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食堂のおっちゃんは、パスワードをわたしに聞いてくる。知らんがな。そして訃報。
職場の調理師のおっちゃんは、食堂がしまっているとき、たまにおべんとうをくれる。
「家族4人分つくるのも、5人分も変わらん」と毎回いう。
「ありもので作ったからな」と、「男のまかない飯やで」も、毎回つけてくる。
ななめ下を見たまま、ほほえみもなく、レジ袋に入ったタッパーを手渡して去る。
ことばも、いい方も、語尾もあらい。
ぶっきらぼうで、責めているようにも聞こえる。
映えなんて気にしないお弁当は、た
うさぎ追いし山なんてないこの世で、ふるさとに錦を飾る方法
そのとき、わたしはとても疲弊していた。
一年で最大の負荷がかかる日だった。木偶人形を気力であやつりながら、帰途についた。
電車をのりづき、実家にもどった。おふろに直行する。
すると、どうしたことか、上から声がひびいてくる。
こどもの声だ。ふたりはいる、3人か。
どこからだろう。
となりは何十年も空き地だったが、地主がここ最近、売り払った。窓の極端に少ない、3階建てがたっていた。
不可思議なほどに
ハンプティは元には戻らない。玉子を見ると思い出す、玉子を横取りしたら、肺結核の父が喀血した本の話。
わたしはたまごが好きである。
今夜はのこりもので済ませようと思って、1品足すためにたまごを焼いたら、そのたまごだけ完食してしまった。
こどもか。
その次に、まだ食指の動く、ポタージュをのみほした。
ポタージュはカボチャが至高だと思っているけれど、ジャガイモも、なかなかいける。
さいごにのこった、たいしておいしくない、ホワイトシチューを平らげながら、これを書いている。
たいしておいしくないものは、冷
アンドロイドは電気羊の夢を見る。人間にもスリープボタンがあればいいと、Siriはいう。
わたしは妄想族である。彼我のさかいを、意味なくこえる。ひんぴん、時空のはざまに漂いでる。
いまは特に、かぜをひいているので、朦朧としている。
その茫漠に、おぼろに浮くものがある。
目のまえに、おりたたんだハガキがみえる。シャーペンの文字がこすれて流れている。トメやハネがしっかりでている。これは知っている。高3のときのだ。
字を読もうと思うと、ひとりでに浮いてきた。ひらがなのかたちが見える。
燃えあがるノートルダム寺院をかこった市民たちが、アヴェ・マリアを歌っているというニュースを聞いたとき。
ぞくりとした。
あまりに絵画的だった。
伝統的といってもいい。
中世ヨーロッパのできごとかと思った。
ノートル=ダムとは、わたしたちのマダム、すなわち聖母マリアを指す。
聖なるマリア寺院が、炎にのまれて、うち崩れてゆくさまを、民衆がとりかこむ。
聖歌をうたいながら。
マリアを祝福する歌をうたいながら。
教会のステンドグラスにでも、ありそうなモチーフである。
しばらくすると、教会史として絵画になる