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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.3

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#エッセイ

失敗は成功の素というけれど

失敗は成功の素というけれど

失敗すること、ミスをすることが、わたしは怖い。

誰しもある程度の怖さはあると思うけれど、たぶん、わたしのそれは度を超えているのかもしれないな、と思うことがある。

これは今に始まったことではない。わたしは、かなり幼いころから失敗が怖かった。

「やってしまった」と気づいたときの体の冷えかたは尋常ではないし、食欲もなくなるし、呼吸も浅くなってしまう。

そうしたこともあって、わたしははじめての職場

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自分の感性だけは信じてる

自分の感性だけは信じてる

最近の自分の何か物を買うときに考えているルールは、「これがいい」ではなく「これでいい」を選ぶこと。このジャンルでの一生物を買うような気持ちで、物を選んでいます。

きっかけは、「無印良品からのメッセージ」でした。

無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり「が」ではなく「で」なのです。しかしながら「で」にもレベルがあり

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自分の書くものにはなくて本にはあるもの

自分の書くものにはなくて本にはあるもの

小説を読んでいると、気付くことがあります。それは、「情景」が自分の書くものにはあまりに少ないということ、それに、固有名詞ばかり使っているということ。

ここ最近読んだ作家さんで言うと、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」はすごかった。個性ということばを説明するのに、こんなに情緒たっぷりに語れるというのが、とてもすごいなぁと思う。

しかも、凄いのは、やっぱりどんな道具を使っても、マーくんの演奏にはマーくんの

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だって人間はそういう風にできているんだ

だって人間はそういう風にできているんだ

・タクロコマさんが、日々「君のいまがより良くなるように。」というマガジンを書いているのを、タイムラインに流れてきたときにふらっと読む。

未来のこどものためにタクロコマさんがどんなことを考えているのかが書かれている。自分が何をしたのかを誰か(読者)に向けて書くのはよくあることだけど、未来の自分のこどもに向けて書く形式はこれまでに見たことがなかったので、なんだか新しいなぁと思って眺めている。

個人

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好き嫌いはあったほうがいい

好き嫌いはあったほうがいい

小さな頃から食べ物の好き嫌いがないと公言している子どもだった。

好き嫌いについて聞かれると、「ないよ!」と得意げに答えていた。すると大概、大人は驚いてわたしを褒める。「えらいわね」に続いて、うちの子なんて野菜を食べなくてね、と言われることもあって、「大変なんだねー」みたいなわかった風の共感を寄せたりする、たぶん変な子どもでもあった。

10〜20代になっても「好き嫌いがない宣言」は続いた。褒めら

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写真と時間とは

写真と時間とは

昨日は春らしい天気で、ちょっと期待した気分だったのに今日になったらまた冬っぽい冷え込みで、起きてから1時間も布団から出られなかった。
春は、誰でもそうかもしれないけど、無性に写真が撮りたくなる。何か新しいことが始まる予感がして、外出している人たちが皆どこか浮き足立って見えるから見ていて面白いし、こちらもつられて気分がノってくる。

桜が咲いた、散ったで一気一憂するのも気持ちがいい。
起源を調べてみ

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晩婚家庭に生まれて

晩婚家庭に生まれて

働き方や生き方が多様になって、ある程度歳を重ねてから結婚する人も増えてきた。

実際、私はもういい年齢で、大学の同級生たちには「きみに結婚願望なんてあるの? 絶対ないでしょ」と笑われる。こういう選択肢を臆せず選べる時代になった恩恵に甘えて、徒らに日々を過ごしている。

人生訓を述べる資格はない。でも、「今後、子どもを持ちたいな」という人に向けて、ある記録を残しておこうと思う。

晩婚家

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「特定の誰か」に向けて書いてみる

「特定の誰か」に向けて書いてみる

元クラシコムの長谷川さんが、こんなnoteを書いていた。

そのnoteでは、こんなことが書かれている。

ぼくは以前にいたクラシコムという会社で、「たったひとりに刺さるコンテンツは、きっと多くの誰かにも届く」というスタンスを教わった。そのひとりが「記事を作っている自分」ということもある。

多数の人に受け入れられているものでも、顔が特定できるほどの「あの人」だったり、とても狭い範囲の「誰

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「知りたい」を追い求める美しい生き方

「知りたい」を追い求める美しい生き方

「美しい生き方」というと、僕はこれまで2通りのイメージしかなかった。一つは自分のことより他人を優先するような生き方で、いわばマザー・テレサのような生涯を送る人だ。もう一つは、自分の筋や美学を貫く生き方であり、俳優の高倉健さんや岡本太郎氏などが思い浮かぶ。

それが『喜嶋先生の静かな世界』という小説を読んで、それらとは異なる「美しい生き方」を知ることとなった。小説の舞台は理系の大学と大学院。子どもの

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"あなたって◯◯だよね"っていう呪い

"あなたって◯◯だよね"っていう呪い

最近出会って2回目でご飯に言った方に"かなこちゃんって、頑張りすぎちゃうところあるよね。"って言われて。

"いやー、そうなんです、自分の限界の把握とか、今しんどいですって言うのとか、苦手だったりします。"ってその時は笑顔で"てへっ"てかんじで答えたんだけど、なんか心の中ですごく疲れてしまったなぁ。

なんだかなーって思ってたら、似たような疲れ方、私前にもしたことあるなぁと思い出した。昔おつきあい

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どこかの誰かの経験談が、どこかの誰かの心に響く。

どこかの誰かの経験談が、どこかの誰かの心に響く。

基本的に私は他人への興味が薄いというか、他人と自分の間にくっきり線を引いていて、あまり悩みを人に相談したりするタイプでもない。一番身近な存在である恋人に対しても、「私は私、あなたはあなた」という考えがベースにあり、たまに周囲の人から期せずして「それ許しちゃうの?」「心が広いね」などと言われて驚くことがある。

その「私は私、あなたはあなた」精神のためか、世の中にあふれる『〇〇するための10の法則』

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考え続けること

考え続けること

ここ最近、今後の仕事のことや結婚や、将来子どもが欲しいのか/欲しくないのかということについて、しばらく考え続けていた。自分がどうしたいかを見極めたいのに、なかなか考えがまとまらなくて、「どうしようかなぁ…」と思案するばかり。答えなんて出せないんじゃないかと思うくらい、考えは進展せず、モヤモヤが続いていた。

それが不意に、自分の中でするっと決着がついた。その意識の変化があまりになめらかで、あまりに

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写真をするということ 1

写真がこれほど撮られている時代はかつてなかった。

スマートフォンにこれほど高性能なカメラがデフォルトでついているから、もはや誰でもカメラを持っているしいつでも写真を撮っている。
一眼レフも少し余裕があれば誰でも手に入れられるような嗜好品になった。

インスタグラムなど、SNSに日々世界中の写真がインターネット上に集積されてどこからでもアクセスできる。
膨大すぎるイメージの氾濫具合を見れば、もうす

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地下鉄の窓ガラスに映った自分

人が黒歴史としてしまい込み、蓋をしている思い出の箱をうっかり開けてしまうことがある。
例えば、ある英語が得意な人が結婚したばかりの頃のこと。当時は、奥さんとのラブラブ過ぎるエピソードをこんな風に語っていた。
「結婚前からよく妻に英文でラブレターを書いている。すると妻が、『ここがどういう意味かわからないんだけど……』と質問して来て、それに答えてあげる時間が楽しい」

それから月日が流れ、何かの拍子に

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