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No.1|「社会や将来に不安を感じるということが正常な感覚である」ということ

社会や将来にどうしようもない不安を抱えていたりしないだろうか?辺りを見渡せば、とても深刻で厄介な問題ばかりだ。

・膨れ上がる日本の財政赤字
・加速的に深刻化する少子高齢化
・地球史上類を見ない生物の大量絶滅
・歯止めがかからない気候変動

先行きがとても不透明で混沌とした中、追い打ちをかけるようにコロナウイルスによるパンデミックが発生し、2020年4月に緊急事態宣言が出された。

突然外出の自粛が求められ、企業は大きな損害を被った。自粛を求められる一方で国からの補償は少なく、多くの企業が徐々に倒産に追いやられている。並行して少なくない従業員・パート・アルバイトが働き場を失い、困窮に追い込まれている。

そのような状況下で一刻も早くコロナウイルスとの戦いに打ち勝ち、コロナ前の以前の穏やかな日常に戻りたいと多くの人が願っている。経済的・精神的に追い込まれて,そう感じられるのは痛いほど分かる。

一方で、ただ”単純に元に戻る”ことを願うことは冷静に考えればかなりまずいことが分かる。コロナ以前からの現代社会構造そのものがパンデミックの発生原因であったからだ。

人類史上類を見ない高水準にまで人口が増え、大量の人が世界中を飛行機で飛び回り、都市に集中して住むようになった。これらの要因がパンデミックの発生確率を上げ、感染の拡大を加速し、今の事態を引き起こしている。

かつての社会構造が維持される限り、パンデミックは今後何度も繰り返され、そのたびに社会に混乱を引き起こす可能性がある。より悪性が強く、潜伏期間の長いウイルスが登場すれば、今の比にならない被害が発生する。そもそもパンデミックを抜きにしても、冒頭に挙げていた問題は着実に社会を蝕んでおり、いつどのように牙をむくか分からない状況だった。これは問題を後回しにし続けてきた私達に対する、自然界からの警告とも解釈できる。

日本の人口構成は歪み、財政はかなり不安定な状況になっている。安定した気候、豊かな自然は失いつつあり、人類の生存にとって過酷な環境に変わろうとしている。真面目な人ほどそんな当たり前に向き合い、"いつまでも現実を見ない社会"に不安を覚える。

臆病であることは本当に大切なことなのだ。それがないとリスクを過少評価してしまう。全てが技術で解決すると楽観的に信じ、その先を考えることをやめてしてしまうことは、極めて危ない。

残念なことに、日本では臆病であることは歓迎されないし、正しく評価もされない。遠い先にまで思いを馳せ、将来の世代や自然を慈しみ、確固たるビジョンや信念を持っている人は、相当稀な存在だろう。不安に感じていても、身近に相談できる人がおらず、疑問に答えてくれる人も、真剣に悩んでいる人も周りにいない。義務教育で解決策を習うわけでもない。自分一人、3R(リデュース、リユース、リサイクル)や節電を実践することで、環境問題が解決するわけでもない。今の子供は、見習うべき大人が近くにおらず、心のケアも受けられず、無茶な期待と後回しのツケだけを押し付けられている。そうなれば、気持ちを押し殺して現実を見ないようにするか、社会的に孤立して人間不信に陥ってしまう。正直者が馬鹿を見て、懸命に努力しても報われず、人知れず燃え尽きてしまうのは、あまりに悲しいことだ。

これは精神科に助けを求めても手の施しようがない。せいぜい自分のコントロールできること、できないことを区別して、できる範囲で取り組んで自分を納得させようということになってしまう。けれども、そうやって小さな行為で納得してしまったら、急速に進む問題の悪化に追いつけない。安易に妥協点を見つけて早々に諦めることが、その問題を後送りにして解決を一層困難にし、結果的に自責の念を強めてしまう。

『人々は苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ。何ということだ。』(引用元

これはスウェーデンの環境活動家であるグレタさんの言葉だ。彼女は学校をストライキして、地球環境問題の解決を訴えている。もはや、ある意味悠長に学校に行っている場合ではないほどに事態は深刻だ。後世に途方もないツケを遺そうとしている。将来の子や孫の世代に恨まれる生き方は、例え物質的に豊かで個人的に成功した生活を送れたとしても、決して誇れるものにはならない。

これらの問題は単なる技術的な問いではなく、経済的、哲学的な要素と密接に関わっている。結局のところ、”人はどう生きるべきか”という選択の物語である。

なぜ日本人は問題に無関心で、将来のリスクを過小評価するのか、なぜ日本の財政赤字は増大し、社会格差が拡大し続けているのか、どのような社会を目指すべきなのか、今何を学び、どう思考し、行動すべきなのか。これらの問いに向き合い、その根本的な原因についてまとめてきたことを拙いながらも披露していこうと思う。


▼マガジン(全12話)

twitter:kiki@kiki_project
note:kiki(持続不可能な社会への警鐘者)

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