

適応できなかったら、
幸せだと心から笑えなかったら、
「ちゃんと」エラーが出るように設計されていて良かった。
心の精度が高くて良かったね。

体も心もひとつしかないから。
貴方が貴方を守ったということだ。

 

もう、声は聞こえなくなった。

今は、ただ、
あなたが帰ってくるのが待ち遠しい。

🦉

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