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下手なインタビュアーに足りないもの

スポーツの試合後の選手へのインタビューがあります。

野球やサッカーや相撲などプロスポーツの試合後のヒーローインタビューや囲み取材、それから記者会見もありますし、アマチュアスポーツでも全国大会の各試合後のインタビューなどがあります。

質問を受ける側は、スポーツは上手くても、受け答えの得手不得手は人それぞれ。

ですから、それほど上手く回答できない選手もよく見かけます。

特に選手たちが受け答えの際によく言ってしまうセリフに、「そうですね」というフレーズがあります。

お相撲さんだと、「そっすね」というやつですね。

これも受け手として考える間が欲しくて、あえて一拍置くために答えているという捉え方もできますが、「はい、そのとおりです」と訊かれた内容をなぞる以外に答えようのない質問がなされているからという捉え方もできます。

最近は過去の選手の受け答えの態度が問題になったこともあり、選手側も取材へどのような姿勢で対応するのかあらかじめレクチャーを受けているなんて話も聞きます。

ただ、質問をする側は、それ自体を仕事として行っているのですから、受け答えが素人の選手たちとは違って、いわばプロなわけです。

プロであるにもかかわらず、インタビュアー側の資質の差というか個々の力量の差を感じざるを得ません。

特に観ていて気になるのは、オリンピックにおけるメダルを授与された選手や注目を浴びていた選手への試合後のインタビューの様子。

オリンピックのような大きな大会だと、マイナーな種目も多いですし、普段スポーツ担当ではないスタッフなども取材陣として駆り出されることがあるのかもしれません。

ただ、そうだとしてもインタビュアー側の配慮のなさというか稚拙さというか、不用意さが目立つように感じて観ていました。

中には、「どうでしたか?」のひと言だけで選手側に全てを丸投げされているインタビュアーもいました。

以前のコラムで、質問力というのはつまるところ、「相手への関心を前提とした思考力」であり、その思考をフル回転させた「想像力の発揮」なのだ、と述べました。

私と同じように感じている人もいるのでは、と調べてみるとやはり結構いらっしゃいました。

それらの意見を読んでいると、インタビューする側に何が足りないのか、その傾向が見えてきます。

まずは、「勉強不足」という点。

前述したように他部署から駆り出されてきたのかもしれませんが、そもそも、その種目や選手のことをしっかりと調べてきていない。

そして、勉強不足もこちらの要素に含まれるのだと思いますが、「相手への関心のなさ」が伺えるという点。

もともと部外者なのであれば、特に対象の種目や選手に興味や関心を持っていないのは当然ですが、こういうのも能動的に調べていくうちに湧いてくる好奇心というものがあるはずです。

ところが、そこは受け身の姿勢で好奇心がなければ、あとは誰かに用意をしてもらったり予定されていた質問をそのまま訊いていくだけとなります。

受け手の選手がどのような回答をしようとも、そこには無反応のまま、予定どおりにすぐ次の質問へ移っていきます。

相手の回答に臨機応変に対応した質問とか、話題の深掘りとかいうところに、その選手の人間性が垣間見られたり興味深いエピソードが披露されたりするきっかけがあるのだと思いますが、残念ながらそういった要素はこの流れからは生まれません。

あとは、質問自体が長くて何を訊きたいのか受け手に伝わりにくかったり、自分が述べた感想への返事を求めるだけだったりとか、独りよがりな印象を受ける質問技術の低さも目立ちます。

おそらく、ここで失念しているのだろうなと思うのは、単なる面談であれば自分と相手だけなので、「その面談や対談が誰にどう観られているか」という「客観の視点」の要素は必要ありません。

ところが、映像や音声で放送したり、記事など文字に起こしたりするのであれば、その場の雰囲気やお互いの会話の妙を観たい、聴きたい、読みたいという「第三者」がそこにいるのだという認識を持つことが強く求められます。

その認識のなさ加減に、仕事に臨む際の不用意さが感じ取られて、受け手はもとより第三者である我々聴衆も幻滅するのだと思います。

用意する気や時間がないのであれば、ここはやはりその種目の元競技経験者あたりにインタビューをしていただいた方が、よほど相手選手へのリスペクトを持って、もっと深い話が引き出せるのではないでしょうか。

ただ、ここも競技愛が深すぎる人だと、選手よりも自分の方が長く話してしまうなんて場面もよくお見受けしますので、あとは注意事項というか事前の依頼の仕方次第でしょうか。

職場においては、私たちはスポーツ選手やその方々を取材する立場とは違いますが、それでも例えばオープンスペースなどで他の人の耳目があるところで部下との面談などを行う際には、向き合う相手はもとより、その面談を傍で見聞きしているスタッフたちにどのように映っているのかという視点は持っておいてもいいのかもしれませんね。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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