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司書のおすすめ本

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#読書感想文

新潮社クレスト・ブックスとしては珍しい作風の『レニーとマーゴで100歳』のおすすめポイント

新潮社クレスト・ブックスとしては珍しい作風の『レニーとマーゴで100歳』のおすすめポイント

こんばんは、古河なつみです。
私は海外の小説やエッセイなどを扱った「新潮社クレスト・ブックス」のシリーズが大好きです。このシリーズの本はきちんと時間を取って読みたいものが多いので制覇する事はできていないのですが……最近たまたま手に取った『レニーとマーゴで100歳』という小説がクレスト・ブックスとしては珍しい雰囲気だったのでご紹介します。

『レニーとマーゴで100歳』マリアンヌ・クローニン著/村松

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今日は国際子どもの本の日!図書館司書が注目した海外絵本を紹介します

今日は国際子どもの本の日!図書館司書が注目した海外絵本を紹介します

こんばんは、古河なつみです。
本日4月2日は「国際子どもの本の日」です。児童書への関心をもってもらうために童話作家のアンデルセンの誕生日にちなんで制定されました。

図書館に司書として勤めていた時、この日に併せて児童書の展示を行ったり、絵本の福袋企画(中の見えない袋に図書館の絵本を入れたまま貸し出して、普段とは違った本との出会いを楽しんでもらう企画)を行ったりしていたので私にとってなじみ深い記念日

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読み聞かせで友人親子に喜んでもらえた絵本の話

読み聞かせで友人親子に喜んでもらえた絵本の話

こんばんは、古河なつみです。
先日、久しぶりに仲の良い友人のお家へ遊びに行きました。友人には5歳になる娘ちゃんがいて、遊びに行くたびに絵本の読み聞かせ会をしているのですが、娘ちゃんだけでなく友人まで一緒に楽しんでくれた素敵な絵本があったのでご紹介します。

『ことりのメル おっこちる』コーリー・R・テイバー著/よしいかずみ訳

ある日、ことりのメルはママが留守の間に初めて飛んでみようとはばたいたの

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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の思い出&オススメの桜庭一樹さん作品

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の思い出&オススメの桜庭一樹さん作品

こんにちは、古河なつみです。
お昼休憩中にTwitterを見ていたら懐かしい小説『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』がトレンド入りしていて、大変嬉しいです!
元図書館司書としても小説のタイトルが話題に上がるのは、非常ににやにやしてしまいます。

私は『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を最初に出版された富士見ミステリー文庫版と杉基イクラさんの漫画版を学生の時に読んだのですが「ひょ、表紙詐欺だ……!」とびっ

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WBCを観戦しながら思い出した異次元野球小説『あるキング』と友人の話

WBCを観戦しながら思い出した異次元野球小説『あるキング』と友人の話

こんばんは、古河なつみです。
WBCがかなり盛り上がっていますね!
以前に勤めていた図書館の同僚が「WBCが始まってから夜間の利用者さんがほとんど来ない(笑)」と教えてくれました。

オリンピックやワールドカップ、そして今回のWBCなど「スポーツ」はとても関心の集まりやすいジャンルです。それ故に様々なスポーツ小説が存在しているのですが、私が今まで読んだ中で一番印象深い本を一冊紹介します。

『ある

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韓国小説『Lの運動靴』と〈小さな声〉を描く女性作家について

韓国小説『Lの運動靴』と〈小さな声〉を描く女性作家について

こんばんは、古河なつみです。
私は海外の小説が好きなのですが、たまたま手に取った韓国の作品がとても面白かったので紹介したいと思います。

『Lの運動靴』キム・スム著/中野宣子訳/アストラハウス

李韓烈(イ・ハンニョル)という大学生が軍事政権へのデモの最中に催涙弾に当たり、亡くなってしまった、という過去の韓国で起きた実話を元にしつつ、博物館で保管されていた彼の遺品の運動靴を修繕しようと試みる修復家

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節分が近くなるたびに思い出す『おにたのぼうし』という絵本

節分が近くなるたびに思い出す『おにたのぼうし』という絵本

こんばんは、古河なつみです。
一月も明日で終わりですね。司書の仕事を辞めてからもう一ヶ月が経ったんだ、と思うとなんだか不思議な気持ちです。
司書の仕事から離れてしまった自分を励ます意味でもこのnoteを始めたので、本好きな方からスキやフォローをいただけて大変感謝しております。

さて、二月の始めには「節分」という行事がありますね。
私がこどもの頃に教科書で読んだ節分のお話で、今でも忘れられない絵本

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冬の絵本『てぶくろがいっぱい』の温かみ

冬の絵本『てぶくろがいっぱい』の温かみ

こんばんは、古河なつみです。
朝や夜だけでなく日中も冷え込んでいますね。
私の住んでいる地域はほとんど雪が降らないのですが、今晩はもしかしたら降るかもしれない……と予報が出ていました。

冬をテーマにした絵本はたくさん出版されているのですが、その中で思わずくすっと笑ってしまった冬の絵本があったので一冊ご紹介します。

『てぶくろがいっぱい』
フローレンス・スロボドキン作/ルイス・スロボドキン絵/三

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迷いクジラのヨドちゃんのニュースを見て思い出した一冊の本

迷いクジラのヨドちゃんのニュースを見て思い出した一冊の本

こんばんは、古河なつみです。
少し前にニュースで見た迷いクジラのヨドちゃんは死んでしまっていたんですね……先程ようやく経緯を知りました。

さらに近くの博物館がヨドちゃんの骨格標本を作りたいと申し出ていたそうですが、上手く市長さんにまで要望が伝わっていなかったようで、そのまま海底に埋葬されたという記事を見て、なんとも惜しい気持ちになりました。

というのも、ちょっと前にこんな本を読んでいたからです

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善意でやらかす人々の物語/今村夏子さんの『とんこつQ&A』

善意でやらかす人々の物語/今村夏子さんの『とんこつQ&A』

こんばんは、古河なつみです。
突然ですが今村夏子さんという作家さんをご存じでしょうか?
芥川賞を受賞した『むらさきのスカートの女』の作者、と言えばピンとくる方も多いかと思います。
私も芥川賞候補となった時にお名前を初めて知って、既に出版されていた『こちらあみ子』を読んでからファンになり、以降の作品を順番に読んでいる作家さんです。

今村夏子さんの作品の個人的な読みどころ

先日たまたま今村さんの短

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まるで未来予知!児童文学の名手・ロアルト・ダールの考えた「AI小説」の物語

まるで未来予知!児童文学の名手・ロアルト・ダールの考えた「AI小説」の物語

こんばんは、古河なつみです。
ロアルト・ダールというイギリスの作家の短編集にAI小説(あるいはAI芸術)が生まれる未来を予言していたかのような興味深い物語が収録されていたので、紹介したいと思います。

ロアルト・ダールという作家について

「ロアルト・ダールコレクション」と呼ばれる児童書シリーズが出版されており(『チョコレート工場の秘密』『マチルダは小さな大天才』など)映画化されている作品も多いこ

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