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【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第14話

こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
気に入った方は、フォローをしていただけると嬉しいです。


第14話 サンタクロースのような移住希望者?


私の朝の日課。

5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。

まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。

相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。

本日の相談

東京に住む関川と言います。
年齢は70歳です。
妻は亡くなっています。
今度はそちらの町に移住をしたいと思います。
町を案内していただけますか?
また、住むところもご紹介いただけますか?

ごくごく普通のメール内容に思えた。
ただ、「今度は」という一言には引っかかったが。
恐らく、「一度移住をして失敗しているのかもしれない」と思った。

私は早速、返信をし、来週の午後に会うことにした。
朝から飛行機とJRを乗り継いでくるそうである。
最寄り駅に着いたら連絡をいただくことにした。

関川さんとの面会日の朝。
家の前に宅急便のトラックが停まった。

すると、大きな段ボール箱が3個降ろされた。
不思議に思い、送り主を見ると、本日面会予定の関川さんになっている。

恐る恐る開梱をしてみると、3カ所の地域の特産品がぎっしり詰まっていた。

午後になり、関川さんと駅で合流。
早速、送られてきた荷物のことを問いてみる。

「関川さん、今朝、大きな段ボール箱が3個届きましたよ」
「今日お世話になりますので、ぜひ、皆さんで食べてください」

確かに、手土産を持ってこられる方も少なくはない。
しかし、通常は1個である。

「いやいや、関川さん、あんなに沢山頂けませんよ」
「遠慮しないでもらってください」

その後、事務所に到着すると、関川さんに荷物を確認してもらった。
すると、関川さんは荷物の特産品を一つ一つ説明を始めた。

町を案内するどころではなかった。

「関川さん、この3カ所はどういう意味がるのですか」
「ああ、私が住んでいる町の特産品です」
「住んでいるのですか」
「そうそう、空き家を購入してね、住んでいるんです」
「どうして、こんなにたくさんの特産品を贈られたのですか」
「いやいや、それぞれの町にはお世話になっているからねえ」

関川さんは、特産品の販売をする業者ではない。
単に、親切心で、町のPRをしているようである。
それは、楽しそうに特産品を紹介する関川さんの笑顔が語っている。

「関川さん、そろそろ町案内に行きますか」
「ぜひ、この町にも住ませていただけると嬉しいのだけどでね」
「有難うございます」

恐らく、関川さんがこの町にも住むことになれば、この町の特産品をこのようにPRしてもらえるのだろう。

「関川さん。町の案内の途中で、市役所と観光協会をご紹介して良いですか。ぜひ、関川さんからの贈り物を届けたいのです」
「それは構わないよ」

私は送られてきた段ボール箱を3箱、車に積み込むと出発した。
そして、市役所の担当者、観光協会のスタッフに関川さんを紹介し、特産品を有り難く分け合った。

そして、町の様子や数件の空き家を確認したあと、関川さんは帰られた。

その後、2、3度メールをいただいたが、まだこの町には移住をされていない。

私は丸顔でとても笑顔が素敵な関川さんを忘れることはできない。
関川さんのような、喜徳な方も珍しいかもしれません。
そして、関川さんのように、人に感謝をする気持ちを忘れずにいなくてはと思う。
とくに、知らない土地に移住をするのであれば、その地域の方への感謝がとても大切である。
たくさんの人に幸せを与える関川さんは素敵でした。



一期一会

サンタクロースのような関川さんが、たくさんの町で幸せに暮らしていることを祈って・・・

(終わり)


#創作大賞2024 #お仕事小説部門


移住専門FP「移住プランナー」として活動をしています。これまで18年間2500組以上の移住相談に対応をしてきました。ここでは、私の経験からお役に立てる情報を日常的に綴っていきます。「移住」という夢の実現にお役に立てればうれしいです。大阪出身、北海道と鹿児島の3拠点生活中。