2022年2月の記事一覧
毎日読書メモ(258)『リンさんの小さな子』(フィリップ・クローデル)
フィリップ・クローデル『リンさんの小さな子』(高橋啓訳、みすず書房)についての過去の読書記録。フィリップ・クローデルは1962年生まれのフランスの小説家・映画監督。
人に勧められて図書館で借りてみた。土地の名の固有名詞なしに、船に6週間も乗って、戦火の祖国から難民として文化の全く違う国に移ったリンさんと、息子の忘れ形見の赤ん坊。その赤ん坊だけに向き合い、他に目を向けなかったリンさんが、公園で出会
毎日読書メモ(257)『南鳥島特別航路』(池澤夏樹)
父の本棚シリーズ。実家に行っては、昨夏亡くなった父の本棚から、興味深そうな本を抜いてきて、少しずつ読んでいる(これは供養なのか?)。
本の整理をしながら、父はこんなことに興味を持っていたんだな、とか考えているのだが、池澤夏樹『南鳥島特別航路』が出てきて、ふと手が止まる。父はなんで池澤夏樹買ったのかな? 好きな作家の本なら、どんどん買う人だったので、好きと思ったら何冊も著作が並んでいるんだけど、池澤
毎日読書メモ(254)樋口毅宏さん@ハイシスタ(Hi Sista)オンラインイベント
昨日(2022/2/20)、朝日新聞Hi Sistaのオンラインイベントで、樋口毅宏さんのトークライブを聴いた。
オンラインイベント「『普通』にさようなら ~パートナーシップとルッキズム~」第1回「今とこれからのパートナーシップ」
朝日新聞記者田中ゑれ奈さんが進行役。妻三輪記子さんとの出逢いから、結婚、出産、家庭内での役割分担等。内容的にはずっと、cakesの「Baby Don't cry 〜赤ち
毎日読書メモ(253)『ミーナの行進』(小川洋子)
今日で北京オリンピック閉幕。ということで、オリンピックつながりで、小川洋子『ミーナの行進』(中央公論社、現在は中公文庫)。単行本の挿絵がとてもきれいなので、文庫でなく単行本を見ることをお勧めしたいです。
1968年のオリンピック時点では物心ついていなかったので、わたしの記憶の中のオリンピックは、1972年の冬のオリンピック(札幌)→夏のオリンピック(ミュンヘン)から。ミュンヘンオリンピックはオリン
毎日読書メモ(251)コンサートに行って、『ぞうのババール』と「インドのとらがり」を読む
昨日(2002/2/17)、すみだトリフォニーホール小ホールで、「新日本フィルハーモニー交響楽団・室内楽シリーズXVIII~楽団員プロデューサー編~My Favorite Songs」を聴いてきた。新日フィルコントラバス奏者の村松裕子さんがプロデュースしたコンサートは、通常弦楽四重奏だとコントラバスは含まれないから、と、コントラバスの入った編成に編曲した、フランス音楽の数々。村松さんご自身の編曲し
もっとみる毎日読書メモ(250)『モダン』(原田マハ)
実家に帰って、父の本棚にあった原田マハ『モダン』(文春文庫)を読んだ。ニューヨークのMoMA(近代美術館)を舞台にした、5つの短編からなる作品集。主役はMoMAそのものである同時に、MoMAで働く人々。原田マハの他の作品と同様、史実と違うフィクションを物語の中心に据えてはいるが、狂言回しとなる美術作品はすべて実在のものなので、検索しなくてもわかるアンドリュー・ワイエス『クリスチーナの世界』、ピカソ
もっとみる毎日読書メモ(249)『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』(北大路公子)
昨年以来マイブームの北大路公子、ようやくデビュー作となる『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』(増補新装版、寿郎社)を読んだ。寿郎社は札幌の出版社。札幌でフリーライターをしながらウェブ日記を書いていたモヘジ(当時のハンドル)を発掘し、北大路公子というペンネームをつけ、『枕もとに靴』を刊行し、それがその後の活躍につながった模様(公子、は日本ハムに由来しているそうだ)。
(元々は上正路理砂というペンネーム
毎日読書メモ(248)歌野正午メモ
歌野正午にはまっていた頃に、感想メモをまとめていたのを見つけたのでそのまま再掲(2005年12月の記録)。
友達に借りていた『正月十一日、鏡殺し』(講談社文庫)を読んだ。短編集なんだけど、どれもあっと驚かされる仕掛けの施されたミステリー。
歌野晶午の名前を一気に有名にしたのは、2003年「このミステリーがすごい!」で年間1位に選ばれた『葉桜の季節に君を想うということ』(文春文庫)。わたしも初め
毎日読書メモ(247)『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介)
一時、道尾秀介を必死に読んだ時期があった。『向日葵の咲かない夏』が話題になっていて、それが文庫本(新潮文庫)になったときに読んだ。
一人称の語り手のブラフを疑って読め、と、何作か読んでわかったが、わかって読んでもまだ裏切られる、その技量に毎回驚かされた。
ブラフがこの人の持ち味なので、ずっと色んな事を疑いながら読んでいたが(登場人物少ないし、そもそも疑える対象が少ない)、それでも、この展開には驚