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持続不可能な社会をどう生きるか

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「地球はすでに限界を超えている」と叫ばれる中、私たち日本人の意識や社会は驚くほど変わっていない。なぜ意識が変わらないのか、社会はどんな姿を目指すべきなのかについて、環境・経済・哲… もっと読む
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No.0|『持続不可能な社会をどう生きるか』を書いたワケ

No.0|『持続不可能な社会をどう生きるか』を書いたワケ

Prologue1972年にローマクラブが『成長の限界』を発表しました。「地球の資源は有限であり、経済は無限に成長することはできない」、そう発表された50年経った後も、私達、特に日本人の意識は恐ろしいほどに楽観的で、関心を持とうとしません。

現在生態系はすさまじい速度で破壊されています。気候変動——最近は気候危機と呼ばれますが、将来の危機は過少化され、事なかれ主義のモラルハザードが起こっています

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No.12|物質的な豊かさを乗り越えて

No.12|物質的な豊かさを乗り越えて

資本税とベーシックインカムの導入(No.11参照)は、格差を縮め、より平等な社会に変わる転機に成ることを紹介した。労働時間が減り、競争から解放され、互いを思いやるゆとりが生まれる。かつてのように広告に踊らされて、無駄なものを買うということが必要なくなる。無駄なものを買わなければ、長時間働く必要もない。長時間働かなければ、ストレスがたまることもない。モノは減っても―—むしろ減ることで、今よりずっと自

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No.11|ポスト資本主義はどうあるべきか?

No.11|ポスト資本主義はどうあるべきか?

No.1~No.10にかけて、様々な日本の課題を扱った。欲望渦巻く資本主義の闇、広がり続ける資産格差と財政規律の緩み、急速に進む環境破壊と気候変動の脅威、加速する生物の大量絶滅、そしてそれらのリスクが分かっていても個々人の努力や選択では回避できない袋小路にあることをご紹介した。

事実を知っても何も変えられない、そんな無力感と不安を感じ、社会の歯車を演じ続けるのはあまりに残酷なストーリーだ。私たち

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No.10|資本主義という願望機の欠陥 - 後編

No.10|資本主義という願望機の欠陥 - 後編

前編で紹介した通り、資本主義は人の願望を原動力に発展してきた。その中で、普遍的かつ強力なものとして、お金を増やしたいというありふれた欲望がある。

大抵が一度は願ったことがあるのではないだろうか。利子だけで生活できたらどれだけ幸せだろうかと。大金持ちになれば退屈な労働から解放されて、自由に生きることができるのだ。「お金がたくさん欲しいならば、まずはお金を貯めて投資に回しなさい」、と親切な経済学者は

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No.9|資本主義という願望機の欠陥 - 前編

No.9|資本主義という願望機の欠陥 - 前編

資本主義の原則は、他者のニーズに応えることで報酬を得るシステムだ。「より良いものを、より安く、より早く」をモットーに、資本家間・労働者間が互いにしのぎを削り合うことによって技術を高めた結果、今のような物質的に豊かな社会を築くことができた。

この自由な経済は、多くの人の願いを叶えてきた一方で、重大なシステムの欠陥も露呈した。それは、「いつまでも競争が終わらず、しかも競争が過酷になり続ける」という欠

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No.8|国債という名の病 - 後編

No.8|国債という名の病 - 後編

前編にて、経済成長による自然増収では財政再建は難しいことを述べた。そもそも景気・不景気は財政規律と無関係であり、そのような捉え方自体が問題である。

国債の本質的な問題は、①隠れたインフレの進行、②資産格差の拡大、③世代間不公平の拡大にある。順を追って説明していこう。

まず確認すべきとても大事な事実が、「政府が借金することで、誰かの資産が増える」ことである。政府が国債を発行するということは、市場

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No.7|国債という名の病 - 前編

No.7|国債という名の病 - 前編

今やあらゆるものがお金に換算されている。お金なしに生活が成り立たない。日本の財政状況は、あらゆる日本人の人生を左右する重要事項にも関わらず、あまりに楽観的に解釈され、かつてないほど状況が悪化していることは気づかれていない。一体何が起こっているのだろうか?

①現在の日本の財政状況日本の財政は見てくれからして相当に悪い。次のグラフは歳出(一般会計歳出)と歳入(一般会計税収)の推移を示したものである。

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No.6|気候変動は何を招くのか?

No.6|気候変動は何を招くのか?

今や将来の地球環境を正しく知っておくことは,リスク管理の上でとても重要なことだ.何が起こるのかを理解していなければ、何をすべきなのかも分からない。

まず、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書(2020年版)から,世界のリーダーが考えている将来リスクを示そう。

この結果によると、"気候変動"や"生物多様性の喪失"などが上位に上がっており、世界のリーダー達が強い危機意識を持っていることが読み

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No.5|私たちはどうして行き過ぎてしまうのか?(暴走・衰弱のメカニズム)

No.5|私たちはどうして行き過ぎてしまうのか?(暴走・衰弱のメカニズム)

私たちは"宿命的に"、悪い結果が予想できていてもなかなか行動を変えられない生き物である。

経済格差、財政問題、少子高齢化、地球環境問題・・・、様々な問題がクローズアップされている中でも意識が追い付いていない。問題は絶えず後送りされている。

なぜ行動を変えられないのか、その原因のいくつかをシステム的思考に基づいて紹介していきたい。

①競争原理が内在する暴走私たちは、競争を好意的に捉えている。競

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No.4|なぜ環境破壊に対する感じ方がこれほど冷淡になったのか?

No.4|なぜ環境破壊に対する感じ方がこれほど冷淡になったのか?

前章で、"世界は自然の恩恵で回っているにも関わらず、それが危機に瀕している"ことを紹介した。しかし、自然保護の大切さをいくら力説されたとしても、どうしても違和感が拭えない方もいるだろう。自然破壊と言っても、まるで遠い月の国のお話のようで、頭では理解できたとしても腹落ちしない。その背景には何があるのだろうか?

①自然からの断絶一つ目の理由は、私たちの生活の大部分が自然から断絶されてしまったことによ

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No.3|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 後編

No.3|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 後編

学び続けることにもう一つ重要な意味を付け足すならば、バイアスに囚われずに思考するためだ。偏った見方をしていては、正しく事実を捉え、生産的な議論をすることができない。

人はそれぞれ、独自に培った色メガネを使って世界を認識している。世界は情報で溢れかえっており、全てを処理することは土台不可能で、普段私たちは欲しいと思う情報だけを抜き取ることで効率的に生きることができる。逆に考えると、見たいと思わない

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No.2|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 前編

No.2|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 前編

子供の時も、大人になってからも、好きでもないことを無理やり学ばされる時がある。出された宿題にうんざりし、この勉強に何の意味があるのかと首を傾げたくなることもある。なぜ私たちは苦労してでも「学ぶべき」なのだろうか?

調べれば、こういった答えが出てくるだろう。

・生きるために
・成長するために
・より良い生活を送るために
・好きな職業に就くために
・幸福になるために
・だまされないために
・危険を

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No.1|「社会や将来に不安を感じるということが正常な感覚である」ということ

No.1|「社会や将来に不安を感じるということが正常な感覚である」ということ

社会や将来にどうしようもない不安を抱えていたりしないだろうか?辺りを見渡せば、とても深刻で厄介な問題ばかりだ。

・膨れ上がる日本の財政赤字
・加速的に深刻化する少子高齢化
・地球史上類を見ない生物の大量絶滅
・歯止めがかからない気候変動

先行きがとても不透明で混沌とした中、追い打ちをかけるようにコロナウイルスによるパンデミックが発生し、2020年4月に緊急事態宣言が出された。

突然外出の自粛

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