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特定技能外国人制度の動向について-制度の柔軟性からの小売業と製造業の調整

はじめに

 特定技能外国人制度の運用においては、経済や社会の変化に応じて柔軟に対応する必要があります。
 産業の現場でのDX化、自動化が進いながらも、人手不足が社会的な問題となっている中で、制度の対象範囲を拡大し、より多くの産業で外国人労働者の受け入れを可能にすることで、日本経済の持続可能な成長を支援することが求められています。

 産業各分野からの要望もあり、特定技能制度の対象範囲を見直し、スーパーマーケットなどの小売業での特定技能外国人の受け入れを可能とする改正が行われました。経済と雇用状況に対処し、外国人労働者が新たな価値を生み出す機会が拡大しています。
 
 小売業である部分の割合が大きいこの産業分野に、どのような具体的な緩和がなされるのか、とても注目しています。

 農水省と出入国在留管理庁からの担当者からの情報では、まだ、明らかにできる状況にないと聴いています。その動向について長くなると思いますが、整理したみたいと思います。

1.食品製造業の重要性

 食品製造業は地域経済において雇用と生産を支える重要な役割を担っています。経済産業省の「令和3年経済センサス」によると、食品製造業の事業所数は金属製品製造業に次いで多く、就業者数では製造業全体の中で第1位を占めています。

 特に、大都市圏と地方の両方で大きな就業者数比率の偏りはなく、製造業全体に占める食品製造業の就業者数比率は、大都市圏で11.1%、それ以外の地域で18.5%となっています。

 また、食品製造業の製造品出荷額は、全国の10道県で第1位、24道府県で第3位に位置しており、令和5年には約39.3兆円の製造品出荷額を記録し、令和10年には約49兆円に達すると予測されています。

2.労働需給の現状

 現在、食品製造業は他の製造業に比べて特に雇用人員不足が深刻です。令和4年度の有効求人倍率は3.11倍で、全産業平均の1.19倍を大きく上回っています。

 さらに、厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和5年6月末時点での欠員率は2.4%に達しています。

 日本銀行の短観では、令和5年9月の食品製造業(中小企業)の雇用人員判断DIはマイナス36と、製造業全般(中小企業)のマイナス21よりも深刻な状況となっています。

3.将来的な人手不足の予測

 令和10年度の製造品出荷額予測と現在の生産性を踏まえると、同年度には約161万人の就業者が必要と推計されています。

 しかし、令和3年1月1日時点での「食料品、飲料・たばこ・飼料製造等」の常用労働者数は約133万人であり、現在のトレンドを考慮すると、令和10年度には約140万人となる見込みです。したがって、令和10年度には約21万人の人手不足が予想されます。

4.食料品スーパーマーケットの人手不足

 食品スーパーマーケットでも人手不足が顕著で、バックヤードでの食品製造に従事する就業者の約3割が不足しています。

 「小売業」における令和5年6月末時点の欠員率は3.0%で、令和4年の売上は約12.1兆円に達し、令和10年には約16.3兆円の売上が見込まれています。
 このため、令和10年度には34万7,000人の就業者が必要とされ、約1万7,000人の不足が予測されています。

5.外国人労働者の受け入れの必要性

 このような状況を背景に、食品製造業や食品スーパーマーケットにおいては、生産性の向上や国内人材の確保に向けた努力が続けられています。

 しかし、目視や手作業が必要な工程も多く、機械化には限界があります。

 また、平成30年の食品衛生法改正により、すべての飲食料品製造業者にHACCPに基づく衛生管理が義務付けられたため、これに対応できる人材の確保が急務となっています。

6.特定技能外国人の受け入れの拡大

 2024年3月29日の閣議決定により、特定技能制度の運用に関する基本方針が変更され、特定技能の受け入れ対象分野が追加されました。これにより、スーパーマーケットなどの小売業での特定技能外国人の受け入れが可能となりました。

 具体的には、特定技能外国人の受け入れが認められる事業所が追加され、食料品スーパーマーケットおよび総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜等の製造が含まれるようになりました。

 また、食品スーパーマーケットや総合スーパーマーケットの食料品部門での食品製造にも外国人労働者が新たに特に求められるようになりました。

 このような法改正により、食品製造業および小売業の人手不足を補うために、即戦力となる外国人労働者の受け入れが進むことが期待されています。        

 特定技能1号および2号の外国人労働者は、必要な技能水準と日本語能力を有していることが求められます。

 これにより、良質で安全な食品を安定的に供給する体制を確保し、日本の食品製造業の持続的な存続・発展を目指します。

7.受け入れ見込数と人材基準

 飲食料品製造業分野における令和6年度からの5年間の受け入れ見込数は最大で13万9,000人とされており、これを令和10年度末までの5年間の受け入れ上限として運用します。
 
 この見込数は、令和6年度からの5年間で21万人程度の人手不足が予想される中、AI・ロボット・IoTなどの先端技術導入による生産性向上や、託児所の整備、高齢者の継続雇用などによる女性・高齢者の労働参加率の増加を考慮してもなお不足すると見込まれる数に基づいています。

8.求められる人材の基準

飲食料品製造業分野で特定技能の在留資格を有する外国人労働者を受け入れる際には、以下の試験に合格した者とします。

  1. 特定技能1号

    • 技能水準
      飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験

    • 日本語能力水準
      国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)、あるいは日本語教育の参照枠のA2相当以上

  2. 特定技能2号

    • 技能水準
      飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験

    • 実務経験
      飲食料品製造業分野で複数の従業員を指導しながら作業を行い、工程を管理する実務経験が必要

 このように、食品製造業における人手不足を解消し、業界の持続的な発展を図るため、外国人労働者の受け入れが緩和調整される注目点となるものです。

 特定技能1号および2号の外国人労働者は、必要な技能水準と日本語能力を有していることが求められます。

 これにより、良質で安全な食品を安定的に供給する体制を確保し、日本の食品製造業の持続的な存続・発展を目指すこととしています。

次回に続きます。

日本は、将来の日本の社会のために、
より良いしくみを構築できるはずです。


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食品製造業および特定技能外国人労働者の受け入れに関する情報が記載されている主なサイトを挙げておきます。

経済産業省

経済センサスのデータや製造業に関する統計情報を提供
経済産業省公式サイト
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531005/20220531005.html

令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531005/20220531005-1.pdf

「令和3年経済センサス-活動調査」の結果(速報)を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20230414_1.html

入国管理局(出入国在留管理庁)

特定技能外国人の受け入れに関する詳細な情報を提供
入国管理局公式サイト

農水省
飲食料品製造業分野における外国人材の受入れ拡大について


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