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#連載小説
<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<25>
晴太の友達 綾を幼稚園に送った後、宮子と晴太は近くの公園で遊ぶことが多い。
天気も良いし、気温も心地よい。四月の陽気はそのまま家に向かわせない何かがあった。
「晴太、前見て、まえ」
駆けながら後ろを振り返った晴太に、宮子は声をかけた。その瞬間に、晴太は転んだ。
「あー、ほらー」
宮子が走る。晴太はガバッと起き上がり、地面に座り込んだ。手を見て、膝を見て、少し血が滲んでいることを確認してから目
<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<24>
逃げることを我慢しない『幼稚園はとっても楽しくって』
綾はそう考えていた。
『でも』
しかしそうも考える。
『チチやハハと一緒にいれないのは寂しいな』
今日もハハと手をつなぎながら幼稚園への道を歩む。
「今日は何して遊ぶの?」
宮子が綾に問いかける。
「んーとね、優吾くんと滑り台」
答える綾はにこやかだ。しかし、手には力がこもった。
離れたくない、と体の芯からムズムズとしたものがあふれ
<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<23>
第三章 綾 入園式 暖かい空気に、綾は大きなあくびを一つ、した。
「眠い?」
問いかける母に、綾は首を振って返事をする。
「んーん、大丈夫」
お気に入りの黄色い登園帽に、紺色の制服、新品の一張羅がほのかに香り、誇らしい。
春の街路は色とりどりだ。桜のピンク、空の青、子供たちの黄色い声、それらが綾の心を浮き立たせていた。
「チチ、ハハ、早くいこーよ」
綾は両手を引っ張る。そこには大好きな父親
<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<21>
猫についていく 公園からの帰りに、猫を見つけた。
「あ、にゃあだ」
綾は猫のことを「にゃあ」と呼ぶ。慌てて近づいても逃げられることを知っている彼女は、猫を刺激しないようにそっと近づいていく。なるべく視線を下げるようにして、屈んで、よちよちと歩き、声を出さないで。
猫は敵意が無いことを分かっているのか、それともただ人懐こいだけなのか、綾が近づいても逃げることなく待っていた。
「にゃー」
猫が鳴
<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<19>
再び、日常 宮子も晴太も家に戻ってきた。
ベビーベッドは綾のおさがり、おくるみとかは新調、哺乳瓶は使い回しだけど、乳首は買い直した。サイズ小さいのとか無かったからね。
おむつも新生児用は買わないとだし、布団も綾がまだ小さいのを使っているから新しく買い足した。
あ、おむつは早速おむつケーキ送ってくれた友人がいたので非常に助かりました。
そんな感じで数日は準備や足りないものを揃えるのに忙しく、