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心が潤う、癒やしの曲たち

はじめに

「#スキな3曲を熱く語る 」というお題企画を知り、これは参加したい!と久しぶりにnoteを書きたくなった。

去年から始まったこのコロナ禍で私の中で大きく変わったことは、聴く音楽の幅が今までよりぐっと広がって、今まで以上に音楽を楽しむようになったことだと思う。今回はそんな音楽の聴き方が変わるきっかけを最初にくれたギタリストの関口シンゴさんを軸に3曲を選んでみることにした。

ちなみに曲を紹介する大前提として、関口シンゴさんのギターがいかに好きかという話から始めたくなるけど、それは一応下記のnoteでも既にたっぷり語っているので、今回はすぐ本題に入ろうと思います。

3曲…と言いつつ結果的に5曲になってしまったのだけど、「想いがあふれた結果、3曲以上になってもOKです」というnote公式さんのお言葉に甘えて、このまま5曲で。今回の選曲にあたっての個人的なサブテーマは、タイトルのとおり「心が潤う癒やしの曲」です。

1. North Wing / 関口シンゴ

最初に出会った関口さんの曲であり、2020年の"Spotifyまとめ"で私のトップソング(一番聴いた曲)になった曲でもある。Spotifyで現在980万回再生を超えているチルギターの名曲。

初めて聴いた時の衝撃が今も鮮明に記憶に残っている。

あまりにも心地いい音が不意にイヤホンから両耳に流れ込んできて、言葉にならない気持ちよさがあっという間に全身にひたひたに行き渡った。その後に続いた感情は「何これ???」という混乱、動揺だった。人は経験したことのない心地よさを体感すると動揺するのだ。

この曲に出会ったのは去年の3月で、実は当時思いきり体調を崩していた。仕事で長らく生活リズムが乱れがちだったし、コロナ禍に突入して日々流れてくる情報から少しずつストレスも蓄積されていたと思う。ある夜、スマホを見ようと頭を少し下に向けた瞬間、ひどいめまいに襲われて具合が悪くなり、夜間救急のお世話になってしまった。

診断結果は自律神経の乱れで、脳の異常などではないから大丈夫ですよ、という話で安心したのだけれど、それでも頭の違和感や頭痛はしばらく消えず、光がつらくてスマホは全く見る気にならなかった。納品が近い仕事を抱えていたため翌日からパソコンに向かうもやはり画面を直視するのはつらく、気持ち悪くなってきたらすぐに休憩したりと、自分をだましだまし仕事を続けていた。

仕事中、またあのめまいが起きるのでは…という恐怖感も拭えず、心を落ち着けるために流していたSpotifyのプレイリストから流れてきたうちの1曲が、このNorth Wingだった。

そもそも普段は仕事中に音楽を流す習慣がなく(聴きながらだと作業に集中できないので)、Spotifyの公式プレイリストも寝る前に聴く用の静かめなものをいくつかフォローしていたくらいだった。体調不良がなければあの時この曲に出会えていなかっただろうなと思うと、あのめまいすらポジティブに受け止められてしまう。

その時に聴いていたプレイリストには心地いい曲はたくさんあったけれど(というか、全部がそういうゆったりとした心地いい曲なのだけど)、心に引っ掛かって「何これ?」となるほどの心地よさをくれる曲は、やはりめったにあるものじゃない。出会ってから1年以上聴き続けていても、いまだにこの曲から感じる瑞々しさは変わることなく、いつだってふとした時に聴きたくなる。

ちなみに音源が最高なのはもちろん、関口さんのソロギターで聴くNorth Wingも最高なのです。アレンジも毎回素敵で、何度でもその演奏に聴き入ってしまうし、好きなギタリストがこういうギター動画をまめにアップしてくれることも夢のようだな…としみじみ思う。


2. Woolly Thinking / 関口シンゴ

ぼーっとする時間は私にとってすごく大事な時間だったなぁと、ここ数年ふと思うようになった。「大事な時間だった」と過去形なのは、気づけばそんなふうにぼーっとする時間をなかなか取れなくなっているからだ。

数年前から家で仕事をするようになって通勤時間がなくなり、何だか常に仕事が目の前にあったり横で待機していたり後ろに並んでいたりして、「よし、今日は丸一日休みだ!」という日がない月もあったりする。

仕事の休憩中なども何かとLINEやSNSなどを見てしまうし、見たいドラマなどもたまっていくし、生活の中でよほど意識して作らない限り、「何もしない時間」を持つのが難しくなっている。ただぼーっとする、という昔は普通にやっていたはずの行為がとても贅沢なものに思えてくる。

この曲を聴いていると、そんな「ぼーっとする時間」がしっかり確保されてすっきりするのだ。例えるなら、ゆっくりと流れる雲を眺めている時のような気持ちになる。仕事のことも、手元のスマホのことも、ごちゃごちゃと考えているあれこれも一旦すっかり頭の中から消え去り、ふっと解放される。

優しいギターの音とメロディーにただ耳を澄ませて、曲に聴き入りながらもどこかぼんやりと意識が遠くの方までさまようような、理想的な「ぼーっとする」ができる曲。気持ちの充電の仕方はいろいろあって、こういう時間も私には欠かせないのだ。


3. Place for Someone / vusik

音楽を聴いて自分の心の状態に気づくことがある。私の場合、特にインストものだとそういうことが起こりやすい。

"vusik"は関口さんのかつてのソロプロジェクトの名義で、この曲が収録されているアルバム「Silent Rain, Silent Sea」はギタートリオの美しくて心地いい作品。ジャズ好きな方もそうでない方もぜひ聴いてみてほしい。

私は関口さんを知る前からインストものは(狭い範囲ながらも)好んで聴いていたけれど、ジャズはほとんど通ってこなかった。けれど、関口さんを通して知ったジャズの世界は意外なほどするりと好きになれるような、しっくりくる、落ち着く場所だった。

どんなコードがジャズ特有なのか、という知識などはないながらも、多分もともとジャジーな響きの音に惹かれるようなところはあったんだと思う。(星野源さんが作る曲に惹かれたのたも、今にして思えばたぶんそこが結構大きいんだろうなと思ったり…。)関口さんは普段からジャズのコードを好んで使っている、ということを言葉で知識として知る前から、関口さんのギターの音の響きをいいなぁと思ったり、ギター動画などで見る弦の押さえ方の複雑さに目を奪われたりしていた。

このアルバムも去年の自粛期間中に聴いてとても癒やされ、大好きになったもの。もう何度も聴いているけれど、ある日この曲を聴いていた時、「私は今本当はこういう感情だったんだな」と驚くほど素直に認識できたことがあった。自分では捉えきれていなかった心の輪郭が音に照らされてほんのり浮かび上がってくるような感覚。

この曲は、気持ちが塞いだりしてほんの少し明るさに触れていたい時、そっと励まされるような曲だ。心にじわじわと柔らかい光がしみ込んでくるようで、現実の世界は何も変わっていないけど、折れそうだった自分の心がまたちょっと大丈夫になる。こういう曲に出会うと、音楽の不思議さというか、音楽にしかない力を改めて感じずにはいられない。


4. Feverish Imagination - Reconstruction / Ovall

関口さんがギタリストを務めるバンド、Ovallからも1曲。

子供の頃、夏休みの朝にまだ眠い体のまま外に出てラジオ体操に向かう時の涼しい空気。
大学時代、冬の夜の町を抜けて海までドライブして、辺りが明るくなってきた頃に窓を開けて吸い込んだ冷たい潮風。
社会人2年目、眠れない夜に珍しく出かけたクラブイベントで仲良くなった子と一緒に歩いた、早朝の渋谷の澄んだ光。

普段は忘れているけれど確かに体の中に残っている、きれいな朝がたくさんある。そんな気配が頭をかすめて、ちょっとだけ記憶の底に手を伸ばしたくなるような曲。"Reconstruction"がつかないバージョンも好きだけど、こちらのバージョンのしっとりした、それでいて爽やかな美しさがすごく好き。

Ovallは関口シンゴさんも、ベースのShingo Suzukiさんも、ドラム&ボーカルのmabanuaさんも、3人それぞれがソロ作品を出しているだけでなく、CMや映画の音楽も制作したり、他のアーティストの楽曲のアレンジャー/プロデューサーとしても活躍しているすごい人たち。それでいて全員が何とも穏やかで面白くて、ライブではかっこよくて気持ちいい演奏をびしっと決めた後にゆるめのMCでほっこり笑わせてくれる、最高のバンドです。

(最近Original Loveの名曲「接吻」をOvallがアレンジしたバージョンがOriginal Love & Ovallとしてリリースされて、そちらも最高すぎるのでさりげなくMVを置いておきますね…)

5. Jubilee / 土岐麻子

最後に関口さんのアレンジ作品からも1曲。くるりの名曲「Jubilee」の、土岐麻子さんによるカバーだ。

先述したとおり、関口さんは数々のアーティストの楽曲アレンジ/プロデュースも手がけている。リリースされたアレンジ作品は今年だけでもう20曲近くあり、今後1か月以内に少なくともあと3曲はリリースが予定されている。(すごい…)

関口さんのアレンジ作品もまたどれも素晴らしくて、ソロ作品やOvallとはまた違った関口さんのギターを聴けるのもファンとしてはとても嬉しく、あまり知らなかったアーティストの曲でも毎回そのリリース日を楽しみにしている。

これまで「編曲者」の存在をあまり意識したことがなかったけれど(編曲まで含めて自分でやる人たちの曲を聴くことが多かったのかも)、曲のイメージを大きく左右するイントロや間奏などを作るのもアレンジャーの仕事だということを知れたのも関口さんのおかげだ。

さて、このJubileeは関口さんのアレンジ作品の中でも個人的にかなり好きな作品の1つだ。ふわっと花が開いていくようなサビの優しい盛り上がりも、エンディングに向かうまでの展開も、何度聴いてもよすぎて鳥肌が立ってしまう。音が声がすーっと沁み渡り、何とも幸せな温かい気持ちになる。

オリジナルの作曲者、くるりの岸田さんも「Jubileeが喜んでます」と評してくれているほど、本当に素敵なカバーです。

Spotifyには関口さんのアレンジ作品がまとまったプレイリストもあって(アレンジではなくギター演奏のみで参加、作曲で参加、などの曲もいくつか含まれます)、どれも素敵な曲なので、ぜひのぞいてみてほしいです。

本当は藤原さくらさんのmother(リバースディレイが美しすぎる)とか、Ryu Matsuyama(バンド名です)のUnder the Sea(とにかくカッティングがかっこいい)とかも激しくおすすめしたいけれど、収拾がつかなくなるのでこれで終わります…!

(2022年3月にSpotify公式のWorksプレイリストができたので追記)

おわりに

好きな曲について熱く語りたい気持ちは常に心の中にあるけど、じっくり語れる機会がないので今回のお題企画はとても楽しかった。まだ書き足りない気がして最後に何かまとめのようなものを書きたくなるけど、書き足りない余韻を残すくらいがちょうどいいのかな…という気分なので、このまま素直に終わりにしたいと思います。いつも心を潤してくれる癒やしの曲たちに感謝を込めて。

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