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白の紫陽花

白い紫陽花を見つけたので
可哀想だと思ってもぎました
咲いていても甲斐がないと
そう教えられたものですから

私の赤で良ければあげますが
傘の意味がわからなくて
さして、みました

白い紫陽花はまだ咲いていました
雨雲を嗤うように真綿のように
気高く図々しくありました
憎むならこれだと確信しました

私の青で良ければ差し出しますが
victimの意味を辞書で引いて
堕ちて、みました

紫陽花は咲っている
人々が傘を失おうと
紫陽花は咲っている
人々の生死を問わず

私の脳幹にカタツムリが
そっと棲みはじめました
常時ご機嫌を伺いながら
平穏を装う日々が流れて

気がついたら私も咲っていました
不可逆なのは時間と海馬
そんな大事なことを
誰も仕込んじゃくれなかったね

白い紫陽花が
紫に染まりました
私の赤と青で

異口同音に「きれいだね」、
それは私への警告ですか?
ありがとう。

白い紫陽花が揺れている
何も知らない証として

紫の紫陽花が蔓延っている
全て受け入れた証として

開き直るのなら雨の夜が良いよ
カタツムリがそう言うものだから
水たまりを蹴って駆け出した街に
私の顔がないのは何故でしょう

地面に落ちた白の紫陽花が
雫を反射して炯炯と
行き過ぎる人々を睨んでいる

私はその光景を

過去

と名付けました

#詩 #現代詩 #文縁の友

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