はるのひ

字幕翻訳家。書くことは自分を知ること、そして過去と今と未来の自分をつなぐこと。思考を整…

はるのひ

字幕翻訳家。書くことは自分を知ること、そして過去と今と未来の自分をつなぐこと。思考を整理・記録するためのエッセイを書いたり、忘れたくない日常のワンシーンやある日の思い出を綴ったり。【投稿コンテスト 2018年 #美しい髪 グランプリ 2019年 #こんな社会だったらいいな 入賞】

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    noteのコンテスト・お題企画への参加作品たち

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    日々流れていく思考の断片

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    日常の中でたまに起きる、忘れたくない一日のこと

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愛しい6秒

日常のふとした時に、空を見上げる。 電車の流れる車窓の向こう。 自転車をこぐ、スーパーからの帰り道。 エレベーターから玄関までの数メートル。 洗濯物をとりこむベランダ。 そのたびに、ああ、この色合いが最高に好きだ、と思う。 川面よりもまぶしい水色。 幻想的な青とピンク。 淡いグラデーションの藍。 ピンクとオレンジの間の夕焼け。 どの色も、二度と見られない。写真には収まらない。 ずっと見ていたいなあと思いながら、そんなわけにもいかず日常のあれこれに戻っていく。

    • ガジュマルと春の曲

      2年前の夏、ガジュマルの鉢植えを購入した。重く暗い気持ちになる出来事が遠くで起きてしまった日だった。その重たい印象のまま一日が終わっていくのが嫌で、何か少しでも気分の上がることをしようと思い、用事を済ませた帰りにたまに立ち寄る雑貨屋さんをのぞいた。 店先のテーブルの上に並んだ観葉植物の中に、そのガジュマルはいた。一目見ていいなと思った。幹の形も葉の付き方も、優しいアースカラーの陶器の鉢も、全てがいい感じに私の好みにぴったりはまっていたのだ。そのお店に観葉植物が置いてあるのは

      • 12月5日

        12月4日の夕方頃、何だか体がだるくて横になりたいかも…と思った。やはり体は正直で、全部分かっているらしい。ちょっと変だなと思って熱を測ると37度7分。2020年のコロナ禍以降、発熱なんてワクチン接種後の副反応の時しかなかった。夜になると38度5分まで熱が上がり、インフルエンザも流行っているみたいだし翌日検査に行くことに。 12月5日 コロナとインフルの検査をしてくれる近所のクリニックで11時30分の予約が取れた。ただの風邪であることを祈りつつ検査結果を待っていたけど、結果

        • 秋と日記と振り返り

          10月も中旬になり、今年も残すところあと3か月を切った。早いなぁと思う一方で、何となくこの時間の経過の速さに慣れてきている感覚もある。そうそう、これくらいで過ぎ去っていくよね、という感じ。 一年の総括をするには少し早いけど、年末に総括をする時間を取るのもなかなか難しいものだなと去年改めて感じた。終わりが見えてくると(実際に何かが終わるわけではないんだけど)なぜか気持ちが焦って、ゆっくりと腰を据えて振り返る気持ちになれなかったりする。 2023年は、とても悲しいこととすごく

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        愛しい6秒

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        記事

          夏の呼吸

          忙しい時ほどふと心に浮かんで溢れてくる思いを書き留めたくなってしまうこの性格を何とかしたい…と思いつつ、どうにもならないのが自分というものである、と諦めてこれを書き始めた。 6月30日(金)、下北沢ハーフムーンホールという素敵な会場で阿部芙蓉美さんのライブを見てきた。雨がしとしとと降る中、下北沢駅の東口から商店街を抜けて住宅街をぐんぐん進んだ先に、そのホールはあった。道路から少し奥まった所にある入り口は立ち並ぶ住宅の中に紛れ込んでいて、開場を待つ人々の列がなければうっかり通

          容れ物

          4月の下旬に祖母の訃報が届いた。その少し前に、久しぶりに祖母のことをふと思い出してnoteにも書いていて、今年の夏頃にまた会いに行けたらいいなぁなんてのんきに思っていたところへ届いた知らせだった。間に合うことと間に合わないこと、人生ではどちらのほうが多いのだろう。 お通夜と告別式の日程がゴールデンウィーク前半に決まった。しっかり悲しむ間もなく、バタバタと仕事の予定を調整する。仕事の納期を特別に延ばしてもらうことができ、一旦実家に寄って前泊し、翌日の早朝から家族で祖母の家へ向

          祖母がくれた褒め言葉

          あれは6年前の初夏のこと。米寿を迎えた祖母に会いに行こうと、久しぶりに母方の実家へ家族で遊びに行った。父は家で犬猫の面倒を見るため一人お留守番で、行き帰りの道中は母と姉と妹と私、女4人のプチ旅行となった。 ざっくり分けると、家族の中で私と父は基本的にはマイペースなおっとりタイプで、あとの3人はおしゃべり好きなちゃきちゃきタイプだ。性格は違えど、一時期は毎年あちこち姉妹で旅行に行っていたくらい姉妹仲は良く、旅行中も一度もケンカになることなく楽しく過ごせるような間柄だ。 そん

          祖母がくれた褒め言葉

          自分を知る旅

          人生は自分を知る旅なのだなあとつくづく思う。 出会う人、音楽、映画、小説、景色、言葉、などなど。その中で好きになるもの、苦手だなあと思うもの、ただ受け止めるもの、特別な存在になるもの。数え切れないほどたくさんのものに出会いながら、知らなかった感情を知って、新たな自分の一面を知って、少しずつ広がっていく。自分を知る旅というか、広げていく旅なのかもしれない。 2022年を振り返ると、余裕を持ちたい、と切実に思うことが多い年だった。 まず春から初夏にかけて少し考えごとをしてし

          自分を知る旅

          エッセイを書きたい日

          人の誕生日を覚えるのが苦手だ。家族や恋人の誕生日はかろうじて覚えているけれど、たまに「あれ…?」と不安になったりするくらいには苦手だ。 そんな私が珍しくリリース日をはっきりと覚えている曲がある。ギタリストの関口シンゴさんの「Recollection」という曲だ。 この曲は2020年9月30日にリリースされた。リリースの5日ほど前、ふと気づくと関口さんのYouTubeページなどのヘッダーが曲名とリリース日の記された画像にそっと変わっていて、静かに歓喜した。その時点ではまだご

          エッセイを書きたい日

          言葉の温度

          何だか気持ちが疲れている。そんなに大した疲れではないけれど、明らかに先週以前の自分と比べてどっと疲れている。急に夏の終わりが顔をのぞかせて気温が下がったりしたことも少し関係があるのかもしれない。 ささやかな楽しいこと、嬉しいことは日々あれど、流れてくるひどいニュースやモヤモヤする言葉のあれこれに、着実に心が削られているのもあるだろう。深く考えずにやり過ごそうとしても、心が削られているという事実は消えてなくなったりはしてくれない。 そんな時は、まずちょっと静かにしてみる。誰

          言葉の温度

          犬と暮らすということ

          実家で飼っている犬が亡くなったと、16日の夕方に母親から連絡がきた。15歳だった。名前はちゃー。本名はちゃーちゃ。茶色の毛並みがきれいな小さかった女の子は、私より先にあっという間におばあちゃんになり、その一生を終えてしまった。少し前から食事をあまり摂れなくなり、先週からは自力で歩けなくなったと聞いていたので、覚悟はしていたけれど…。 毎年、桜やシロツメクサやアジサイなど、四季折々の花や緑と一緒に写る彼女の写真が送られてくるたびに、ちゃーは本当にお花が似合うね、何でこんなにか

          犬と暮らすということ

          未来はわからない、ということ

          私はもともと、「自分の未来がどうなるかわからないこと」が楽しみだと、どこかのんきに思えてしまう性質を持ち合わせている。特別な自信も根拠もないのにそう思ってしまうので、これはもう本当に性質としか言えないだろう。 最近、改めて「(未来のことは)わからない」という言葉にいい意味で引っ掛かることが3回ほど続いたので、この言葉に感じていたことを書き留めておこうと思う。別に何の変哲もない言葉だけど、これだけ続けて反応してしまうということは今の自分にとっては意味のあるキーワードなんだろう

          未来はわからない、ということ

          夢で会えたら

          今日、昔の友達に会いに行く夢を見た。 初めて行くマンションだけど迷うことなく目指す部屋へと足を進める。階段を上りきるとちょうどその部屋に入っていく見知らぬ2人組がいて、私も彼らの後に続いてドアが閉まる前に中に滑り込んだ。 部屋の中には大きなテーブルが1つあり、友達は私の知らない人たち10数人ほどと一緒にそこで楽しそうにしゃべっていた。どんなつながりなのかよく分からない、年齢も性別も雰囲気もばらばらの人たち。場違いな所へ来てしまった、と思ったけれど、意を決して一番遠い席に座

          夢で会えたら

          心が潤う、癒やしの曲たち

          はじめに「#スキな3曲を熱く語る 」というお題企画を知り、これは参加したい!と久しぶりにnoteを書きたくなった。 去年から始まったこのコロナ禍で私の中で大きく変わったことは、聴く音楽の幅が今までよりぐっと広がって、今まで以上に音楽を楽しむようになったことだと思う。今回はそんな音楽の聴き方が変わるきっかけを最初にくれたギタリストの関口シンゴさんを軸に3曲を選んでみることにした。 ちなみに曲を紹介する大前提として、関口シンゴさんのギターがいかに好きかという話から始めたくなる

          心が潤う、癒やしの曲たち

          夜の窓

          時刻は深夜3時すぎ。また寝るのが遅くなってしまったなあと思いながら、換気のために開けておいた寝室の窓を閉める。 この部屋から見る夜の町の眺めが好きだ。東京の町の灯りはカラフルで、だけど夜空はしっかり暗くてほんのり怖くて寂しげで、その対比が好きなんだと思う。暗闇の中の人工的な明るさに何だかほっとする。寝ていてもいいし、起きていてもいいんだよと言われてるみたいだ。 辺りはしんとしている。 遠くには高架鉄道が見える。いや、正確には昼間でさえ鉄道自体は家からは見えない。ごちゃご

          初めて一人で映画館に行った日。「まともじゃないのは君も一緒」鑑賞記録

          ◆「まときみ」との出会い私にとって映画館という場所は必ず誰かと一緒に行く所だった。同じ鑑賞系でもライブにはほぼ一人でしか行かないけれど、映画だけは家族や恋人と見に行くことがほとんで、一人ででも映画館に足を運んで映画を見たい、と思ったことが実は一度もなかった。つい先日までは。 4月3日(土)に映画「まともじゃないのは君も一緒」(略して「まときみ」)を見に行った。この日は一人でではなく、いつものように恋人と一緒に近所のシネコンへ。 映画の紹介は以下に公式サイトから引用させても

          初めて一人で映画館に行った日。「まともじゃないのは君も一緒」鑑賞記録