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目的のない旅と文と僕vol.5タイショウ

目的のない旅も、いよいよ終わりを迎える。下北沢と池袋に行っただけで旅って言うなよって言われるかもしれないけど、間違いなく旅である。この世のほとんどが旅だ。

小田急線は自分の家の最寄りに戻ってきた。

家の近くに、おんどりという居酒屋がある。以前父と2人でお酒を交わしたことのあるこの居酒屋にもう一度行きたいと思った。

誰もいない店内に入ると、お一人様は断られた。その代わりとなりのめんどりに案内された。姉妹店的なことなのだろう。

めんどりに入ると意外と中は賑わっていた。

1人で飲んでいるのは僕しかいない。隣にはいい大人の男女が飲んでいて、もう気心が知れた仲といったところだった。

逆側には外国人二人組が飲んでいる。インド人ぽかった。

カウンターには料理長が1人立っていて、アルバイトは2人。お客さんの数を見たら、なかなか切り盛りが大変そうだった。

お料理はどれも美味しかった。
豚の角煮は、そう!これ!ディスイズ豚の角煮!といった味で僕のお腹を満たした。

インド人はすごくピュアに料理長を「タイショウ」と呼んでいる。大将もきっと嬉しいだろう。

こうやって、呼び合うだけで、人は繋がりを感じる。赤の他人から、関係性が生まれる。僕も気やすくタイショウと呼びたかった。でもできないのは、何ができなくしているのだろう。自分が情けなかった。

今度はまたいつか父と2人で行きたいな。

今日は感じたままに旅をしてみた。でもよく考えたら、行動したことに対してよく感じてみたことの方が正しい解釈なのかもしれない。そしてそのよく感じるという行為は旅を楽しくて意味のあるものにした。人生が旅であるのだとしたら、こうやっていつも何かを感じとろうとすることは楽しい人生を送ることへのヒントなのかもしれない。

そして道に迷ってしまったら、いーはとーぼの様な喫茶店で休んで自分をまとめたらいいし、落ち込みがちな日はあのお兄さんが勧めてくれたキューバシャツを見にまとったらいい。
ときにはお酒で嫌なことを忘れたっていい。タイショウのつくる料理は幸せを運んでくれる。
別れたり、離れ離れになった人たちもたくさんいるし、これからもっと増えていくのだろうけど、僕たちはこの同じ空の下で繋がっている。


僕はまだ長い旅の途中だ。

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