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リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #6:ニューシネマパラダイス
目標と目的は違う。目的のために目標がある。キャラクター、演出、構成、テーマ、音楽……すべてを「高品質」にする、そんな目標をひとつひとつ攻略していく。
その目的は「エモさ」。すべては「エモーショナル」を達成するため。リコリコは完成度の高いエモいシーンを中心に成り立っている。
一例をあげると、人気を決定づけた3話、DAの噴水の前で他のリコリスたちの嘲笑をものともせずにたきなを抱きしめ、高い高い
リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #5:今を生きる
リコリコが提示したものはなんであったか。データや理念や思想ではなく目の前の人をもっと信じよう。言葉より行動、誰も生まれ落ちた境遇、時代や国を選べはしない。配られたカード(ガチャ)の中、自分で考えて決めよう、選択して精一杯生き抜こう。
先の見えない時代に沿った物語。『自分でどうにもならないことに悩んでもしょうがない!受け入れて~全力!だいたいそれでいいことが起こるんだ』という千束の言葉はある種
リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #4:地獄の黙示録
アニメにテーマは必要かはよく議論される。テーマ、というより理念であろう。人はなぜ闘争するか。利益や感情的な好悪、希望など、様々であろう。しかし、もっともわかりやすく欲望されるのが、考え方、理念の違いによる闘争である。
三つの大きな理念がリコリス・リコイルでせめぎ合う。リコリコは利己利己ですらある。
あくまで物語に奉仕するために理念の闘争がある。ただ理念重視、理念布教のための物語はイデオロギ
リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #3:スタンドバイミー
優れたキャラクター造詣。
ヒロイン千束の魅力が物語を牽引する。どこまでも明るく楽しく振舞い表情ゆたか。そして銃の天才であり文句なく有能。ちょっとしたルーズさ、お間抜けさで親近感を出すのも忘れない。正に今の若い世代の理想の陽キャである。
日常シーンの天真爛漫な笑顔と戦闘シーンの彼女の怜悧な横顔の落差に皆が心を鷲掴みにされる。
きれいごとの嫌われる時代である。彼女の「命大事に」は「人の時
リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #2:ダイハード
アニメは演出と構成が9割であると個人的には思っている。凡庸な話でも構わないし、どこかで見たことのある設定、キャラでもいい。見せ方がすべてであり、料理人の腕一つにかかっている。
一見非現実的に見える千束の超接近戦の説得力を持たせる数々のガンアクション演出。神は細部に宿る。
二人が近づくシーンはいつもエモーショナルだ。真島のシーンは対照的に何を仕出かすかわからない危険な男の臭いがプンプンする
リコリス・リコイル~君の心臓〈セカイ〉を撃ち抜くエモい令和の弾丸。2022年7月~9月 #1:1984
どこかで見たことのある明るい髪色と黒髪の少女のバディキャラクター、不殺主義の天真爛漫奔放な明るいレッドに頑ななエリート主義のブルーが心を開いていく、決して珍しくない少女で編成された軍事組織+喫茶店もの、ある意味手垢にまみれているが故普遍的な才能や死生観を巡るテーマ、暗躍する組織に謎が謎呼ぶストーリー、みんな大好きガンアクション……今さら感は大いにある。陳腐でさえある。
しかし料理とはこの世界
刀使ノ巫女~斬って結べその縁を。少女撃剣群像劇。2018年1月~7月
400年の長きにわたり荒魂と言われる異形のものと日本は戦いを繰り広げていた。この荒魂を討伐するのは魔を祓う御刀に選ばれた少女たちのみ。
少女たちはそれぞれ、伍箇伝といわれる5つの学園に所属し、国家公務員待遇で各地へと派遣されていた。彼女達は日本古来の流派を修め厳しい戦いを駆け抜けていく……よくある退魔もの、といってしまえば、それまでだ。だが、それで観ないのは実に惜しい。昔ながらの骨太の群像
君の名は。・・・・・・少年少女の天翔る時遡る新日本神話創成。2016年劇場公開作品
『よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それが、ムスビ』
「君の名は「結び」という言葉がキーワードになっており、「組紐」がそれを象徴するイコンとして扱われている。私たちも極めて巧妙に編まれたこの作品世界を解きほぐすのではなく、さらに編み組んでいこう。
ベースにある映像と音楽の糸。新宿も糸守町もありふれた風景も光に満ちている。明度
古見さんはコミュ症です・・・・・・僕のクラスの天照大御神。2021年10月~12月/2022年4月~6月
古見さんはコミュ障ではない。きちんと人の気持ちがわかり、自分の気持ちもわかり、はっきりとした意志もある。極端に内気で赤面症なだけだ。むしろコミュ力モンスター長名や山井の方が問題である。友達100万人は無理、人間が覚えていられる顔は最大150人程度であるというし、拉致監禁など言語道断。
立て板に水、どれだけ流暢に会話ができても人の気持ちに配慮しない、またサイコパスのように自分の利益のために人の
スーパーカブ……新たなる日常を疾走する。2021年4月~6月
もはや日常アニメは存立危機事態であろう。よつばと!を憎む、というコラムでは、よつばちゃんを取り巻くあのリベラルで裕福な雰囲気に耐えられない、と評論された。余裕をもたらす豊かさはもはや憎悪の対象となりつつある。
この衰退する日本、格差社会でもはや日常アニメは存在できないのだろうか。いや、ある。マシンを相棒としてどこまでも走る、そのかけがいのない日常をかみしめる、この世の広さを知るために走る物語を
裏世界ピクニック・・・・・・少女たちのサバイヴ戦線。2021年1月~3月
大学生の空生は見捨てられた廃ビルの扉から、裏世界といわれるネットロアを所以とした怪現象、異生物たちがうろつく世界へと忍び込む。ストガルツキーの名作SF小説ストーカーをモチーフとした作品である。タルコフスキーが映画化した。
死にかけた際に救われ、出会った金髪の少女、鳥子と共に裏世界を冒険する。裏世界にはとんでもなく金になるアイテムが転がっている。目的は金だけではない。鳥子は失踪した先輩を探してい
安達としまむら~「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」萌えを超えて尊ひへ到れ。2020年10月~12月
正直、好きなタイプのアニメであるが作画がなあ、というのが第一印象であった。安達も島村もあまりに華がなく、モブなどは顔が黒い。背景は平板。手抜き系かあ、とさえ思えた。あーあ、前番組のアサルトリリィ担当のシャフトかPAワークスがやってくれればなあ、と……しかし、回を追うごとに まさに背景、キャラクターに命が吹き込まれたかのように活き活きとしてくる。
よいアニメはにおいがする。雨のにおい、体育館の
イエスタディをうたって~ノスタルジーは古びない。2020年4月~6月
美しい場面構成、すばらしい演出、原作の後半をバッサリ切ったのもよい。これが完全版「イエスタディをうたって」だ。原作者冬目景の世界を見事表現してくれた。声優さんたちも実にいい。ハルなんて想像通りだ。1998年の時代の空気が蘇る。物語内の時間は一年だが、単純に17年も完結にかかってしまったからだ。
フリーターの陸生はカラスを連れた少女、ハルに付きまとわれる。陸生はといえば高校教師になった大学時