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エッセイ

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エッセイをまとめます。
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#旅

目的のない旅と文と僕vol.1

先月のシフトが公休が1つ少なかったということから、突如現れた休日。
僕は今、目的もなく東京は新宿行きの小田急線に乗っている。
どこで降りるかも決めていない。降りたくなったら降りるし、降りろ!と言われたら降りるだろう。
iPhone内の全てのミュージックをシャッフルで流して、どんな曲も受け入れるつもりだ。だってもともと自分が入れたものなのだから。
今流れているのは藤井風の旅路。

目的がないなんて悪

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目的のない旅と文と僕vol.2いーはとーぼ

目的のない旅と文と僕vol.2いーはとーぼ

新宿行き小田急線に揺られながら、新百合ヶ丘あたりで、ふと下北沢で降りようと思った。

サブカル色の強い、この下北沢でぶらぶらと散歩する。古着屋がたくさんあるこの街で服のひとつでも買おうかと思ったが、古着屋に入るとセンター分け、柄シャツの男達が多くて、ギャ、俺は下北沢に溶け込む男ではない。寧ろ苦手だ、そう思った。

すると珈琲、音楽の店いーはとーぼと書かれた看板が目に入り、入ってみることにした。

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目的のない旅と文と僕vol.3キューバシャツ

目的のない旅と文と僕vol.3キューバシャツ

いーはとーぼを出た後、せっかくだから古着を買いたいと思った僕は、古着屋を巡ることにした。

ふと、ああ俺キューバシャツが欲しいなと思った。キューバシャツとはポケットが4つと刺繍が特長的なキューバ生まれのシャツだ。キューバに行ったときに買えばよかったのだが、あのときは極限まで荷物を減らしながらの旅だったので買えなかった。お金も持ってなかったし。
下北沢で買うのはどうなんだろうとも思ったが、またいつか

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目的のない旅と文と僕vol.4ソロネタリウム

下北沢を後にして、池袋に向かう。池袋サンシャインシティの屋上にプラネタリウムがある。梅雨の空模様を無視して、人工的な美しい星空を見たっていいじゃないか。

行く前に、一応「プラネタリウム 男 ひとり」と検索する。案の定、男でひとりでプラネタリウムに行くのは変ですか?という質問があった。別に変じゃないですよという、当たり前といえば当たり前の返事とともに、僕はこんなことで安心を手に入れた。

プラ

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目的のない旅と文と僕vol.5タイショウ

目的のない旅と文と僕vol.5タイショウ

目的のない旅も、いよいよ終わりを迎える。下北沢と池袋に行っただけで旅って言うなよって言われるかもしれないけど、間違いなく旅である。この世のほとんどが旅だ。

小田急線は自分の家の最寄りに戻ってきた。

家の近くに、おんどりという居酒屋がある。以前父と2人でお酒を交わしたことのあるこの居酒屋にもう一度行きたいと思った。

誰もいない店内に入ると、お一人様は断られた。その代わりとなりのめんどりに案内さ

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ドライブ・レンタル・カー

ドライブ・レンタル・カー

これは、かの有名な偉人の言葉でもなんでもない。僕自身の愛の見解だ。
僕が僕に言った言葉だから、柔軟にこの言葉の意味を考えることができる。僕は愛を恋人や家族に対するものばかりと捉えていた気がする。例えば友情はどうなのだろう。なぜか友情だけはどこか永遠が約束された気になっていて、愛はそこにないと思っていた。

レンタカーで渋滞中の国道を走る。土曜日の国道はアリの行列のようで、ごっつんこしたらどうしよう

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キューバ一人旅で感じた6つのこと

キューバ一人旅で感じた6つのこと

絶賛キューバエッセイを連載中だが、もう廃れてしまったインスタアカウントの過去に投稿した文たちが意外にもよかったので、noteにも投稿しようと思う。

キューバ一人旅で感じた6つのこと

1.コミュニケーションの基本は目とテンションにある

英語もほとんど少しだけ、スペイン語は挨拶レベルでまったくわからなかったが、そのおかげで人の目を見て、話を聞いたり、会話することが当たり前になった。

日本ではよ

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僕対キューバ人の2時間で

僕対キューバ人の2時間で

対人間を深く味わった瞬間は何度もあるのだろうけど、心と心の目が合って対面した人間はそこまで多くない。

親との喧嘩だとか。

恋人との甘い夜だとか。

チームメイトとの試合だとか。

そして、その相手の中に見ず知らずの人間もいたという人生は、自分でも予想外である。

その男は5年前キューバで1人旅をしていたときに突然現れた。

首都ハバナのとある通りに座って休んでいたら、まるで僕が絶世の美人である

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この世界は目の前に

この世界は目の前に

テレビの中の世界。

インターネットの中の世界。

Twitter、Instagram、あらゆるSNSの世界。

僕たちが生きている世界は、広くて、知らないことが多くて、羨ましかったり、恐れたりする。

そして、インターネットを利用することで僕たちは目の前にない世界で生きることができる。それらから間違いなく、僕たちは素晴らしいものを享受してきた。

二十歳のとき、はじめて海外に行った。行き先はキュ

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人との距離は心で縮まる

人との距離は心で縮まる

大人になればなるほど、その日はじめましての人が増える。でも初対面の人と会話を弾ませるのは難しいことだ。趣味とか家族の話とか、仕事の話とか、一周したあと、ようやく恋の話あたりで少し盛り上がるだろうか。

恋の話で盛り上がるのは、会話そのものに感情が入りやすいからだろう。そして感情が乗り出すと、お互いの距離は少し縮まる。感情というのは見知らぬもの同士の距離を縮める鍵となる気がする。

だから心と

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氷河を見てみたい

氷河を見てみたい

僕の地図帳にグルグルと力強く赤ペンでマーキングされた2つの場所。1つは屋久島。そしてもう1つはアルゼンチンにあるペリトモレノ氷河だ。

「いい、屋久島とペリトモレノの氷河だけは絶対に行って。感動するから。マーキングして」

大好きだった地理の先生はそう言ってテストに関係なく、絶対に行った方がいい場所2つを教えてくれた。

屋久島に行くという夢は大学時代に叶えた。屋久島はとても自然のパワーあ

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初めての海外で一人でキューバに行ってきたときの話

初めての海外で一人でキューバに行ってきたときの話

※この文章はこちらの続きです。

ハバナまではメキシコで乗り換えて行く。アエロメヒコ航空を利用した。人生初めての国際線だ。乗り換えできるかとても不安だった。なにせ初めてなのだから。荷物を失くすことを恐れていた僕は機内に持ち込めるサイズを調べ、この旅のために40リットルのバックパックを買い準備万端だった。

 日本人の添乗員さんは2人くらいで、その他の人はどうやらスパニッシュ系の添乗員さんなの

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遠いキューバで出逢ったダニエルという男

遠いキューバで出逢ったダニエルという男

2018年9月9日。

「空港まで見送らせてよ。僕たち友達だろ」

そう言ってダニエルはタクシーで空港まで見送ろうとした。もちろん運賃は僕が全額払うのだが、彼にとっては日本人である僕がお金を払うのは当然な態度だった。

僕は違和感を覚えた。友達ならお金を払わせないようにここで見送ればいいではないか。それに一人旅大学生にお金を払わせるなんて本当の友達ではない。僕の違和感は苛立ちに変わっていた

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