見出し画像

毎日読書メモ(251)コンサートに行って、『ぞうのババール』と「インドのとらがり」を読む

昨日(2002/2/17)、すみだトリフォニーホール小ホールで、「新日本フィルハーモニー交響楽団・室内楽シリーズXVIII~楽団員プロデューサー編~My Favorite Songs」を聴いてきた。新日フィルコントラバス奏者の村松裕子さんがプロデュースしたコンサートは、通常弦楽四重奏だとコントラバスは含まれないから、と、コントラバスの入った編成に編曲した、フランス音楽の数々。村松さんご自身の編曲したラヴェルを3曲、休憩後はピアニストとして舞台にも出ている白石准さんの編曲で、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、そして、プーランク「小ぞうのババールの物語」。
プーランク「小ぞうのババールの物語」は、元々ピアノ曲が先にあり、その後、管弦楽版が作曲されたとのことだが、昨日は更にそれをピアノ・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの5重奏に編曲したバージョン。舞台上にプロジェクタで絵本『ぞうのババール』(ジャン・ド・ブリュノフ作、矢川澄子訳、評論社)が投影されたが、曲用のテキストは別にあったようで、朗読の方は写っている訳文とは別のナレーションをしていた。
絵本「ぞうのババール」シリーズは、勿論以前より存在も知っていたし、絵柄を用いたキャラクターグッズなども売られていた。わたし自身は縁がなくて、手に取ったことなく、子どもへの読み聞かせなどもしたことなかったので、昨日のコンサートで初めて見た。驚くべき荒唐無稽さ! 冷静にストーリーを分析すると、猟師にお母さんを撃たれて、一人で逃げたババールはなんで母の仇の人間の住む町にすーっと入っていけるのさ、とか、お母さん殺された哀しみの発露は?、とか(途中で泣くシーンがあるけど、泣くの遅すぎで?)、猟師は他のぞうたちは襲わなかったのか、とか、お金持ちのおばあさんにこんなにお金出させて贅沢三昧することに葛藤はないのか、とか、その買ってもらったものの威力で王様になってしまっていいんかーい、とか、もうもう、突っ込みどころ満載である。プーランクの音楽も素敵だったが、驚くべき物語の展開に唖然としているうちに曲は終わっちゃったよ。
また聴いてみたいけど...演奏の機会は少なそうだ。高橋アキのピアノバージョン(語りは忌野清志郎)のCDがあるみたいなので聴いてみるか...。

そしてアンコールは、白石准さんが作曲した「セロ弾きのゴーシュ」より、「インドのとらがり」。宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』(茂田井武画、福音館書店)を子どもの頃に持っていて、図書館に行ったら同じ本が置いてあったので借りてきたが、改めて読むと本当に面白い。ゴーシュが水車小屋の自宅に戻ってセロを必死でさらっていると、毎晩色んな動物がやって来るが、その一晩目、三毛猫が「シューマンのトロメライをひいてごらんなさい」と言う(子どもの頃読んだときには「トロメライ」なのは気づいていなかった)。その時にゴーシュが弾くのが「インドのとらがり」。猫を驚かせようと、自分は耳に栓をして、部屋の鍵をかけて猫が逃げられないようにして弾く「インドのとらがり」、その激しさがホールに響きわたる。圧倒的なパワーで、聴いたラヴェルもドビュッシーもプーランクも空の上に行ってしまったよ。頭の中を「インドのとらがり」がぐるぐる。
『セロ弾きのゴーシュ』、動物たちとの毎晩の特訓の成果が出て、近世音楽団のコンサートで第六交響曲が大好評を博した後、団長が、ゴーシュにアンコールを弾いてくるように言う。そこでゴーシュが弾くのが「インドのとらがり」。ここを弾いた時に猫が切ながってぱちぱち火花を出したところ、とか思い出しながら弾く。お客さんはわたしたちだ。
音楽と物語が融和した一夜だった。

トップ画像は、昨日のプログラムと、今日借りてきた本。『ぞうのババール』は棚になかったので、『おうさまババール』を。これもものすごい話だった。最後にじわじわとくる物語。

#読書 #読書感想文 #コンサート #新日本フィルハーモニー交響楽団 #室内楽 #村松裕子 #白石准 #小ぞうのババールの物語 #プーランク #ぞうのババール #宮沢賢治 #セロ弾きのゴーシュ #インドのとらがり #チェロ #コントラバス #すみだトリフォニーホール

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?