一瞬に永遠を見た。『ビーチ・バム まじめに不真面目』ハーモニー・コリン監督
※公開当時のテキストの蔵出しです。
とてつもなく素晴らしい映画である。
ただ、「万人向け」とは間違っても言えないが、
「我々」の映画である事は間違いない。
舞台はフロリダなのだが、全てのシーンの「空」「太陽」「海」「風」、
そして「夜の精」を我々は既に知っている。
「あの日の、レゲエが流れる夕暮れの三浦海岸の空の色」であり、
「あの時の西麻布の地下の魔法が掛かった夜」なのであり、
「あの夏のテクノ・ミュージックが爆音で流れる中を吹き抜ける高原の風」なのであり、
その「一瞬」、我々は宇宙と繋がっているのである。
そして、その「一瞬」に対する「全肯定」の映画である。
永遠とは一瞬の中にある。
「あの一瞬」を追い求めて生きてきた我々のためのアンセムの映画である。
「此世をば どりやおいとまに せん香と ともにつひには 灰左様なら」
この辞世の句を詠んだ十返舎一九、
亡くなった際に自らの身体に花火を仕掛けておいて、
火葬の際に花火が打ちあがったそうである。
そんな「生き方」を最高と思える「こっちサイド」の人間のための映画である。