京香

読んだ本の感想と記録。 ノンフィクションよりも小説が好きです。 特に村上春樹が好きです。

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読んだ本の感想と記録。 ノンフィクションよりも小説が好きです。 特に村上春樹が好きです。

記事一覧

【読書感想文】正欲

朝井リョウ著作『正欲』は、世の中の「みんなの多様性を尊重すべき」という流れと、「でもキモい人は完全排除する」という矛盾を真っ向から書く、現代社会の暴露本のように…

京香
1か月前
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【読書感想文】永遠の仔

久々のnote投稿となります(いやいや一年も放置してたやないかい)。 この間、職場の上司からおすすめされた天童荒太著作『永遠の仔』にどハマりし、5巻まで完読しました…

京香
2年前
3

心理学から見る 村上春樹 『沈黙』

本記事は村上春樹の短編『沈黙』を、心理学の視点を用いて書いた解説文です。(本書はトプ画の『レキシントンの幽霊』に収録されている短編集です) ふだんは村上春樹の読書…

京香
3年前
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【読書感想文】 痴人の愛

世の中には、あらゆる男を手のひらで転がす「悪女」たるものが存在します。その「悪女」の中でも、谷崎潤一郎作『痴人の愛』(1924)に登場する23歳の女・ナオミは軍の抜いて…

京香
3年前
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【読書感想文】限りなく透明に近いブルー

本屋へ寄るとき、みる棚は決まって「村上春樹」。そしてその隣に必ずあるのが「村上龍」。なんとなく一番有名な作品『限りなく透明に近いブルー』を手に取ってみました。本…

京香
3年前
5

【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(下)

『罪と罰』(下)の考察です。前回の内容はこちらから。 前置き前回では、貧は罪ではないこと、また貧困生活を送るカテリーナを例に、環境そのものが罪であることについて…

京香
3年前
4

【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(上)

好きな小説家・村上春樹の作品でも、好きな俳優・堺雅人さんの自伝でも、繰り返し引用されていたのがドストエフスキーの『罪と罰』。ロシア文学最高峰と言われているドスト…

京香
3年前
4

うーん、結局村上春樹がいちばんおもしろいし、彼の本を超えるものにまだあえてない、、

京香
3年前

【感想文】芥川龍之介『玄鶴山房』

久々にnoteを開きました。まずはあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。ながらく文章を書いていないので、うまく書ける自信がこれっぽちもない…

京香
3年前
7

【読書感想文】海と毒薬

遠藤周作『海と毒薬(1957)』の感想文です。想像以上の内容の重さでした...読み終えた後のどんより感が取れない。本も薄く読みやすいと思って手に取ってみたら、まさかの戦…

京香
3年前
10

【読書感想文】アヒルと鴨のコインロッカー

伊坂幸太郎著作『アヒルと鴨のコインロッカー』は、伊坂さんの作品に火がついた『重力ピエロ』の発表と同年に発売された作品です。本作はいろんな賞を総ナメしており、伊坂…

京香
3年前
15

この間カフカ作『ペスト』を読破したのですが、脳が足りなくて理解できなかったです...悔しいのでまた読み返して感想文かけるレベルに理解したいなあ

京香
3年前

【読書感想文】 ゴールデンスランバー

夏ってなんだか太陽も眩しくて、海もキラキラしていて、暑いのに外に出たくなっちゃいますよね。GoToもあってか、この夏はたくさん旅行してしまいました。コロナのことを考…

京香
3年前
9

ねじまき鳥クロニクル【読書感想文】

3冊に及ぶ村上春樹著作『ねじまき鳥クロニクル』。思ったより読み終えるのに時間かかってしまいました。 ざっくりあらすじ「僕」であるオカダトオルは突然妻のクミコに離…

京香
3年前
7

【読書感想文】 マリアビートル

伊坂幸太郎著作『マリアビートル』の感想文です。久々に読み返しました。私は同じ本を読み返すことは基本ないのですが、この作品だけは何度か読み返したいな〜と思える作品…

京香
3年前
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結局どの村上春樹の本がおすすめなの?

少しでも村上春樹の魅力に気づく人が増えたらな〜という思いから、それぞれのニーズに合った村上作品を読みやすい作品とテーマ別でさらっと紹介してみます。※独断と偏見で…

京香
3年前
8
【読書感想文】正欲

【読書感想文】正欲

朝井リョウ著作『正欲』は、世の中の「みんなの多様性を尊重すべき」という流れと、「でもキモい人は完全排除する」という矛盾を真っ向から書く、現代社会の暴露本のように感じました。読み終えた後、自身の浅慮さを恥じ、また社会で「正」とされている流れに恐ろしさを感じます。

※ネタバレあり

ざっくりあらすじ

物語は児童ポルノ摘発をされた男性3人のニュースから始まる。記事は近所のインタビュー内容も含まれ、誰

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【読書感想文】永遠の仔

【読書感想文】永遠の仔

久々のnote投稿となります(いやいや一年も放置してたやないかい)。

この間、職場の上司からおすすめされた天童荒太著作『永遠の仔』にどハマりし、5巻まで完読しました。ここ最近はずっと村上春樹以上にハマれる作家がいなかったので、すてきな作品に出逢えて嬉しいです。

本書は「孤独とは何か」を永遠に追及した小説です。コロナ禍で孤独を感じやすくなったり、恋愛や友情でなんとなく孤独を感じている人にお勧めで

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心理学から見る 村上春樹 『沈黙』

心理学から見る 村上春樹 『沈黙』

本記事は村上春樹の短編『沈黙』を、心理学の視点を用いて書いた解説文です。(本書はトプ画の『レキシントンの幽霊』に収録されている短編集です)

ふだんは村上春樹の読書感想文を書くことが多いのですが、本書は心理学をかじった私からしていろいろ考えるところがあり、このような解説文として書いてみました。

「人を見た目で判断しない」ことは可能か?まずはじめに、本書のテーマについて軽く触れたいと思います。

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【読書感想文】 痴人の愛

【読書感想文】 痴人の愛

世の中には、あらゆる男を手のひらで転がす「悪女」たるものが存在します。その「悪女」の中でも、谷崎潤一郎作『痴人の愛』(1924)に登場する23歳の女・ナオミは軍の抜いて悪名高いと言っていいでしょう。そんな彼女の魅力にとりつかれたあわれな男・譲治の物語です。

ざっくりあらすじナオミ(23歳)という一人の女に翻弄される様子を、主人公譲治(36歳)が過去を想起しながら語る。出会いは8年前。浅草のカフェ

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【読書感想文】限りなく透明に近いブルー

【読書感想文】限りなく透明に近いブルー

本屋へ寄るとき、みる棚は決まって「村上春樹」。そしてその隣に必ずあるのが「村上龍」。なんとなく一番有名な作品『限りなく透明に近いブルー』を手に取ってみました。本書は彼が24歳の時に発表され、群像新人賞とともに芥川賞を受賞した、衝撃の一作です。

ざっくりあらすじ場所は東京都福生市。アメリカ軍基地の近くに住む主人公リュウ。その影響からか、彼は19歳にして女友達を娼婦として「パーティー」へ売り込み、空

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【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(下)

【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(下)

『罪と罰』(下)の考察です。前回の内容はこちらから。

前置き前回では、貧は罪ではないこと、また貧困生活を送るカテリーナを例に、環境そのものが罪であることについて触れました。

「すべては環境に支配されています、人間自体は無に等しいのです」
ーレベジャートニコフ

では極貧生活に陥った平民らは、どのようにして貧しさから逃げ出すことができるのか?その手段は?この難題に対し、主人公ラスコは精神的に少し

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【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(上)

【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(上)

好きな小説家・村上春樹の作品でも、好きな俳優・堺雅人さんの自伝でも、繰り返し引用されていたのがドストエフスキーの『罪と罰』。ロシア文学最高峰と言われているドストエフスキーですが、ロシア文学ってなんだか暗く、じめっとした陰うつな雰囲気がして、なかなか手に取れずにいました(多かれ少なかれ、そう思う人は多いはずでしょう)。しかし先日芥川の本を読み終えてみると、少しばかり陰うつな言葉を受け入れる隙間ができ

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うーん、結局村上春樹がいちばんおもしろいし、彼の本を超えるものにまだあえてない、、

【感想文】芥川龍之介『玄鶴山房』

【感想文】芥川龍之介『玄鶴山房』

久々にnoteを開きました。まずはあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。ながらく文章を書いていないので、うまく書ける自信がこれっぽちもないです。がんばります。

今回は芥川龍之介作の短編集『玄鶴山房(1978)』の感想文です。本書は短編集で、他には晩年の頃に書かれた『歯車』なども同本に含まれています。最近なんだか「自分のアタマでちゃんと考える」ことをしたくて、近現代小説(

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【読書感想文】海と毒薬

【読書感想文】海と毒薬

遠藤周作『海と毒薬(1957)』の感想文です。想像以上の内容の重さでした...読み終えた後のどんより感が取れない。本も薄く読みやすいと思って手に取ってみたら、まさかの戦争モノ、ノンフィクションでした。

ざっくりあらすじ舞台は戦後間もない日本。冒頭での「私」は、持病のため近くの医院を訪れるが、そこで診療している勝呂医者を怪しげに思う。のちに、彼は戦争末期、九州の病院でアメリカ人捕虜の生体解剖を行っ

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【読書感想文】アヒルと鴨のコインロッカー

【読書感想文】アヒルと鴨のコインロッカー

伊坂幸太郎著作『アヒルと鴨のコインロッカー』は、伊坂さんの作品に火がついた『重力ピエロ』の発表と同年に発売された作品です。本作はいろんな賞を総ナメしており、伊坂ファンからするとお気に入りリストから外せないはず。最後のどんでん返しがすごすぎて、2日で読み終えてしまいました。(さすが伊坂幸太郎...)

※壮大なネタバレに注意

ざっくりあらすじ大学入学のために新居に引っ越してきた「僕(=椎名)」は、

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この間カフカ作『ペスト』を読破したのですが、脳が足りなくて理解できなかったです...悔しいのでまた読み返して感想文かけるレベルに理解したいなあ

【読書感想文】 ゴールデンスランバー

【読書感想文】 ゴールデンスランバー

夏ってなんだか太陽も眩しくて、海もキラキラしていて、暑いのに外に出たくなっちゃいますよね。GoToもあってか、この夏はたくさん旅行してしまいました。コロナのことを考えて人混みを避け、ドライブやキャンプといった選択肢をとりましたが、たくさん自然と触れ合えて良かったです。夏のワクワクに負けてしまって、まったく本を読まずに過ごしてしまいました。すベては夏のせいですね(他責)。

今回は伊坂幸太郎著作『ゴ

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ねじまき鳥クロニクル【読書感想文】

ねじまき鳥クロニクル【読書感想文】

3冊に及ぶ村上春樹著作『ねじまき鳥クロニクル』。思ったより読み終えるのに時間かかってしまいました。

ざっくりあらすじ「僕」であるオカダトオルは突然妻のクミコに離婚を告げられ、家出される。それと同時に、「僕」の周りでは奇妙なことが次々と起こり始める。突然失踪した猫。妻の兄である綿谷ノボルとの再会。預言者だと自称する加納姉妹との接触。昔お世話になったおじさんの死去、そして遺言。様々な人との出会いを通

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【読書感想文】 マリアビートル

【読書感想文】 マリアビートル

伊坂幸太郎著作『マリアビートル』の感想文です。久々に読み返しました。私は同じ本を読み返すことは基本ないのですが、この作品だけは何度か読み返したいな〜と思える作品です。新幹線を舞台にしているから、新幹線に乗るたびに思い出すって言うのもあるのかも。あとスパイとか殺し屋っていう、非日常的かつ、どこかスリルある裏社会的な設定が好き。

※ネタバレ注意です

ざっくりあらすじ伊坂幸太郎作品の中でも有名な殺し

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結局どの村上春樹の本がおすすめなの?

結局どの村上春樹の本がおすすめなの?

少しでも村上春樹の魅力に気づく人が増えたらな〜という思いから、それぞれのニーズに合った村上作品を読みやすい作品とテーマ別でさらっと紹介してみます。※独断と偏見で

村上春樹って読みにくい、難しい、性的描写が多すぎる、不可解、などまあいろいろ言われているわけですが、あなたのテイストに合った村上作品に出会うことができたら、好きになるかも?

読みやすさ★☆☆☆  デビュー初期の本。村上ワールドは全開だ

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