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パンドーラーの池の底

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出逢った素敵な物語。
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#詩

セルゲイの遺書

セルゲイの遺書

この世界には二通りの人間がいる
星を産む者と星を食む者だ

欄干のない橋のような人生を
それでも懸命に歩き続けた君の
震える背中を遊び半分で押した
白々しい者たちへ
僕が贈るべきものとは何なのか
夜空に星が飾られる夜には
いつも考えていたんだ

(死に場所を探すために彷徨う)なんて
どこでくたばっても地球の上だろ
僕はあらゆる手段でそう伝えたけれど
それは君が生きる言い訳にはならなかった

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《かぐやかぐや》詩で綴る小さな物語

《かぐやかぐや》詩で綴る小さな物語

夜空に浮かぶまんまるなお月さま

孤独な月のうさぎはひとりの娘と仲良くなった

美しさゆえの妬みなのか

友すらいない娘はうさぎと話すのを楽しみにした

互いの打ち明け話が尽きてきて

ある時うさぎは下界を見下ろし呟いた

娘よ娘わたしは一度不老不死の薬を作ってみたい

そのためにはどうしても

高価な石のつぶてを手に入れたいのだ

かわいそうなうさぎの頼みとあれば

とってお

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あ

思考より言葉のほうがよほど賢しく、意味だけとなった残骸は容易く人間を支配する。

本能よりも哲学的なものは、まだこの世界に存在を確認されていない。

パラレルパラソルp??「世界の解剖法」より

(生まれ変わりの有無、その可否については未確認、天国に問い合わせ中です)

──急停車します、ご注意下さい。ところで、この世界に絶対はないのかな。

少なくとも、言葉には意味はない。

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ペン先

ペン先

ペン先を舐めながら
サディスティックな作家が言うには
お前が傷つくのは筋違いだ、と

切り捨ててくれれば良いのだ
恋にもなれなかった何かは
最早この季節を持て余している

なおもその作家は言う
暑さに融解する詩心には必ず
裁断を請求する機能が備わっている、と

濡れたペン先が震えている
緋色の原稿用紙が真夏の都会に
燃えている
燃えている

越えるには覚悟が必要だ
照りつける嫉妬を睨み返せ

誰が

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「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

彼は優しい物語の読みすぎで
思考が見事に崩壊したらしい
目の前に転がる現実との乖離に
ごめんなさい。とだけ呟いて

私がようやく彼を訪ねると
白い部屋に紫陽花が飾られていたので
「梅雨ですものね」と言うと
「ごめんなさい」。

ランチの時間になったので
持ってきたサンドイッチを差し出し
「トマトはお好きでしたよね」と言うと
「ごめんなさい」。

それからボードレールの読み聞かせをしても

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赤が足りない

赤が足りない

夕闇の中で
一面の彼岸花畑に火をつけた
画家の供述記録より

「赤が足りなかった。
圧倒的に赤が足りなかった。
彼岸花の分際で、
中には白いものさえあった。

太陽が赤いなんていつ誰が決めた?
どう見ても赤くないじゃないか。
天気予報の表示に騙されてるな。

問題は彼岸花畑だ。
それを構成すべき一本一本だ。
奴らには赤が足りない。
もっときちんと正しく赤ければ
あり合わせの絵の具で事足りた

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白の紫陽花

白の紫陽花

白い紫陽花を見つけたので
可哀想だと思ってもぎました
咲いていても甲斐がないと
そう教えられたものですから

私の赤で良ければあげますが
傘の意味がわからなくて
さして、みました

白い紫陽花はまだ咲いていました
雨雲を嗤うように真綿のように
気高く図々しくありました
憎むならこれだと確信しました

私の青で良ければ差し出しますが
victimの意味を辞書で引いて
堕ちて、みました

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詩

なにもかも割れて聴こえ

螺旋階段を一気に下るような風圧のバランス
右手だけが頼りに下る

時より光が目の前を走り過ぎ

再び嫌なツンとした臭いに包まれる

誰かに石を投げられて、

沸き出るような 温かい 悪口 批判

なにもかもが割れる世界で唯一キツく
縛られる心臓

これ以上は上がってこない
私のカイブツは、あがってこれない

だって私の体は既に動かない
叫び声すら、届かないまま

なにも響

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『詩人の朝』

『詩人の朝』

確かに確かだ
ボクの本棚には真っ白い食パンが並んでいる
切り揃えられているそれを一冊抜き取ってみたまえ
どうにも香ばしい薫りが鼻腔をくすぐるだろう

引き出しに敷き詰めた珈琲豆から
弾きたて珈琲を優雅に奏で、芳醇に味わう朝
詩人の暮らしというのはどこかしら
かかとが浮いてるものさ

猫と自転車はセットだが
今は二人とも家出している
ニヤニヤしてしまうのを我慢しながら
チーズとバター味の喧嘩をして

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『こころ』

『こころ』

心はどこまで広がれると思う?
心はどこまで深くなれると思う?
心はどこまで輝けると思う?
心はどこまで悲しくなれると思う?
心はどこまで黒くなれると思う?
心はどこまで強くなれると思う?

こたえは、どこまでも、だ。
心は、命そのものだから。

あとは君が、心をどうしたいかだ。

『僕と金魚と星降る夜と』

『僕と金魚と星降る夜と』

大のクジラが二足歩行で歩いているのだから
ワニだって二足歩行で歩いていい。
こんな星降る夜なら特に。

口をあけて
星を食べると
金平糖のように甘い味がした。

霜の降りた道に
静かにバスが停まり、
魚たちが降りたり乗ったり
僕も乗らなきゃいけないはずなのに
体が動かない。

バスが去ってゆく。
赤いテールランプが峠の向こうにかすんで消える。
金縛りがとけて走り出す。
駆けても駆けても景色は同じ。

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十分詩 黒

ボタンをおすと
目の前のせんぷうきが
くるくるまわって
上司へ風を送った

上司はまだまだ足りなかったようで
「中」のボタンを押した
目の前のせんぷうきが
くるくるくるまわって
上司へ風を送った

上司はまだまだまだ足りなかったようで
「強」のボタンを押した
目の前のせんぷうきが
くるくるくるくるまわって
上司へ風を送った

しかしせんぷうきも
あんまり回り続けたから
疲れてしまったようで
「強」

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オリジナル般若心経より一万倍威力のある般若心経エッセンス意訳詩

観音さまがね。
ブッダの瞑想をしていたときにね。
この世は、ゆめ、まぼろし~、どんだけ~と、きづいてね。
すべての苦しみから、解放されたんだ。

あなたも、すべての苦しみから、解放されたい?
そうしたいなら、つぎのじゅもんを、唱えるといいと思うよ。
ぎゃーてーぎゃーてー、はらぎゃーてー、はらそーぎゃーてー、ぼうじそわかー。
すべての苦しみから、解放されるよ、きっと。

ぎゃーてーぎゃーてー、はらぎ

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「Newひきこもり村。のうた」

ひきこもっている人も
そとにはでれる人も
はたらいてはいる人も

だれもがはなせる居場所
Newひきこもり村。

悲しんでいる人も
落ちこんでいる人も
追いつめられている人も
今にやすらげる居場所
Newひきこもり村。

今にやすらげる居場所
Newひきこもり村。