京香

読んだ本の感想と記録。 ノンフィクションよりも小説が好きです。 特に村上春樹が好きです。

京香

読んだ本の感想と記録。 ノンフィクションよりも小説が好きです。 特に村上春樹が好きです。

最近の記事

【読書感想文】正欲

朝井リョウ著作『正欲』は、世の中の「みんなの多様性を尊重すべき」という流れと、「でもキモい人は完全排除する」という矛盾を真っ向から書く、現代社会の暴露本のように感じました。読み終えた後、自身の浅慮さを恥じ、また社会で「正」とされている流れに恐ろしさを感じます。 ※ネタバレあり ざっくりあらすじ 物語は児童ポルノ摘発をされた男性3人のニュースから始まる。記事は近所のインタビュー内容も含まれ、誰が読んでも「被害者である子供たち」と「加害者である男性3人」と捉えられる内容にみ

    • 【読書感想文】永遠の仔

      久々のnote投稿となります(いやいや一年も放置してたやないかい)。 この間、職場の上司からおすすめされた天童荒太著作『永遠の仔』にどハマりし、5巻まで完読しました。ここ最近はずっと村上春樹以上にハマれる作家がいなかったので、すてきな作品に出逢えて嬉しいです。 本書は「孤独とは何か」を永遠に追及した小説です。コロナ禍で孤独を感じやすくなったり、恋愛や友情でなんとなく孤独を感じている人にお勧めです。 ざっくりあらすじ児童養護施設で育った優希、笙一郎、梁平の、3人の成長過程

      • 心理学から見る 村上春樹 『沈黙』

        本記事は村上春樹の短編『沈黙』を、心理学の視点を用いて書いた解説文です。(本書はトプ画の『レキシントンの幽霊』に収録されている短編集です) ふだんは村上春樹の読書感想文を書くことが多いのですが、本書は心理学をかじった私からしていろいろ考えるところがあり、このような解説文として書いてみました。 「人を見た目で判断しない」ことは可能か?まずはじめに、本書のテーマについて軽く触れたいと思います。 この小説でもし「教訓」があるとすれば(わざわざこの仮定をつける理由は、もともと村

        • 【読書感想文】 痴人の愛

          世の中には、あらゆる男を手のひらで転がす「悪女」たるものが存在します。その「悪女」の中でも、谷崎潤一郎作『痴人の愛』(1924)に登場する23歳の女・ナオミは軍の抜いて悪名高いと言っていいでしょう。そんな彼女の魅力にとりつかれたあわれな男・譲治の物語です。 ざっくりあらすじナオミ(23歳)という一人の女に翻弄される様子を、主人公譲治(36歳)が過去を想起しながら語る。出会いは8年前。浅草のカフェで働いていたナオミに惹かれ、「イマドキの、ハイカラで上品な、教養ある女性に仕立て

        【読書感想文】正欲

          【読書感想文】限りなく透明に近いブルー

          本屋へ寄るとき、みる棚は決まって「村上春樹」。そしてその隣に必ずあるのが「村上龍」。なんとなく一番有名な作品『限りなく透明に近いブルー』を手に取ってみました。本書は彼が24歳の時に発表され、群像新人賞とともに芥川賞を受賞した、衝撃の一作です。 ざっくりあらすじ場所は東京都福生市。アメリカ軍基地の近くに住む主人公リュウ。その影響からか、彼は19歳にして女友達を娼婦として「パーティー」へ売り込み、空き時間には麻薬とセックスを繰り返す。彼の同級生らも、同じように鬱憤とした、気だる

          【読書感想文】限りなく透明に近いブルー

          【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(下)

          『罪と罰』(下)の考察です。前回の内容はこちらから。 前置き前回では、貧は罪ではないこと、また貧困生活を送るカテリーナを例に、環境そのものが罪であることについて触れました。 「すべては環境に支配されています、人間自体は無に等しいのです」 ーレベジャートニコフ では極貧生活に陥った平民らは、どのようにして貧しさから逃げ出すことができるのか?その手段は?この難題に対し、主人公ラスコは精神的に少しおかしくなってしまうほど悩み続けます。ラスコ自身も、先ほどのカテリーナと変わらず

          【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(下)

          【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(上)

          好きな小説家・村上春樹の作品でも、好きな俳優・堺雅人さんの自伝でも、繰り返し引用されていたのがドストエフスキーの『罪と罰』。ロシア文学最高峰と言われているドストエフスキーですが、ロシア文学ってなんだか暗く、じめっとした陰うつな雰囲気がして、なかなか手に取れずにいました(多かれ少なかれ、そう思う人は多いはずでしょう)。しかし先日芥川の本を読み終えてみると、少しばかり陰うつな言葉を受け入れる隙間ができたので、やっと本棚から引っ張りだしてみました。自分なりに考察してみたかったので、

          【考察】 ドストエフスキー 罪と罰(上)

          うーん、結局村上春樹がいちばんおもしろいし、彼の本を超えるものにまだあえてない、、

          うーん、結局村上春樹がいちばんおもしろいし、彼の本を超えるものにまだあえてない、、

          【感想文】芥川龍之介『玄鶴山房』

          久々にnoteを開きました。まずはあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。ながらく文章を書いていないので、うまく書ける自信がこれっぽちもないです。がんばります。 今回は芥川龍之介作の短編集『玄鶴山房(1978)』の感想文です。本書は短編集で、他には晩年の頃に書かれた『歯車』なども同本に含まれています。最近なんだか「自分のアタマでちゃんと考える」ことをしたくて、近現代小説(特に戦後昭和時代)に興味を持ちはじめました。近年の大衆小説もじゅうぶん面白いので

          【感想文】芥川龍之介『玄鶴山房』

          【読書感想文】海と毒薬

          遠藤周作『海と毒薬(1957)』の感想文です。想像以上の内容の重さでした...読み終えた後のどんより感が取れない。本も薄く読みやすいと思って手に取ってみたら、まさかの戦争モノ、ノンフィクションでした。 ざっくりあらすじ舞台は戦後間もない日本。冒頭での「私」は、持病のため近くの医院を訪れるが、そこで診療している勝呂医者を怪しげに思う。のちに、彼は戦争末期、九州の病院でアメリカ人捕虜の生体解剖を行った医者の1人であることが発覚する。小説の大部分は、その事件に携わった様々な人間に

          【読書感想文】海と毒薬

          【読書感想文】アヒルと鴨のコインロッカー

          伊坂幸太郎著作『アヒルと鴨のコインロッカー』は、伊坂さんの作品に火がついた『重力ピエロ』の発表と同年に発売された作品です。本作はいろんな賞を総ナメしており、伊坂ファンからするとお気に入りリストから外せないはず。最後のどんでん返しがすごすぎて、2日で読み終えてしまいました。(さすが伊坂幸太郎...) ※壮大なネタバレに注意 ざっくりあらすじ大学入学のために新居に引っ越してきた「僕(=椎名)」は、アパートの隣人河崎に突然「一緒に本屋を襲わないか」と誘われる。それも、たった一冊

          【読書感想文】アヒルと鴨のコインロッカー

          この間カフカ作『ペスト』を読破したのですが、脳が足りなくて理解できなかったです...悔しいのでまた読み返して感想文かけるレベルに理解したいなあ

          この間カフカ作『ペスト』を読破したのですが、脳が足りなくて理解できなかったです...悔しいのでまた読み返して感想文かけるレベルに理解したいなあ

          【読書感想文】 ゴールデンスランバー

          夏ってなんだか太陽も眩しくて、海もキラキラしていて、暑いのに外に出たくなっちゃいますよね。GoToもあってか、この夏はたくさん旅行してしまいました。コロナのことを考えて人混みを避け、ドライブやキャンプといった選択肢をとりましたが、たくさん自然と触れ合えて良かったです。夏のワクワクに負けてしまって、まったく本を読まずに過ごしてしまいました。すベては夏のせいですね(他責)。 今回は伊坂幸太郎著作『ゴールデンスランバー』の感想文です。本作は本屋大賞を受賞し、伊坂幸太郎の中でも代表

          【読書感想文】 ゴールデンスランバー

          ねじまき鳥クロニクル【読書感想文】

          3冊に及ぶ村上春樹著作『ねじまき鳥クロニクル』。思ったより読み終えるのに時間かかってしまいました。 ざっくりあらすじ「僕」であるオカダトオルは突然妻のクミコに離婚を告げられ、家出される。それと同時に、「僕」の周りでは奇妙なことが次々と起こり始める。突然失踪した猫。妻の兄である綿谷ノボルとの再会。預言者だと自称する加納姉妹との接触。昔お世話になったおじさんの死去、そして遺言。様々な人との出会いを通し、「僕」は妻との再会を果たすことができるのだろうか。 「死」本書では戦争にま

          ねじまき鳥クロニクル【読書感想文】

          【読書感想文】 マリアビートル

          伊坂幸太郎著作『マリアビートル』の感想文です。久々に読み返しました。私は同じ本を読み返すことは基本ないのですが、この作品だけは何度か読み返したいな〜と思える作品です。新幹線を舞台にしているから、新幹線に乗るたびに思い出すって言うのもあるのかも。あとスパイとか殺し屋っていう、非日常的かつ、どこかスリルある裏社会的な設定が好き。 ※ネタバレ注意です ざっくりあらすじ伊坂幸太郎作品の中でも有名な殺し屋シリーズ。4人の殺し屋「木村」「蜜柑」「檸檬」「天道虫」は、とある新幹線の中で

          【読書感想文】 マリアビートル

          結局どの村上春樹の本がおすすめなの?

          少しでも村上春樹の魅力に気づく人が増えたらな〜という思いから、それぞれのニーズに合った村上作品を読みやすい作品とテーマ別でさらっと紹介してみます。※独断と偏見で 村上春樹って読みにくい、難しい、性的描写が多すぎる、不可解、などまあいろいろ言われているわけですが、あなたのテイストに合った村上作品に出会うことができたら、好きになるかも? 読みやすさ★☆☆☆  デビュー初期の本。村上ワールドは全開だが抽象的で曖昧な表現が多くすらすら読むことは難しいかも。ちなみに、この頃村上さん

          結局どの村上春樹の本がおすすめなの?