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裏世界ピクニック・・・・・・少女たちのサバイヴ戦線。2021年1月~3月 

 大学生の空生は見捨てられた廃ビルの扉から、裏世界といわれるネットロアを所以とした怪現象、異生物たちがうろつく世界へと忍び込む。ストガルツキーの名作SF小説ストーカーをモチーフとした作品である。タルコフスキーが映画化した。
 死にかけた際に救われ、出会った金髪の少女、鳥子と共に裏世界を冒険する。裏世界にはとんでもなく金になるアイテムが転がっている。目的は金だけではない。鳥子は失踪した先輩を探していた。二人で秘密を共有する共犯者はもっとも親密だ、とニヤリと笑う鳥子。嫉妬や疑い、好意が交錯するほろ苦い百合である。
 
 裏世界研究者の小桜に言われたように、この二人は「人の心がない」のだ。二人で生き残るために取捨選択をシビアに行いサバイヴしていく。立ち塞がる者あらばこれを撃て。異常な裏世界はこの狂気の格差社会、分断社会のメタファーである。「人の心」を持っていてはやっていけない。お人よしは死を招くのみ。この世界に馴染めない者こそこの世界を裏世界認定するしかない。社会から弾かれた二人の小隊は、しかし無敵である。失う者は互い以外にない、無敵の人状態なのだ。
 
 空生は怪異は恐怖を通じて人とコミュニケートしようとしている……と考察する。暴力がコミュニケートなら恐怖もコミュニケートである。だが、よいところで終わってしまうのが何とも残念である。

あまり話題にならなかったが、各種銃、バッファロー改造装甲車などかなり真に迫っている。


 構成を変え、アメリカ軍部隊救出作戦を最終話にもってきたところはかえってよかった。博愛主義者ではない彼女たちがサバイヴのため、あっけらかんと救出が困難な部隊をスルーし、余力ができてはじめて救助に戻るという必要な計算高さをあらわしていた。
 
 ただ、結局のところ怪異を映像にしてしまうとやはり陳腐なモンスターとして表現されてしまい、どうにも安っぽさは否めない。演出に多少難のある作品ではあるが、意欲作であった。

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