見出し画像

イース、雨、現象

降る雨の音のなか、あかりを消せば、部屋のなかで星座を描く待機電力の赤と緑、青。浮かび上がるフレームの向こう側のモニタァの発光。イースのIC音。

こちら側とあちら側を区切るフレーム、それが交差させる夢の世界地図──草原、森、湿地、流れる川にまどろむモンスタァ。方向性はダンジョンへ。

進行せよ。トーチの範囲で見る丸い世界に幻獣たちを見出しながら、雨に囲われた部屋のなかで気を配るのは魔術の値。

買い物なら装備と毒消し草。店を出ると降ってくる雨、かすむ空間を歩いて宮殿に入ればブルーとイエローの彫刻。石像を動かして息が切れ、外に出て快復するなら雨をしのぐ宿の床。

部屋の外の住宅街は空間を埋め尽くす雨に暗く沈み、軒並みは孤立した船を思わせ、往来する人々は雨具により個性を失いながら匿名の世界をつむぐ。部屋のなかになだれ込む雨音と混ざりあうイースのIC音。あふれかえるひかりに、フレームが曖昧になっていく。

フレームは消滅した。神々しいひかりを浴びながら、フレームが消滅したときだけの特権として、そのさなかにCPUの原風景を目撃する。空間はCPUの原風景に埋め尽くされていく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?