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サブマガジン カント『純粋理性批判』とその周辺

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カントの『純粋理性批判』とその周辺を探究する記事です。私自身の若い頃の草稿を含むArchives的位置づけも持ちます。
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カントとフーコー  経験の形而上学と歴史の造型――26歳頃に執筆したオリジナル原稿完全公開版

カントとフーコー 経験の形而上学と歴史の造型――26歳頃に執筆したオリジナル原稿完全公開版


まえがき
批判的言説の可能性および現実性への問いは、現在深刻な位置づけを与えられるにいたった。こうした事態の端緒に、ミシェルフーコーが提示した問題設定が、我々の思索を要求する一つの課題として存在している。だが彼は、この課題を固有なカントの読解作業を通じて、『言葉と物』において設定した。この問いあるいは課題は、なお無際限に開かれているように思われる。そこで我々は、カントとフ-コ-の接点を形成する問

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「人間原理」とカント『純粋理性批判』 ――超越論的構成の物理数学的意味

「人間原理」とカント『純粋理性批判』 ――超越論的構成の物理数学的意味

「現にある宇宙の構造の根拠」を「現にこのような人間が存在しているということ」に求める――「宇宙が現にこのようにあるのは、もし宇宙が別様にあったとすれば、私たち/人間が存在して宇宙を観測することはできないためである」という論理としての――「人間原理」は、以上の意味における思考/観測という行為を<超越論的自由>として要請する理性の超越論的理念である。つまり「人間原理」とは、形而上学段階に至った最先端現

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カント『純粋理性批判』「量子重力理論/観測問題/量子ベイズ主義――<超越論的自由>の不可避性」後半

カント『純粋理性批判』「量子重力理論/観測問題/量子ベイズ主義――<超越論的自由>の不可避性」後半

※下記は、現在執筆中の『形而上学 <私>は0と1の<狭間>で不断に振動している Metaphysics: The <I> is in constant oscillation between 0 and 1』「第5章 カント『純粋理性批判』のデッドライン Ⅱ 内包量のアポリアのもう一つの地帯/Zone――「魂の常住不変性に関するメンデルスゾーンの証明に対する論駁」から諸地帯Zonesへ」の「附論 

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カント『純粋理性批判』の難解さ/完璧性

カント『純粋理性批判』の難解さ/完璧性

カントの『純粋理性批判』が極度に難解だと感じられる理由は、彼が極度に完全主義的だったからということが大きい。彼の文章は悪文というよりむしろあらゆる観点から見て完璧さを目指し、しかもそれを達成している様に見える。実際、前人未踏の洞察を書くにはこうするより他なかったのだ。

完璧――つまりそれ以上さらに完全に改善/修正/彫琢しようとしても「まったく不可能」だということである。特にこの完璧さは『純粋理性

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カント『純粋理性批判』/量子重力理論/観測問題

カント『純粋理性批判』/量子重力理論/観測問題

以下が、久保元彦氏最晩年の論考「内的経験」最後の記述である。

「だが本当は、現象形式の探究と、概念にもとづく認識の闡明とが一致する地平に立って、原則を、まずその純然たるすがたにおいて捉えようと努めるのでなければ、カントの思索の精髄を、けっしてかいまみることはできないのだ。」(「内的経験(五)」『カント研究』創文社 1987年 所収 197頁)

カントの目指した「学としての形而上学」は、

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『形而上学 <私>は0と1の<狭間>で不断に振動している』(Metaphysics: The <I> is in constant oscillation between 0 and 1) 第5章 Interlude2までの叙述構造

『形而上学 <私>は0と1の<狭間>で不断に振動している』(Metaphysics: The <I> is in constant oscillation between 0 and 1) 第5章 Interlude2までの叙述構造

序文 <私>と現実性へと向かって

第1章 無内包性と形式性

Ⅰ アリストテレス『形而上学』第3巻第5章――「点や線や面」「いま」のアポリア

附論 大森荘蔵を巡って その最深部の問題

Ⅱ カント『純粋理性批判』――「形式としての空間」の形式性

形式性の生成という問題――<超越論的自由>という要請

Ⅲ この<私>の<今-(hyphen)ここ>――無内包かつ不可分な<今>と<ここ>

Ⅳ 総

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『形而上学  <私>は0と1の<狭間>で不断に振動している』(Metaphysics: The <I> is in constant oscillation between 0 and 1) 「序文」 登場する & 登場予定の固有名 適宜更新

『形而上学 <私>は0と1の<狭間>で不断に振動している』(Metaphysics: The <I> is in constant oscillation between 0 and 1) 「序文」 登場する & 登場予定の固有名 適宜更新



『本論』 序文 <私>と現実性へと向かって

 『序論』での探究を前提とした以後の記述においては、この<私>の無内包性を、同様に無内包の現実性とともにさらに探究していくことにしたい。なお、ここで無内包性とは、その無内包性自体については、否定性=ゼロを含む内包量が対応するいかなる実在性も記述できないという事態を言う。『序論』においては、①ここで<私>によって想定されている内包量の非存在の経験は

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