知の学びを創造する者

頭の中を整理する創作の場としてnoteを始めました。 頭に浮かんだこと、短編小説(作…

知の学びを創造する者

頭の中を整理する創作の場としてnoteを始めました。 頭に浮かんだこと、短編小説(作品はフィクションです)などを書きたいと思います。

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記事一覧

【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3

羊たちと別れ、図書館に戻ると少女は慣れた手つきでポットに水を入れ、お湯を沸かし始めた。 トースターや冷蔵庫まで備え付けてある。 「君はここに住んでいるの?」と僕…

【連続小説】 羊たちが眠る夜は 2

羊たちは図書館の入り口でメェーと鳴き始めた。 その鳴き声を聞くと、少女は突然目を覚ました。 「もう、こんな時間」と少女は慌てた様子を見せる。 少女は羊に近寄り、…

【連続小説】 羊たちが眠る夜は

螺旋状の階段に一人の少女が座っていた。 壁には本棚が並び、規則的に色分けがされている。 「お兄さんも来たんだね」 少女は微笑んだ。 「僕は初めてさ。君は?」 「…

【超短編小説】 久しぶり

水面を歩く彼女は、私を見ていた。 「久しぶり」と言う彼女の近くを小鳥たちが飛んでいた。 これは現実なのか、ただの幻想なのか。 目に映る光景を私は直視しながらも、…

【ポエム】 スロー再生したら

スロー再生したら、世界は違って見えて、 話している言葉も相手の顔もゆっくりと動き出した。 こんなにも早いスピードで会話を理解していることに気付き、 もしかすると…

【超短編小説】 ジョハリの窓

私が彼女に会ったのはちょうど6年前の夏の終わり頃だった。 その頃は年齢的にも私の方が少しばかり若かったし、彼女も私と仕事をすることがなければ、生涯知り合うことが…

【超短編小説】 帰ってきた

「夏だから、帰ってきた」 縦崎はそう言った。 「縦崎?そんなクラスメイトいたか」 「ほら、あいつだよ。中学の時のトンネル事故で・・・」 「あー、思い出した。もう…

【ポエム】 情報過多カタカタ

キーボード カタカタ鳴らす。 終わらない仕事。  程よいところで型つけて、 机の上を片付ける。 肩が痛くて、 肩こり酷くて、 スマートフォンを一度開けば、情報過…

【超短編小説】 チョコレートの海

これでいいのかと思ってしまうぐらいに、冷静な自分がいる。 物事はチョコレートのように甘くはないのだ。 嫌というほど聞いたことのあるセリフを頭の中で反芻する。 『…

【超短編小説】 呟き

「寝ている時に、起こして悪い。お前に言いたいことがあって来たんだ」 ある男は語り始めた。 「この町はずいぶん変わっちまった。 俺らが遊んでいた頃の町とは違うみた…

【ポエム】 地球は、また自転する

地球は自転する。 人は別れては出会いを繰り返す。 ぐるぐると巡り合うその中で、 僕は君に会い、 君は僕に会った。 僕らは最初はぎこちなかったし、上手く話せなかっ…

【短編小説】 突然の来訪者

外はまだ寒かった。 確か、8時を少し過ぎたぐらいの時間だった。 コーヒーを淹れて、少し休んでいる頃、 呼び鈴が押された。 予定時刻よりはまだ3時間ほどあった。 準…

【短編小説】 明日、死ぬかもしれない世界にて 

「ごめんな」 俺は携帯電話を片手にそう呟いた。 電話口の相手は泣きじゃくった。 こんなつもりじゃなかった。 悲しい思いをさせたくはなかった。 でも、こうするしか…

【ポエム】 だから、ここにいる

できないことだってある。 理解できることばかりで世界を見て、 顔が見えなければ何でも言える。 そんな世界で生きている。 でも、それは一部にしか過ぎない。 まだ知…

【超短編小説】 饅頭を齧る女

これは旅先で会った女の話だ。 その女は右手に饅頭を持ち、こちらを見ながら饅頭を一口齧った。 まるまるとした白い饅頭であったが、小さい口を器用に動かし、運んでいく…

【超短編小説】 夜中物語

夜の静けさが好きだ。 真っ暗で何の音も聞こえない。 でも、だんだんと空は青になっていく。 わたしたちは笑った。 声はガラガラで、 すぐにでも眠りたい。 「明日、…

【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3

【連続小説】 羊たちが眠る夜は 3

羊たちと別れ、図書館に戻ると少女は慣れた手つきでポットに水を入れ、お湯を沸かし始めた。

トースターや冷蔵庫まで備え付けてある。

「君はここに住んでいるの?」と僕は尋ねた。

「まさか、そんな訳はないわ。ここの図書館はおじいちゃんが管理しているの。

だから、ここにある物は自由に使って良いのよ」と少女は微笑んだ。

そうこうしている内に、ロールパンの焼ける匂いがした。

「さあ、朝ご飯を食べまし

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【連続小説】 羊たちが眠る夜は 2

【連続小説】 羊たちが眠る夜は 2

羊たちは図書館の入り口でメェーと鳴き始めた。

その鳴き声を聞くと、少女は突然目を覚ました。

「もう、こんな時間」と少女は慌てた様子を見せる。

少女は羊に近寄り、羊を撫でた。

撫でられた羊は心地良さそうだった。

「どうして図書館にやってきたんだろう?」

僕は疑問に思う。

「早く支度しなくちゃ」

「どこに行くのさ」

「決まっているじゃない。朝ごはんを食べに行くのよ。この子達はお腹をす

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【連続小説】 羊たちが眠る夜は

【連続小説】 羊たちが眠る夜は

螺旋状の階段に一人の少女が座っていた。

壁には本棚が並び、規則的に色分けがされている。

「お兄さんも来たんだね」

少女は微笑んだ。

「僕は初めてさ。君は?」

「あたしは12回目。ここには色んな国の言語で書かれた本が集まっているの」

「君が読んでいるのは、一体?」

本には見たことのない文字が書かれていた。

「さぁ、何語かしら。でも、書いてある文字を読むことはできるわ」

「僕には分か

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【超短編小説】 久しぶり

【超短編小説】 久しぶり

水面を歩く彼女は、私を見ていた。

「久しぶり」と言う彼女の近くを小鳥たちが飛んでいた。

これは現実なのか、ただの幻想なのか。

目に映る光景を私は直視しながらも、半ば疑いを抱かずにはいられなかった。

彼女は行方不明になっている。

それが5年前の秋で、某県にある湖だった。

その地域の大半は湖が占めており、人口よりも水の量が多いと聞いたことがある。

私の目に映る人物は、本当に彼女なのだろう

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【ポエム】  スロー再生したら

【ポエム】 スロー再生したら

スロー再生したら、世界は違って見えて、

話している言葉も相手の顔もゆっくりと動き出した。

こんなにも早いスピードで会話を理解していることに気付き、

もしかすると聞き取れずに見逃した数多くがそこにあったのではないかと考えた。

話す行間に本当に言いたかった何かが隠されていて、

面倒臭そうに「はい、はい」と言っている。

何度も繰り返し聞いてみたが、何と言っているか分からない。

その言葉だけ

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【超短編小説】 ジョハリの窓

【超短編小説】 ジョハリの窓

私が彼女に会ったのはちょうど6年前の夏の終わり頃だった。

その頃は年齢的にも私の方が少しばかり若かったし、彼女も私と仕事をすることがなければ、生涯知り合うことがないはずの人だった。

彼女には竜巻が来ようが嵐が来ようが動じることのない気概が感じられた。

そのせいもあったのだろう。私は何を話すにしても彼女の前では自然と言葉が出てしまった。

「きっと計り知れないほどの経験を重ねてきたのだろう」と

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【超短編小説】 帰ってきた

【超短編小説】 帰ってきた

「夏だから、帰ってきた」

縦崎はそう言った。

「縦崎?そんなクラスメイトいたか」

「ほら、あいつだよ。中学の時のトンネル事故で・・・」

「あー、思い出した。もう10年以上も前の話じゃねぇかよ」

久しぶりの同級生の集まりで縦崎の話が出たのはそんな時だった。

酔いも回り始め、その話はすぐに途絶えたかと思うと、当時クラスの中で好きだった人の話に切り替わった。

俺と縦崎は小学校から仲が良く、

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【ポエム】 情報過多カタカタ

【ポエム】 情報過多カタカタ

キーボード

カタカタ鳴らす。

終わらない仕事。 

程よいところで型つけて、

机の上を片付ける。

肩が痛くて、

肩こり酷くて、

スマートフォンを一度開けば、情報過多。

目が眩む。

カタカタ、カタカタ

カタカタとどこを取っても

情報過多。

気付けば今夜もてっぺんだ。

カタカタ、カタカタと

また、明日も。

朝は早い、型破り。

【超短編小説】 チョコレートの海

【超短編小説】 チョコレートの海

これでいいのかと思ってしまうぐらいに、冷静な自分がいる。

物事はチョコレートのように甘くはないのだ。

嫌というほど聞いたことのあるセリフを頭の中で反芻する。

『このままじゃ、僕は・・・』

だが、その甘いチョコレートの海の中で溺れてしまいたい自分もいる。

外気を吸うため、僕は海から顔を出した。

やがて、白いワイシャツが茶色に染まっていくことを想像する。

「誰も君のことなど、気にしてなん

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【超短編小説】 呟き

【超短編小説】 呟き

「寝ている時に、起こして悪い。お前に言いたいことがあって来たんだ」

ある男は語り始めた。

「この町はずいぶん変わっちまった。

俺らが遊んでいた頃の町とは違うみたいだ。

そうやってお前が目を瞑っている間にも、

誰かが決めたことが当たり前かのように言われるようになっちまった。

以前からそうだったのかもしれないがな。

だが、どうも最近はそれだけに留まらなくなってきた。

あろうことか、お前

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【ポエム】 地球は、また自転する

【ポエム】 地球は、また自転する

地球は自転する。

人は別れては出会いを繰り返す。

ぐるぐると巡り合うその中で、

僕は君に会い、

君は僕に会った。

僕らは最初はぎこちなかったし、上手く話せなかった。

すれ違うことばかりで、顔を合わせるぐらいだった。

どういう人なのかも分からなかったし、あまり知ろうともしなかった。

でも、時は流れ、僕らは親しくなった。

たぶん、声をかけたのは君からだった気がする。

僕も何となく「

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【短編小説】 突然の来訪者

【短編小説】 突然の来訪者

外はまだ寒かった。

確か、8時を少し過ぎたぐらいの時間だった。

コーヒーを淹れて、少し休んでいる頃、

呼び鈴が押された。

予定時刻よりはまだ3時間ほどあった。

準備すら出来ていない私は窓の方に顔を向けると、

玄関先で待つ少女が見え、少しばかり焦っているようだった。

仕方なく、私は玄関の扉を開けた。

「ごめんくださいませ、マクセルさん」と彼女は言った。

「どうしたんだね。君は今日1

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【短編小説】 明日、死ぬかもしれない世界にて 

【短編小説】 明日、死ぬかもしれない世界にて 

「ごめんな」

俺は携帯電話を片手にそう呟いた。

電話口の相手は泣きじゃくった。

こんなつもりじゃなかった。

悲しい思いをさせたくはなかった。

でも、こうするしかなかった。

「これからどうするのよ」

俺は少し黙って「分からない」と答えた。

「死んだら、許さないから」

「分かってる」

そう言って、電話は切れた。

しばらく壁にもたれた状態で立っていた。

大丈夫だ、俺は死んだりなん

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【ポエム】 だから、ここにいる

【ポエム】 だから、ここにいる

できないことだってある。

理解できることばかりで世界を見て、

顔が見えなければ何でも言える。

そんな世界で生きている。

でも、それは一部にしか過ぎない。

まだ知らないことだってあるんじゃないか。

こうしている間にも誰かは悩んでいて、

夜の静けさの中で泣いている。

だから、ここにいるんだろう。

だから、遠い場所でもすぐに来てくれるんだろう。

「待たせたな」って、顔出してくれよ。

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【超短編小説】 饅頭を齧る女

【超短編小説】 饅頭を齧る女

これは旅先で会った女の話だ。

その女は右手に饅頭を持ち、こちらを見ながら饅頭を一口齧った。

まるまるとした白い饅頭であったが、小さい口を器用に動かし、運んでいく。

それは頬張るというよりは齧るが適当であった。

まるで私に見せつけるかのように饅頭を美味そうに食べた。

女は饅頭を食べ終えると「ふー」と息を吐いた。

もう腹が一杯になったに違いない。

そう思った矢先、女は鞄から赤い饅頭を取り

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【超短編小説】 夜中物語

【超短編小説】 夜中物語

夜の静けさが好きだ。

真っ暗で何の音も聞こえない。

でも、だんだんと空は青になっていく。

わたしたちは笑った。

声はガラガラで、

すぐにでも眠りたい。

「明日、声、出ないかも」

「もう、今日だよ」とツッコまれながら、

飲みすぎて、歌いすぎて。

冷たい空気が身体を纏い、意識を保たせる。

こんな日常が続けばいいのに。

「じゃあね」と手を振ったら、

「おやすみ」と返したようだった

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