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ブックレビュー「言語学バーリ・トゥード~Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか」
人事コンサルティングを生業にしていることもあって、「無意識のバイアス」についてのワークショップをファシリテーションすることもある。そこでは「インクルーシブなリーダーシップを発揮するにはまずは自らのバイアスを認識すべきだ」、などと偉そうに言っているのだが、今回本書を読んで、改めて自らのバイアスに気づかされた。
というのも、本書を読み進めていたところ、「昭和生まれのプロレス好き」であり、また「言いた
ブックレビュー「社会学をはじめる~複雑さを生きる技法」
今回この本を手に取ったのは、SNS上で著者自身が推薦していたのがキッカケだったと記憶しているが、結果的にわたしの経営人事コンサルタント業務上大変示唆に富んだものだった。
この「ちくまプリマー新書」というのはヤングアダルトをターゲットとした新書だそうで、大変読みやすくわかりやすい。従って読むのに時間がかからない。それでいながらも要点が頭に入ってきやすい。
まず社会学とは何か。
そして科学との対
ブックレビュー「障害者支援員もやもや日記~当年78歳、今日も夜勤で、施設見回ります」
初めて「日記シリーズ」を読んでみた。以前からこのシリーズは日経新聞の広告でそのイラストが異彩を放っていたため興味があったのだが、「障害者支援員」テーマとなると、日常的にコンタクトのある職業の話でもあるので読んでみることにした。
この「日記シリーズ」の発行者は三五館シンシャという会社で、倒産した三五館の社員だったロスジェネ世代の中野長武氏が2017年に設立し、社員は中野氏ただ一人という零細企業だ。
ベスト・オブ・バッドフィンガー
今年の7月31日に発売されたCDJournal別冊の”…and The Beatles" シリーズの第三弾はBadfinger。
Bandfingerは故松村雄策さん、そして”No Matter What”をCoverしたJerryfishの影響で公式全アルバムとBiograhy本の”Without You-The Tragic Story of Badfinger”を持っているほど一時は熱狂し
ブックレビュー「世界は経営でできている」
当たり前の話で恐縮だが、この数日間あまりにも暑い。
昨日はオンライン・ワークショップの仕事があったので、日中はずっとエアコンの効いた部屋の中で一人デスクに座って画面に向かって声を上げていた。
ずっと家の中にいると、どうしても運動不足になるのでYouTubeで14日間チャレンジ2をやるのだが、流石に外の空気も吸いたくなって出かける。と言っても、アスファルトの上を歩くのは不快なので、家から車で涼し
ブックレビュー「ハウリングの音が聴こえる」
2月の「鑑識レコード倶楽部」以来の音楽関連本ブックレビューになる。松村雄策氏については亡くなられた昨年の「僕の樹には誰もいない」のブックレビュー以来だ。
前回の「僕の樹には誰もいない」が最後の著作になるだろうと思っていたので、本書の発刊には驚いたが、今回も米田郷之氏による発掘で、「小説すばる」に2014年4月号から4年間にわたって掲載された同名エッセイ44回分を全て収録したものだ。
前作につい
ブックレビュー「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」
以前にも触れたようにDE&I(”Diversity, Equity and Inclusion)という領域はまだまだ世界的にも開拓途中の分野なので、その進展情報について都度Updateが必要な分野だと認識している。
そもそも20年前だとDiversityと言っていたのが、D&Iになり今やDE&Iになっているのがその証左と言えるだろう。
5年ほど前にも本書の主題であるマイクロアグレッションという
ブックレビュー「みんな水の中」
先にご紹介した「普通という異常 健常発達という病」に続いて、こちらも発達障害者による当事者本だ。
著者の横道誠氏は京都府立大学文学部国際交流学科(ドイツ言語文化)の准教授で、40歳の頃に仕事を休職したことをきっかけに発達障害の診断を受け、その後発達障害に関する書物を読み、また現在は余暇を「発達仲間」との交流や自助グループの運営に充てている方だ。
著者によると「本書に書いていることは、私という唯
ブックレビュー「自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠」
本書は2月5日にブックレビュー「人新世の「資本論」」をUpした「人新世の「資本論」」への反論本である。
こちらは従来の資本主義を徹底的に擁護する立場にあるだけに至って論旨はシンプルだ。
著者の基本的な主張は、コミュニズム、社会主義はすべて全体主義に陥ったことは歴史の事実であり、資本主義との優劣ははっきりしている、したがって「「人新世」の資本論」が主張する脱成長コミュニズムは民主主義と相いれるは
ブックレビュー「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」
私が著者のブレイディみかこ氏を知ったのは2019年作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が評判になったからだった。同書はまだ読んでいないのだが、本書はタイトルからしてPunk精神を感じたのでこちらを先に手に取ることとした。
著者は1965年生まれなので私と同世代と言って良く、日本在住時からPunk Music、特にJohnny Lydonに影響を受けたらしい。
著者は、福岡県立修猷館