【掌編小説】人が死ぬ話【#013】
「浮気したら殺すから。」
彼女と付き合う時に言われたセリフだ。
「ただいま。」
家に帰ってくるといつも言うセリフだ。彼女の腹から赤い液体が止め処なく流れ出ている。
「またか。」
夜遅くに帰ってくると、いつもこれだ。テーブルの上には、持ち手が赤黒く変色している包丁が、無造作に置かれている。
「こんなに汚しちゃって…」
そういって、彼女の腕をひっばる。その腕に力感はなく、プランプランと揺れている。そして、その腕がテーブルの上に置かれていたトマトジュースの瓶にあたり、床をさらに