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【短編小説】 明日、死ぬかもしれない世界にて 

「ごめんな」

俺は携帯電話を片手にそう呟いた。

電話口の相手は泣きじゃくった。

こんなつもりじゃなかった。

悲しい思いをさせたくはなかった。

でも、こうするしかなかった。

「これからどうするのよ」

俺は少し黙って「分からない」と答えた。

「死んだら、許さないから」

「分かってる」

そう言って、電話は切れた。

しばらく壁にもたれた状態で立っていた。

大丈夫だ、俺は死んだりなんかしない。

痛みも受け止める。

歓声が鳴り響く中、俺は酒を一口飲んだ。(完)