梯 慶太 Keith Kakehashi

音楽とスキーを愛する経営人事コンサルタントが乱読する書籍と好きな音楽を紹介します。神戸…

梯 慶太 Keith Kakehashi

音楽とスキーを愛する経営人事コンサルタントが乱読する書籍と好きな音楽を紹介します。神戸出身、川崎市宮前区在住。HIRAKUコンサルタンシーサービシズ代表。ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングシニアコンサルタント。

マガジン

  • Willin'

    1962年生まれのKeith Kakehashiの視点で描く音楽、映画、書籍などエクレクティックなカルチャーマガジン。タイトルのWillin’はLittleFeatの名曲が由来。

記事一覧

ブックレビュー「言語学バーリ・トゥード~Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか」

人事コンサルティングを生業にしていることもあって、「無意識のバイアス」についてのワークショップをファシリテーションすることもある。そこでは「インクルーシブなリー…

ブックレビュー「社会学をはじめる~複雑さを生きる技法」

今回この本を手に取ったのは、SNS上で著者自身が推薦していたのがキッカケだったと記憶しているが、結果的にわたしの経営人事コンサルタント業務上大変示唆に富んだものだ…

ブックレビュー「障害者支援員もやもや日記~当年78歳、今日も夜勤で、施設見回ります」

初めて「日記シリーズ」を読んでみた。以前からこのシリーズは日経新聞の広告でそのイラストが異彩を放っていたため興味があったのだが、「障害者支援員」テーマとなると、…

ベスト・オブ・バッドフィンガー

今年の7月31日に発売されたCDJournal別冊の”…and The Beatles" シリーズの第三弾はBadfinger。 Bandfingerは故松村雄策さん、そして”No Matter What”をCoverしたJerry…

レコード/CD棚を総ざらえしデーターベース化...第一弾ついに完了

昔は絶対そうなりたくないものだな、と思っていたのだが、この年齢になると同じモノを二度買ってしまうことがある。 ここ数年で記憶している範囲で言うと、雑誌Brutusの「…

ブックレビュー「世界は経営でできている」

当たり前の話で恐縮だが、この数日間あまりにも暑い。 昨日はオンライン・ワークショップの仕事があったので、日中はずっとエアコンの効いた部屋の中で一人デスクに座って…

ブックレビュー「NETFLIX の最強人事戦略 自由と責任の文化を築く」

一時サブスク契約の急減に悩まされたNetflixだが、広告付きプランが3割増と好調で4~6月期は売上高ペースで過去最高を更新、44%増益、と報じられている。 本書は元々2009…

ブックレビュー「ハウリングの音が聴こえる」

2月の「鑑識レコード倶楽部」以来の音楽関連本ブックレビューになる。松村雄策氏については亡くなられた昨年の「僕の樹には誰もいない」のブックレビュー以来だ。 前回の…

ブックレビュー「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」

以前にも触れたようにDE&I(”Diversity, Equity and Inclusion)という領域はまだまだ世界的にも開拓途中の分野なので、その進展情報について都度Updateが必要な分野だと…

ブックレビュー「多様性の科学」

本書のタイトルは「多様性の科学-複数の視点で問題を解決する組織」だが、原題は”Rebel Ideas-The Power of Diverse Thinking"。性別、人種、年齢、信仰などの人口統計学…

ブックレビュー「みんな水の中」

先にご紹介した「普通という異常 健常発達という病」に続いて、こちらも発達障害者による当事者本だ。 著者の横道誠氏は京都府立大学文学部国際交流学科(ドイツ言語文化…

ブックレビュー「普通という異常 健常発達という病」

本書を知ったのは日経新聞で本年4月13日に「発達障害、多様な実態 広範な濫用には問題も」という記事の中で本書と「発達障害大全」、「みんな水の中」が紹介されていたか…

ブックレビュー「自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠」

本書は2月5日にブックレビュー「人新世の「資本論」」をUpした「人新世の「資本論」」への反論本である。 こちらは従来の資本主義を徹底的に擁護する立場にあるだけに至っ…

ブックレビュー「トヨタ中国の怪物 豊田章男を社長にした男」

本書はノンフィクションを多く手掛けている児玉博が書き下ろした作品。過去著者が手掛けたものには堤清二、宇野康秀、西田厚聰、國重惇史など名の知れた財界人のものが多い…

ブックレビュー「奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか」

2023年5月に五類に移行した新型コロナウイルス感染症法上の扱いだが、日本で新型コロナウイルスが広がり始めた2020年初頭からの3年余りの間、奔走した専門家たちがいた。 …

ブックレビュー「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」

私が著者のブレイディみかこ氏を知ったのは2019年作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が評判になったからだった。同書はまだ読んでいないのだが、本書はタイ…

ブックレビュー「言語学バーリ・トゥード~Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか」

ブックレビュー「言語学バーリ・トゥード~Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか」

人事コンサルティングを生業にしていることもあって、「無意識のバイアス」についてのワークショップをファシリテーションすることもある。そこでは「インクルーシブなリーダーシップを発揮するにはまずは自らのバイアスを認識すべきだ」、などと偉そうに言っているのだが、今回本書を読んで、改めて自らのバイアスに気づかされた。

というのも、本書を読み進めていたところ、「昭和生まれのプロレス好き」であり、また「言いた

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ブックレビュー「社会学をはじめる~複雑さを生きる技法」

ブックレビュー「社会学をはじめる~複雑さを生きる技法」

今回この本を手に取ったのは、SNS上で著者自身が推薦していたのがキッカケだったと記憶しているが、結果的にわたしの経営人事コンサルタント業務上大変示唆に富んだものだった。

この「ちくまプリマー新書」というのはヤングアダルトをターゲットとした新書だそうで、大変読みやすくわかりやすい。従って読むのに時間がかからない。それでいながらも要点が頭に入ってきやすい。

まず社会学とは何か。

そして科学との対

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ブックレビュー「障害者支援員もやもや日記~当年78歳、今日も夜勤で、施設見回ります」

ブックレビュー「障害者支援員もやもや日記~当年78歳、今日も夜勤で、施設見回ります」

初めて「日記シリーズ」を読んでみた。以前からこのシリーズは日経新聞の広告でそのイラストが異彩を放っていたため興味があったのだが、「障害者支援員」テーマとなると、日常的にコンタクトのある職業の話でもあるので読んでみることにした。

この「日記シリーズ」の発行者は三五館シンシャという会社で、倒産した三五館の社員だったロスジェネ世代の中野長武氏が2017年に設立し、社員は中野氏ただ一人という零細企業だ。

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ベスト・オブ・バッドフィンガー

ベスト・オブ・バッドフィンガー

今年の7月31日に発売されたCDJournal別冊の”…and The Beatles" シリーズの第三弾はBadfinger。

Bandfingerは故松村雄策さん、そして”No Matter What”をCoverしたJerryfishの影響で公式全アルバムとBiograhy本の”Without You-The Tragic Story of Badfinger”を持っているほど一時は熱狂し

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レコード/CD棚を総ざらえしデーターベース化...第一弾ついに完了

レコード/CD棚を総ざらえしデーターベース化...第一弾ついに完了

昔は絶対そうなりたくないものだな、と思っていたのだが、この年齢になると同じモノを二度買ってしまうことがある。

ここ数年で記憶している範囲で言うと、雑誌Brutusの「特集松本隆」を二度購入、The Crusadersの中古LPレコード”Standing Tall”もまた二度購入してしまった。前者は姉に贈呈することでお茶を濁したが、後者は見せしめ(?)のため、まだ部屋にある。

正直お小遣いの範囲

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ブックレビュー「世界は経営でできている」

ブックレビュー「世界は経営でできている」

当たり前の話で恐縮だが、この数日間あまりにも暑い。

昨日はオンライン・ワークショップの仕事があったので、日中はずっとエアコンの効いた部屋の中で一人デスクに座って画面に向かって声を上げていた。

ずっと家の中にいると、どうしても運動不足になるのでYouTubeで14日間チャレンジ2をやるのだが、流石に外の空気も吸いたくなって出かける。と言っても、アスファルトの上を歩くのは不快なので、家から車で涼し

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ブックレビュー「NETFLIX の最強人事戦略 自由と責任の文化を築く」

ブックレビュー「NETFLIX の最強人事戦略 自由と責任の文化を築く」

一時サブスク契約の急減に悩まされたNetflixだが、広告付きプランが3割増と好調で4~6月期は売上高ペースで過去最高を更新、44%増益、と報じられている。

本書は元々2009年にNetflixの共同創業者・会長兼CEOのReed Hastingsが”Netflix Culture:Freedom and Responsibility”と題したSlide Deckを外部にも公開したことを端に発し

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ブックレビュー「ハウリングの音が聴こえる」

ブックレビュー「ハウリングの音が聴こえる」

2月の「鑑識レコード倶楽部」以来の音楽関連本ブックレビューになる。松村雄策氏については亡くなられた昨年の「僕の樹には誰もいない」のブックレビュー以来だ。

前回の「僕の樹には誰もいない」が最後の著作になるだろうと思っていたので、本書の発刊には驚いたが、今回も米田郷之氏による発掘で、「小説すばる」に2014年4月号から4年間にわたって掲載された同名エッセイ44回分を全て収録したものだ。

前作につい

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ブックレビュー「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」

ブックレビュー「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」

以前にも触れたようにDE&I(”Diversity, Equity and Inclusion)という領域はまだまだ世界的にも開拓途中の分野なので、その進展情報について都度Updateが必要な分野だと認識している。

そもそも20年前だとDiversityと言っていたのが、D&Iになり今やDE&Iになっているのがその証左と言えるだろう。

5年ほど前にも本書の主題であるマイクロアグレッションという

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ブックレビュー「多様性の科学」

ブックレビュー「多様性の科学」

本書のタイトルは「多様性の科学-複数の視点で問題を解決する組織」だが、原題は”Rebel Ideas-The Power of Diverse Thinking"。性別、人種、年齢、信仰などの人口統計学的多様性という切り口に加え、異なるモノの見方・考え方(すわなち認知的多様性)を持つことで個人や組織がこれまでの因習的考え方に反逆し、イノベーションを起こすことを意味する。

本書ではまず認知的多様性

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ブックレビュー「みんな水の中」

ブックレビュー「みんな水の中」

先にご紹介した「普通という異常 健常発達という病」に続いて、こちらも発達障害者による当事者本だ。

著者の横道誠氏は京都府立大学文学部国際交流学科(ドイツ言語文化)の准教授で、40歳の頃に仕事を休職したことをきっかけに発達障害の診断を受け、その後発達障害に関する書物を読み、また現在は余暇を「発達仲間」との交流や自助グループの運営に充てている方だ。

著者によると「本書に書いていることは、私という唯

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ブックレビュー「普通という異常 健常発達という病」

ブックレビュー「普通という異常 健常発達という病」

本書を知ったのは日経新聞で本年4月13日に「発達障害、多様な実態 広範な濫用には問題も」という記事の中で本書と「発達障害大全」、「みんな水の中」が紹介されていたからだ。

本書は「みんな水の中」と同様に当事者本であり、精神科医の斎藤環氏により「定型発達者も「ニューロティピカル」という病理を持つのではないかと主張する。それは例えば、他者の「いいね」(=まなざし)に束縛されやすい病理であり、それを抜け

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ブックレビュー「自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠」

ブックレビュー「自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠」

本書は2月5日にブックレビュー「人新世の「資本論」」をUpした「人新世の「資本論」」への反論本である。

こちらは従来の資本主義を徹底的に擁護する立場にあるだけに至って論旨はシンプルだ。

著者の基本的な主張は、コミュニズム、社会主義はすべて全体主義に陥ったことは歴史の事実であり、資本主義との優劣ははっきりしている、したがって「「人新世」の資本論」が主張する脱成長コミュニズムは民主主義と相いれるは

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ブックレビュー「トヨタ中国の怪物 豊田章男を社長にした男」

ブックレビュー「トヨタ中国の怪物 豊田章男を社長にした男」

本書はノンフィクションを多く手掛けている児玉博が書き下ろした作品。過去著者が手掛けたものには堤清二、宇野康秀、西田厚聰、國重惇史など名の知れた財界人のものが多いが、本書は一般的には知られていない服部悦雄を描いたものだ。

タイトルは「中国の怪物」と潜在読者の目を惹くものになっているが、内容の前半は服部氏が27歳まで滞在した中国での悲惨な経験を綴り、後半は運よく日本に帰国し、偶然入社したトヨタで伝説

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ブックレビュー「奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか」

ブックレビュー「奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか」

2023年5月に五類に移行した新型コロナウイルス感染症法上の扱いだが、日本で新型コロナウイルスが広がり始めた2020年初頭からの3年余りの間、奔走した専門家たちがいた。

その中でも、必要なら専門家の枠を越え一歩も二歩も前に出ることを厭わず、巧みなコミュニケーション能力を発揮した尾身茂が、首相官邸で岸田文雄氏とおこなった最後の面談はわずか15分だった。

英国で尾身と同様の立場である主席科学顧問の

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ブックレビュー「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」

ブックレビュー「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」

私が著者のブレイディみかこ氏を知ったのは2019年作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が評判になったからだった。同書はまだ読んでいないのだが、本書はタイトルからしてPunk精神を感じたのでこちらを先に手に取ることとした。

著者は1965年生まれなので私と同世代と言って良く、日本在住時からPunk Music、特にJohnny Lydonに影響を受けたらしい。

著者は、福岡県立修猷館

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