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【掌編小説】人が死ぬ話【#013】
「浮気したら殺すから。」
彼女と付き合う時に言われたセリフだ。
「ただいま。」
家に帰ってくるといつも言うセリフだ。彼女の腹から赤い液体が止め処なく流れ出ている。
「またか。」
夜遅くに帰ってくると、いつもこれだ。テーブルの上には、持ち手が赤黒く変色している包丁が、無造作に置かれている。
「こんなに汚しちゃって…」
そういって、彼女の腕をひっばる。その腕に力感はなく、プランプランと揺れている。
黒木の終わり 2017年振り返り
2017年
とても幸せな年でした。
幸せは相対的なものとして捉えてしまいますが、2015年、2016年の二年間と比べて、本当に幸せとはこういうことなのか、と再認識できる1年でした。生まれてから20年以上、幸せを享受してきて、甘え続けてきた。2015、16年も他の人からしたら、「なんだ、そんなもんで不幸とか言ってんのか」と言われるほどの出来事しか起こってないのかもしれないけど、生まれてからずっと
高校入試発表を終えて思うこと
今の私から言えること。
行きたかったところに行っても失敗したと思うこともある。
行きたくなかったところに行っても楽しかったと思うこともある。
ただ、それは今の私が、一時的に達観できているからだ。
数か月前の私なら、死ぬほど自分の運命を恨んでいた。もしも、神がこの世にいるならば、刺し違えてもいいから、殺してやろうと思っていた。むしろ、刺し違えたかった。
今の私から言わせてもらえれば。
合格し
2017年2月19日 近況報告
ご無沙汰しております。黒木です。最近、私の人生は次のような感じで展開しています。
まず、前の学校をやめて無職期間がありましたが、一月の中ごろからまた別の学校に勤めることができています。
うつ病からの復帰ということで、わずかながら不安がありましたが、今ではどこが悪かったのかわからないくらい、生徒たちと楽しい毎日を送っています。
今働いている学校は公立の学校ですが、4月からはまた私立の学校に内定
【掌編戯曲】雪原に落とされた一粒の種【#007】
(この文章は約3分で読むことができます。)
車窓から見える雪原はとても奇麗だった。車を走らせていた僕は、ふいにブレーキを踏み、外へ出た。西日が差し込む。キラキラと輝く世界。現実の世界に失望した僕は、その虚構のような世界に吸い込まれていった。
目の前の光景に見とれていた僕は、隣に人が立っていることに気づいていなかった。何もない雪原に、そこまで見とれていたかと思うと、ふいに自分のことが恥ずかし
【エッセイ】元教師の現無職、「過労死」から救いたい【#004】
(この文章は約5分で読むことができます。)
働いていた時はテレビを見る余裕なんて無かった。仕事がうまくいかなくなり精神的にも肉体的にも追い詰められ、母親に相談の電話した時に、私が世間の話題を知らなくて驚かれるほどであった。仕事を辞めてから、もともとテレビっ子であった私は、テレビを再び見るようになった。そうして飛び込んできたのが、電通の過労死の報道であった。
確かに、今の人の心は軟弱なのかもしれ
【掌編小説】いたって平和クエスト【#003】
(この小説は約2分で読むことができます。)
「起きなさい。起きなさい、私のかわいい○○や…」
今日は旅立ちの日だ。魔王が今にも世界を滅ぼそうとしているらしい。
右手に剣。左手に盾。
俺の後ろには、屈強な剣士。賢そうな魔法使い。清らかな僧侶。
「お前は、伝説の勇者の血を受け継ぐ末裔だ。必ずや魔王を倒してくれると期待しておるぞ。」
大きな赤い椅子に座った王様が宝箱を差し出し、俺を送り出した