鈴木一成

アマゾン米国勤務。同社元シニア・テクニカル・プロダクトマネージャー。ハーバード大学MB…

鈴木一成

アマゾン米国勤務。同社元シニア・テクニカル・プロダクトマネージャー。ハーバード大学MBA。2児のパパ。https://productscience.llc/で米国プロダクトマネジメント・新規事業開発の知見を配信。全て個人の見解です

記事一覧

事業を成長させる週次「実験レビュー」のすすめ

「全社で目指すのは、一定時間内でできる実験の数の最大化です。各企画が上手く行くか分からないため、それらを実験する方法があれば、より多くの賭けができます。すなわち…

鈴木一成
11日前
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百戦錬磨のコーチが語る、充実したキャリアの作り方

世の中には、面接の受け方、専門性の身につけ方、チームのマネジメント手法など、場面に応じた実践的な情報は山ほどあります。一方、社会的インパクトを出しながら充実感を…

鈴木一成
2週間前
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シリコンバレー騒然。「創業者モード」って何だ

先週末、米国では「労働者の日」を含む3連休でしたが、土曜深夜に投稿されたある記事が波紋を呼びました。Yコンビネーター共同創業者ポール・グレアムが書いた、「創業者モ…

鈴木一成
3週間前
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誰も語らない、良いビジョンの作り方

組織のリーダーにとって、ビジョン作りは最も大事な仕事の一つです。 ビジョンとは、3~10年後に目指す目的地のこと。私もPMとして実行力が上がるにつれ、「次は大きなビジ…

鈴木一成
3週間前
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半世紀を超えて繰り返されるソフトウェア開発のミスとは

PMが1冊だけソフトウェア開発の本を読むならこれだ、と言われる本がある。なんと半世紀前、1975年に初版が刊行された、「人月の神話」という本だ。著者のフレデリック・ブ…

鈴木一成
1か月前
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プロジェクトの失敗を防ぐ魔法の会議

いくつもプロジェクトを経験してみると、うまく行かないケースはあるものだ。キャパ不足や、チーム間の連携、想定外のトラブル、スコープの見直しなど、色んなパターンがあ…

鈴木一成
1か月前
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ソフトウェアを売るのは誰の仕事?

最近お話させて頂いたエンジニアの方から、「会社が大手企業向けソリューションに注力する中、これまでのプロダクトカンパニーらしさが薄れている」というお悩み相談を頂い…

鈴木一成
2か月前
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意思決定の質とスピードを上げるには

先月、何気なく投稿したツイートに想定外の反響を頂いた。 これをきっかけに購読してくださった方々も多数いらっしゃるので、嬉しい限りだ。 「そういえばこんなのあった…

鈴木一成
2か月前
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イノベーションを起こし続けるための5つの秘訣

最近、日本のプロダクトカンパニーの方々とお話させて頂く際、「汎用的にイノベーションを起こし続ける秘訣は何なのか?」という質問をよく頂くようになった。私がMBA中に米…

鈴木一成
2か月前
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美味しいトマトを収穫するには

夏だ。東京はもう朝から30度を超えると聞く。暑いのは嫌だが、身体を元気にしてくれる日本の美味しい夏野菜が恋しい。帰国の度に、スーパーの野菜や魚の鮮度には驚かされる…

鈴木一成
2か月前
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プロダクト組織の考え方

「ソフトウェアを作る組織は、自身の組織構造そっくりのデザインを世に出してしまう呪縛に囚われる。」 ―メルヴィン・コンウェイ(コンピューター科学者)― これは、ソ…

鈴木一成
2か月前
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ソフトウェア開発:ビジネスパーソンがおさえたい5つのコンセプト

プロジェクトの責任者を務めていたら、急に開発の議論に巻き込まれ、誰が何を言っているのか分からぬままミーティングが終わり、周囲に報告しなければならない。。。そんな…

鈴木一成
3か月前
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うやむやに終わらせない!適切な意思決定を促す、「エスカレーション」の進め方

事業部間の対立が起きて、担当プロジェクトで前に進めなくなってしまったことはないだろうか。プロジェクトの方向性について意見が割れたり、あるいはキャパ不足で必要な協…

鈴木一成
3か月前
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APIの何がそんなに大事なの?

今日は、ソフトウェア開発では避けて通れない「API (Application Programming Interface)」のビジネスにおける重要性について書きたい。 APIとはシステム間の「契約」のこ…

鈴木一成
3か月前
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米国最新AIツール特集

今日は、米国でプロダクト作りに使われているAIツールを紹介したい。 インターネットもスマホ・GPS・通信速度など基本インフラが整ってからUberのようなアプリが登場した…

鈴木一成
4か月前
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世界的テック企業のプロダクト作りを習得する秘訣

世の中を牽引するテック企業は、テクノロジーを活用して、顧客が熱狂し、かつビジネスも成長させるプロダクト作りを熟知している。これを通じ、技術への投資から着実なリタ…

鈴木一成
4か月前
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事業を成長させる週次「実験レビュー」のすすめ

事業を成長させる週次「実験レビュー」のすすめ

「全社で目指すのは、一定時間内でできる実験の数の最大化です。各企画が上手く行くか分からないため、それらを実験する方法があれば、より多くの賭けができます。すなわち、本当に大事なのは、実験コストの削減です。

私達にはWeblabというグループがあり、ウェブサイトのUIで常に実験を行い、どのUIが最も効果的か、実際の使用パターンから統計データを得ています。これは私たちにとって巨大な実験室であり、これら

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百戦錬磨のコーチが語る、充実したキャリアの作り方

百戦錬磨のコーチが語る、充実したキャリアの作り方

世の中には、面接の受け方、専門性の身につけ方、チームのマネジメント手法など、場面に応じた実践的な情報は山ほどあります。一方、社会的インパクトを出しながら充実感を得られるキャリアの歩み方については、意外とあまり情報がありません。

また、個々人から得られるアドバイスの多くは彼らの経験に基づくため、必ずしもアドバイスを受ける側の境遇と合致しないことも多々あります。

そこで、今日は、起業、スタートアッ

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シリコンバレー騒然。「創業者モード」って何だ

シリコンバレー騒然。「創業者モード」って何だ

先週末、米国では「労働者の日」を含む3連休でしたが、土曜深夜に投稿されたある記事が波紋を呼びました。Yコンビネーター共同創業者ポール・グレアムが書いた、「創業者モード」という記事です。

これまでは、「事業の拡大につれ、創業者は『マネージャーモード』(=良い人を雇い、彼らに裁量権を与えるスタイル)に移行しなくてはならない」というのが定説でした。実は、この定説は大間違いだったのではないか、というのが

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誰も語らない、良いビジョンの作り方

誰も語らない、良いビジョンの作り方

組織のリーダーにとって、ビジョン作りは最も大事な仕事の一つです。

ビジョンとは、3~10年後に目指す目的地のこと。私もPMとして実行力が上がるにつれ、「次は大きなビジョンを示してリードするのが課題だね」という指導を上司から受けていました。

その後、全社で目指す動画広告体験のビジョン作りを担当し、一定の成果を上げましたが、良いビジョンの作り方について具体的に書かれた文献の少なさに困惑したのを覚え

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半世紀を超えて繰り返されるソフトウェア開発のミスとは

半世紀を超えて繰り返されるソフトウェア開発のミスとは

PMが1冊だけソフトウェア開発の本を読むならこれだ、と言われる本がある。なんと半世紀前、1975年に初版が刊行された、「人月の神話」という本だ。著者のフレデリック・ブルックスは、「IBMのSystem/360の父」として知られ、同社の超大型開発チームを率いた後、ノースキャロライナ大学でコンピューターサイエンス学科を立ち上げた人物。「人月の神話」で彼は、IBM在籍時に遭遇した問題点を分析し、ソフトウ

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プロジェクトの失敗を防ぐ魔法の会議

プロジェクトの失敗を防ぐ魔法の会議

いくつもプロジェクトを経験してみると、うまく行かないケースはあるものだ。キャパ不足や、チーム間の連携、想定外のトラブル、スコープの見直しなど、色んなパターンがあり得る。そんな時、問題がなぜ起きたか、今後はどうそれを防ぐべきか、メンバー間で振り返りに時間を割き、文章化しておくことが重要だ。読者の皆様もおそらく定期的にこれを行い、学びを蓄積されておられると想像する。

しかし、失敗は誰もしたくないし、

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ソフトウェアを売るのは誰の仕事?

ソフトウェアを売るのは誰の仕事?

最近お話させて頂いたエンジニアの方から、「会社が大手企業向けソリューションに注力する中、これまでのプロダクトカンパニーらしさが薄れている」というお悩み相談を頂いた。私自身も、B2B SaaSプロダクトを担当しながら、顧客がきめ細かなカスタマイズ性を期待する大企業か、なるべく省エネで成果を期待する中小企業かで、PMや営業の役割がこんなに違うんだと驚いたものだ。何があるべき姿なのか、当時は多忙すぎて十

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意思決定の質とスピードを上げるには

意思決定の質とスピードを上げるには

先月、何気なく投稿したツイートに想定外の反響を頂いた。

これをきっかけに購読してくださった方々も多数いらっしゃるので、嬉しい限りだ。

「そういえばこんなのあったな。共有しておこう」ぐらいの気持ちで投稿したので、「何がそんなに刺さったんだろう?」と気になった。ご感想あれば是非伺いたいが、コメントを見るに、日常的に会議の質に頭を悩ませている人が多いように感じた。

とりあえず招集されたけど、何を求

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イノベーションを起こし続けるための5つの秘訣

イノベーションを起こし続けるための5つの秘訣

最近、日本のプロダクトカンパニーの方々とお話させて頂く際、「汎用的にイノベーションを起こし続ける秘訣は何なのか?」という質問をよく頂くようになった。私がMBA中に米国テックの世界に飛び込もうと思ったのも、この疑問が原点だった。

もっとも、永続的にイノベーションを起こすことなど可能なのか、という見方もある。「イノベーションのジレンマ」で知られるクリステンセン教授は、ハーバード大学のクラス「持続的に

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美味しいトマトを収穫するには

美味しいトマトを収穫するには

夏だ。東京はもう朝から30度を超えると聞く。暑いのは嫌だが、身体を元気にしてくれる日本の美味しい夏野菜が恋しい。帰国の度に、スーパーの野菜や魚の鮮度には驚かされる。

農業は日本の一大産業だが、農業を支える従事者は年々減少傾向にあり、その優れたスキルやノウハウ、匠の技とも言える技術をいかに次世代の担い手へと伝承していくかが重要な課題になっている。同時に、若手の新規新規就農者の数は増加しており、若い

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プロダクト組織の考え方

プロダクト組織の考え方

「ソフトウェアを作る組織は、自身の組織構造そっくりのデザインを世に出してしまう呪縛に囚われる。」

―メルヴィン・コンウェイ(コンピューター科学者)―

これは、ソフトウェア組織に属したことのある人なら一度は聞いたことがあるかもしれない、「コンウェイの法則」だ。より平たく言うと「Shipping the org chart」とも言われ、自社の組織図に沿ってプロダクトを構成し、それをそのまま顧客に押

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ソフトウェア開発:ビジネスパーソンがおさえたい5つのコンセプト

ソフトウェア開発:ビジネスパーソンがおさえたい5つのコンセプト

プロジェクトの責任者を務めていたら、急に開発の議論に巻き込まれ、誰が何を言っているのか分からぬままミーティングが終わり、周囲に報告しなければならない。。。そんな冷や汗をかく経験をしたことはあるだろうか。

私はアパレル企業の再生に携わる中、Eコマースサイトの立ち上げや、物流業務の改革など、いくつかの場面でこんな状況に遭遇した。基本的な単語が分からないと、話について行けず、かといって毎度話を遮って「

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うやむやに終わらせない!適切な意思決定を促す、「エスカレーション」の進め方

うやむやに終わらせない!適切な意思決定を促す、「エスカレーション」の進め方

事業部間の対立が起きて、担当プロジェクトで前に進めなくなってしまったことはないだろうか。プロジェクトの方向性について意見が割れたり、あるいはキャパ不足で必要な協力が得られないなど、複数事業部が関わる時は時折避けられないものだ。ここで諦めるのも勿論一つの手だが、客観的に考えてこれは顧客・会社のために良くないと信じ、その会社が自分にとって単なる居場所やATM以上の存在なら、ただ諦めるのも勿体ない。そん

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APIの何がそんなに大事なの?

APIの何がそんなに大事なの?

今日は、ソフトウェア開発では避けて通れない「API (Application Programming Interface)」のビジネスにおける重要性について書きたい。

APIとはシステム間の「契約」のこと。例えばスカイスキャナーで航空券を探すと、「依頼を出したら、フライトの情報をください」という合意に基づき各航空会社のチケットの値段が見られる。(より詳しく知りたい方には、ビジネス+ITやNTTの

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米国最新AIツール特集

米国最新AIツール特集

今日は、米国でプロダクト作りに使われているAIツールを紹介したい。

インターネットもスマホ・GPS・通信速度など基本インフラが整ってからUberのようなアプリが登場したように、AIの世界でもモデルやインフラが進化するにつれ、実現できるアプリケーションがどんどん増えていくと考えられている。「我々はAIに仕事を奪われるのではなく、AIを駆使する人に仕事を奪われる」という見方が定着しつつある中、Cha

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世界的テック企業のプロダクト作りを習得する秘訣

世界的テック企業のプロダクト作りを習得する秘訣

世の中を牽引するテック企業は、テクノロジーを活用して、顧客が熱狂し、かつビジネスも成長させるプロダクト作りを熟知している。これを通じ、技術への投資から着実なリターンも得ている。この働き方を「プロダクト運用モデル」と呼び、どの企業も習得しようと取り組んでいるが、成功させるのは難しい。それは日本の企業のみならず、米国の伝統的企業でもそうなのだ。

読者の中には、プロダクトマネジメントコーチのマーティー

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